『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
★ × 94
(内容紹介)
19歳のオレと39歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた「思わず嫉妬したくなる程の才能」と選考委員に絶賛された、せつなさ100%の恋愛小説。第四一回文藝賞受賞作。
久しぶりに読みました。
mixiのレビューを掘り出した限り、2009年の2月に読んだきりでした。
いやあああああーーーやっぱナオコーラ、、良いっっ!!!
何が良いって、「ここが良かったんだよー」と言えないのが良い!!笑
あらすじは、美大に通う男子学生が女教師と恋に落ち、セックスし、別れていくという
ストーリー。
主人公みるめクン、女教師ユリちゃん、みるめを好きなえんちゃん、友達の堂本、以上4人の主要メンバーで送る、空白スペースだらけでたった120頁の小説です。
もう、出だしの1文目からスタートダッシュ全開!
ぶらぶらと垂らした足が下から見えるほど低い空を、小鳥の群れが飛んだ。
…分からん!!先を読み進めてもこの意味は分からん!
けれど何とも言えず、胸が熱くなる。この感覚は吉本ばななさんの『TUGUMI』を読んだ時にも味わいました。
テーブルの丸ごとを心に焼きつけるような切なさで、にぎやかに食べた。
いやぁ、分からない。けれど、分かる。
きっとお二方とも、空を見たりご飯を食べたりするだけの日常の感じ方が他の方よりもずっとずっと過敏で、尚且つその機微を描写し、一般人に伝えられるだけの表現力を持っているのでしょう。
だから物語性、人が死んだりエロを混ぜたりせずとも、こうやってバコーンと胸を打つ小説を世に送り出せるのでしょう。
あと1回目同様、とにかくこの静謐な世界観に圧倒されるだけだったのですが、一つだけグッときたシーンがあります。
それはユリちゃんに別れを告げられ、生活能力が著しく低下するほど落ち込んだ主人公みるめクンが、徐々に平常時の心を取り戻していく場面。
寂しさというものは、ユリにも、他の女の子にも、埋めてもらうようなものじゃない。無理に解消しようとしないで、じっと抱きかかえて過ごしていこう。
この寂しさやストレスはかわいがってお供にする。一生ついてきたっていいよ。
それまで鬱々悶々と過ごしていた彼が、急にこの数行で見切りをつける。
それは読者にとって少し急なように見えるけれど、悩みが、晴天までは行かずともある程度晴れる瞬間なんて、案外そんなものかなぁという気がします。
読書に慣れてしまうと、
こうこうこうだから今主人公は傷ついていて、けれどある時この人にこうこうこう言われたから主人公は立ち直ったのだ。
みたいな風に、ロジカルに物事が解決されていかなければ腑に落ちなくなってしまう時があります。
実際他の方のレビューを読んでも、「何も起こらず退屈」「センセーショナルなタイトルに騙された」みたいな意見が多々あって、意外に賛否両論なのに驚きました。
私は勿論ゴリゴリのロジカルシンキングが好きですが、時にこういった理屈じゃ片づけられない物語を読むと、ああぁ最近の俺は少し凝り固まっていたなぁと気づかされます。
あと1つ私の最大のTODOは映画を観ること。
小説が好き過ぎて観ないようにしてましたが、キャストを見るとえんちゃんの役は蒼井優じゃないか!!なんてぴったり!!!(何を今さら)
これは今週末マストで観なければ…
好き嫌いはバッサリ分かれるでしょうが、個人的には純度100%におススメ!!