『渾身』 / 川上健一
★ × 79
内容(「BOOK」データベースより)
坂本多美子は夫の英明と、まだ「お母ちゃん」とは呼んでくれないが、前妻の娘である5歳の琴世と幸せに暮らしていた。隠岐島一番の古典相撲大会。夜を徹して行われた大会もすでに昼過ぎ。いよいよ結びの大一番。最高位の正三役大関に選ばれた英明は、地区の名誉と家族への思いを賭け、土俵に上がる。息詰まる世紀の大熱戦、勝負の行方やいかに!?型破りのスポーツ小説にして、感動の家族小説。
ど田舎の空港で搭乗する飛行機を待つ間、読んでいた本が終わってしまったため急きょ本屋で購入した小説です。
『RAILWAYS』の錦織良成さん監督で、映画化もされた原作でした。
古典相撲にまつわる人びとの物語。
古典相撲とは地域の人が一丸となり代表力士を選抜し、他の地域の代表と勝負をさせる田舎のイベント。
この力士に選ばれた英明の妻である多美子が主人公です。
もともと英明は周囲の人々の反対を押し切って、前妻である麻里と結婚した身。
しかし麻里は病気でなくなり、麻里の友達であった多美子と結婚したという経緯があります。
周囲から白い目で見られていた英明だからこそ、古典相撲の地域代表として選ばれたことには二人にとって非常に意味深いもの。
この辺のプロセスは突き詰めるとかなりドラマチックに仕上がりそうなのですが、本作の驚きなのは、物語のほとんどが英明の相撲の描写であるという点!笑
教則本かと思うほどずーーっっと相撲とってます。
英明と多美子が周囲から赦される展開や、実の娘でない琴世から「おかあちゃん」と呼ばれたときの多美子の描写などアップダウンは用意されているのですが、相撲の描写の量に圧倒され、それらの筋がかなり隅に追いやられている感が強かった。
そう、だから青春スポ根小説としての感動がほとんどなかったかな?というのが本音です。
振幅の激しい小説かと思いきや、相撲をとり続けているだけの平坦な内容で、少し残念でした。。。