『雪国』 / 川端康成
★ × 83
内容(「BOOK」データベースより)
頑なに無為徒食に生きて来た主人公島村は、半年ぶりに雪深い温泉町を訪ね、芸者になった駒子と再会し、「悲しいほど美しい声」の葉子と出会う。人の世の哀しさと美しさを描いて日本近代小説屈指の名作に数えられる、川端康成の代表作。
川端康成さん初挑戦。
「日本史上最も文章が上手」だと謳われるノーベル賞受賞者ですが、その中でも特に金字塔の呼び声高い本作を選びました。
あらすじは奇しくも『それから』同様、親の金でノウノウと暮らす男が主人公。
駒子という芸者、彼女は定期的に会いにくる主人公島村に恋をしているが、主人公島村はそんな駒子に対してイマイチよく分からない態度を取り続ける。
島村の心の先は、実は旅館の遊女である葉子に向けられていて、つまり
駒子→ 島村 → 葉子
のベクトルで構図を成す恋愛小説、とでも呼ぶべきでしょうか。
ただしこの小説、めちゃくちゃ難しくて、一体誰が誰を好きかなんてほぼ全く分かりません笑。
「省略の美」「行間の美」と言っちゃえば聞こえが良いですが、それにしても余りにも登場人物の行動が不可解なまま…。
酒を飲んで泣きじゃくって激昂した数秒後に凛としている駒子。
駒子の猛アタックをゆるりとかわし、なのに思わせ振りに彼女の元へ通いつめる島村。
そして最も存在意義が掴めず、最後に衝撃の運命を辿る遊女の葉子。
読者が知り得ない個人的なエピソードがある前提の物語なのかな…と思い、読後ネットでも調べてみましたが、特にそんなトリビアもなく、単純に読解力が足りなかったのかとガックリきました。
いやぁ恐るべし川端康成…文体が他の近代文学に比べ非常に柔らかい分、難解さも上乗せされていました。
ただ、そんな私にも「日本史上最も文章が上手」である理由の一欠片くらいは掴めた気がします。
読み始めてしばらくすると、本作が決して登場人物の境遇に一喜一憂しながら浸かるような小説ではないなと感じました。
それよりも、とにかく島村の目から語られる情景が絶妙の文体で、中盤以降は物語そっちのけの読み方をして楽しみました。
まあ、誰だって初めての作家はこんなものだろう…。
引き続き、川端康成攻略へ向けて練習していきます。