『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
★ × 80
(内容紹介)
「学校で数学を勉強して何の役に立つのか?」と云う疑問に答えて書かれた本。
学問としての「純粋数学」に対して、応用数学、統計学のように利用する数学がある。この本の内容はさらに、もっと生活の中に取り込まれている「数理工学」を親しみやすい例を示して書かれています。 本の中に出てくる数式やグラフなど理解できなくても、数学って役に立つんだということの理解につながればよいと、想いながら読める。
毎年私は1つの分野に特化して本を読む、という勝手なルールを作り、これまで知らなかった学問に触れよう!というキャンペーンを人知れず実行しています。
2010年が仏教
2011年が経済学
2012年が脳科学(生物学は難解すぎて挫折)
ときて、さて2013年はというと、最近何かと触れる機会の多い「数学」に関する書物を意識して手に取るようにしています。
会社に入ると直属の先輩が数学科出身であったり、
たまたま買った『フェルマーの最終定理』に激ハマりしたり、
これまたたまたま観た『オックスフォード白熱教室』に絶賛激ハマり中だったり、
私の中の理系脳は死んでなかったことを、数学によって日々再認識させられています。
そもそも学生時代、意味もわからずサインコサインの射影や固有値展開やフーリエ変換の式を覚えたりするだけだったから数学がつまらなかった。
けれどいざ会社で研究開発業務に就いて、信号処理工学や統計学やパターン認識にそれら手法が頻発しているのを知り、改めて数学すげえなってバカみたいに感心してる最中なので、本年のテーマを数学にしたのは正解でした。
前置きが長くなりましたが、そんな私が背伸びして手に取ってしまったのが本書。
…さすがに難しかったです笑
各章の導入部は「体内時計とは何か」「ランダムとは何か」「錯視とは何か」といった取っつきやすい問題提起で始まりますが、以降即座に難解な数学へと誘われていき、頁をめくる速度は急落。
勿論頑張って読んだので一通り理解はしたつもりですが、こうやってレビューで説明するとなると、うーんやはり理解できてなかったのか、文章に表すことができない…
ってだけでは何の為のブログなのか、閉鎖するが善なのかと心折れそうになるので、レビューブログらしく、本作で私が最も面白かった箇所を少しだけ紹介します。
(とはいっても以下の内容は依然読んだ、脳科学者である池谷裕二さん著『単純な脳、複雑な「私」』でも紹介されていたものです。)
下図は「ヘルマン格子錯視」と呼ばれるイメージ。
白い路の交差点に、薄暗いスポットが見えると思います。
しかしこれは実際は全くの白で塗られています。
試しに4つだけ切り取ると、あら不思議、先ほどのスポットは見えない。
これは人間の眼が成す錯視の影響でありますが、ではこれを計算機シミュレーションで出力した場合、つまりコンピュータがこの格子を見た場合どう映るのかを”数学”で解いていきます。
普通に考えると人間の眼では見えても、白黒の二値で見るコンピュータにはこのスポットは映らないと誰もが想像すると思いますが、実はコンピュータの吐き出す格子の輝度グラフ(所定の座標の明るさを示すグラフ)を見ると、なんと交差点は完全な白でなく、わずかに黒に近いRGB(色表現の値)を示すのです。
…いやぁ、今レビューを書きながら、やっぱ不思議だと感心しています。
そもそも錯視が数学に基づいたものである、ということを小さい頃に誰か教えてくれれば良かったのに。
私は錯視が好きで、錯視に関する本を何冊も買ってもらった記憶があります。
もしこういった事実を知っていたなら、今頃錯視業に就いて絵と数学の融合を日々研究していたかもしれない。
上述の錯視は本作の一部ですが、他にも人間の神経や抗ガン治療に数学を適用し、日々成果をあげているという内容が所狭しと紹介されています。
興味本位で手に取るにはさすがに少しハードルが高すぎましたが、集中して読めばなかなかに面白い本でした。