『円卓』 / 西加奈子
★ × 87
内容(「BOOK」データベースより)
世間の“当然”に立ち止まり、悩み考え成長する物語。うるさいぼけ。なにがおもろいねん。
平凡やしあわせに反発する琴子、小学3年生。好きな言葉は、「孤独」。
久々の西加奈子さん。
映画化されるということで、先に原作を読んでおきました。
物語は大家族の下生まれた主人公琴子の小学生目線から、友人の不整脈や登校拒否、母親の妊娠、変質者との出会いなど、西さんの感性フル解放で語られます。
起伏があるようで無く、終わってみればローラーコースターのように振り回されたなあという印象。
その理由はゴリッゴリの関西弁、そして小学生目線という、確信的に冗長化された状況・感情表現からくるもので、正直終わった後は少し疲れました。
「よくわからなかったなぁ」という感想と共に、レビューで大体80点くらいつけようか、そう思っていました。
が、津村記久子さんの解説が、もう「2013年度ベスト解説賞」を差し出したいほどに最っっ高に良かった。それ故の7点Up!笑
(実は以前、本作を単行本で買おうか迷っていました。文庫本を買って本当に良かった。)
津村さんはこの小説を、こう表現しています。
子どもの頃の自分は確かに、自分の世界の人々はこんなふうにはっきりと見えていたのではないか。
人々や物事の個性を、個性のまま受け取って咀嚼し、それらを世界を語るしるしにまで膨張させてしまう。
これは子どものビジョンの賜物ではないのか。
うーーーーーん、なるほどなるほどなるほどね!!
このカオティックな、全身全霊で迫ってくる印象を与えるその理由は、本作一つ一つが正に小学生の琴子そのものが目にし耳にした世界を表現しているからなのか。
大人になった今読むとソリッド過ぎる個性、けれど確かに子どもの頃はそれが全てだったという印象があります。
読んでいる最中はここまでの考えに至らず…。あぁ、アッパレ津村さんの名解説。
朝井リョウさんの 『少女は卒業しない』という大好きな青春小説がありますが、あちらは大人にも子どもにもなり切れない、等身大の高校生を丸ごと描いていたことが非常に素晴らしかった。
とすれば本作は「小学生」、その無秩序さと比例したパワーを見事に表しています。
うーん、毎回受け側を驚かせる西さんですが、本作もまた然り。
あと、怒涛のような展開の中で、一つ印象的だった場面がありました。
琴子が友人のぽっさんと、夜に話し合うシーン。
琴子は友人の朴さんが不整脈により倒れたことを「かっこいい」と憧れ、自ら真似して目立とうとしました。
他にも「眼帯」や「在日」や「吃音」、要は人と異なる状態を羨ましく思うという、分からなくもない感情を抱いています。
けれど当然それを模倣するということは、他者から見ると嫌がられる行動、琴子はそれが何故なのか理解に苦しみます。
そんな琴子に、個人的に最もカッコいいと思うぽっさんが優しく語ります。
子どもなりに考える二人の会話は勿論のこと、そこに付き添いに来ていた琴子の祖父が放つ英単語が混ざり合い、どこか崇高で美しい場面です。
『ふくわらい』の衝撃のラストのように、フワーッと浄化される感じ、まさに西さんオンリーワンだなぁと痛感させられました。
素直ではないけれど、元気の出る小説です。
是非、文庫本で召し上がれ笑