- 作者: 星野源
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/05/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『蘇る変態』 / 星野源
★ × 93
内容(「BOOK」データベースより)
“ものづくり地獄”の音楽制作、俳優業の舞台裏から、エロ妄想で乗り越えた闘病生活まで。突然の病に倒れ、死の淵から復活した著者の怒涛の3年間。
『ばらばら』で知って『くだらないの中に』『日常』で心掴まれて今に至る、別にコアなファンでもなく、なんならライブも行ったことないですが、自分勝手に「俺は星野源の楽曲のバックに潜む闇を何となく分かっているんだ」と自負していたイタい人種、それが私。
例えば源さんの歌詞には「ウソ」という言葉がよく出てきますが、そんな歌詞を「タ タ タ」というリズムがあれば必ずピッタリと三文字の言葉を嵌め込むような真面目さの歌にのせて歌うものだから、これは逆になにかあるな、と探りたくなるような、それを私は潜む闇だと考えています。
くも膜下出血という大病を経て尚スピードを緩めないその感じも素直に受け取れない。
ものすごい回数の自問自答を繰り返すような、決して単純な人間なんかじゃないんだろうなと予想して、まさにその大病前後の連載エッセイをまとめた本書を手に取りました。
読み終えた今結論から言うと、やっぱ源さんはとてつもなく考える人で、けれどそれが例え闇であっても面白くアウトプット(それこそこの作品のような形態で)できる才能を持った表現者であることを知りました。
「情熱大陸」で以前、少年時代にパニック障害だったことを語っていましたが、その経験がきっと、誰しも抱える闇を理解した上で書いてるような箇所がありました。
現実の生活は、何も起こらないように見えて常に様々な要素が混在している。普通のひとだって怒りながら涙が出て、そんな自分にちょっと笑ってしまったり、いろいろと矛盾して混沌とした感情をいつも抱えながら真顔で過ごしている。
だから源さんの曲や自身から感じるものってのは、ちょっと渇いてたり素直な幸福じゃないのかもしれません。
その哲学はくも膜下出血を経て更に強くなっているような印象も文章から受けました。例えば以下のような部分から
寂しさというものはきっとその人の性格であり、生まれ持ったチャームポイントだ。寂しさは友達である。絶望はたまに逢う親友である。そして不安は表現をするものとしての自分の親であり、日々の栄養でもある。不安はご飯だ。
辛い病気を面白がり、前向きなものに転化するということは、その病気になった本人でないとできない。周りがやれば不謹慎になってしまうからだ。幸福なことに、自分はそれをできる環境にあり、リアルタイムでアウトプットする場がある。
上述の特に後者の文章、私は個人的にもっとも好きだった箇所で、自分を客観視する意識を見習わなくてはと啓発されました。
…と、ここまで書くと「ものすごく真面目で暗いエッセイなのか」と捕られそうですが、違う違う本書のすごいのは、9割9部がゲスい笑いに満ち満ちていること。
りリーさんやみうらじゅんさんのようなゲスカッコいいおじさんの申し子とでも名付けよう、「そこまでさらけ出さなくても…」と心配になるほど赤裸々にエロゲスいネタのオンパレードです。
そこが男子からも好かれる所以だろうな
こんだけ文章が上手くて作曲センスがあって声も顔も良い、本来嫌われて然るべき完璧男子だけれど、私は源さんをこれからも聴いて読んで観て、憧れを持ち続けようと思いました。