『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
★ × 90
(内容紹介)
リーダーなんて要らないし、絆じゃ一つになれないし、ネットで世界は変わらないし、若者に革命は起こせない――。 クール・ジャパン戦略、ネット炎上騒動、就活カースト、働き方論争、脱原発デモ、リーダー待望論、ノマドブーム…… 迷走を続けるこの国を29歳の社会学者が冷静に分析。 日本人の「弱点」と「勘違い」に迫る。
古市憲寿さん、2014年間出版の新書。
『絶望の国の幸福な若者たち』同様、若者に焦点を当て、「おじさん」たちのズレた感性とズレた日本国をユーモアたっぷりに冷めた目で切っていく痛快本です。
ソーシャルメディア、クールジャパン、オリンピック招致、就活カーストなどなど、旬だった話題の表立った「気持ち悪さ」をズバズバ切ってく、正に同年代の読者としては「やれやれ古市さん!」とアクション映画を観ているかのような、
んで一方でおじさんが読むと「何も分かっとらんこのエセ社会学者め」と憤慨してそうな笑、それを想像するだけでニヤついてしまいそうになる新書です。
1つ1つのトピック解析がきちんと理論に基づいているところが勿論好きなところですが、もう一つ古市さんの好きなところとして、基本的に口の悪い中にも、一般に流布している誤った常識をきちんと正し、そしてポジティブに捉える眼も持ち合わせているところがあります。
例えば本書ではリクルートが以前より公開している「人気企業ランキング」についてですが、毎年
「このランキングは当てにならない。10年後には半分の企業がその名を消す。今はまだ萌芽の企業こそ目指すべきだ若者よ。」
のようなメッセージが意識高い系の何者かから主にソーシャルメディアで打ち出されますが、古市さんの着眼は「10年後にも半分の企業はその名を残している」というところ。
勿論何も考えずにただ大企業に進むことはリスキーで愚かであるということに警鐘を鳴らすという意味で前述のソーシャルメディアの誰かが言うことは正しいですが、古市さんはその理論だけで大企業を避けることも危険であることを示唆しています。
人それぞれ何に重きを置くかは違うので、命を削ってやりがい・生きがいを感じるだけが社会人の全てではなく、親を安心させたいという気持ちももちろん大事だし、最終章で出てくる「ダウンシフターズ(down shifters)」という、薄給でも良いから週休四日で働くなどの選択を取ることももちろん間違いでない。
そういう風に、任意の制度や流行に対して別の見方を提示してくれるのが古市さんの面白いところだし、こういう批評ならすごく有益だなぁと思わされました。
、、、とダラダラ書きましたが、そんな風に重く読まずに、8割がた結構笑いながら読めます。