『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
★ × 80
内容(「BOOK」データベースより)
鬼才の最高傑作ここに誕生!ムチャクチャな本音で空洞化した現代に、孤高の叫びをあげる鬼才・中原昌也の最新小説集。
『死んでも何も残さない』で、淀み切った感情を隠すこともなく曝け出す様に惹かれた中原昌也さん。
小説自体を読むのが初めてでした。
前提知識なく読み始めたので、はじめのうちはタイトル/語り口からてっきりエッセイかと思って進めていましたが、急に血塗れの女が逃走している描写が出てきたり、白い袋に生きた人間を詰めたりする描写が出て来たので、徐々に小説だと理解しました。
ただずーっと「何か変」なんです、眉を顰めながら、中盤に差し掛かっても未だこれが小説だと呑み込めないままでいる。
人が死んでも、何だかこれが著者の日常を綴ったエッセイなのかもしれない、などと疑いたくなる。
その理由は、中身があまりにもナンセンスで、展開や台詞に物語性も何も見いだせないから。
というのを3話目くらいまで立て続けに喰らったところでようやく気付きました、
「あぁ、この小説、特に意味ないんだ」と。笑
んで、普段の読書ではあまりしないのですが、気になったので他の方のレビューも読んでみると、やはり私が感じた違和感は皆さん持たれているようでした。
文章の中に意味を持たせるのではなく、エッセイであれ今回のような小説であれ、スタンスはいつも中原昌也のオナニーを鑑賞させられている。
その中身は常にやる気に満ち満ちて「無く」て、人に対する尊重や敬意はまるで見られず、文筆という作業に何の夢も期待も抱いていない、ということをただ愚痴り続けている。
その愚痴は本心かブラフか全く理解できませんが、詰まる所著者は文章(というか、愚痴(笑))を綴ることで、心や身体や、何かのバランスをかろうじて保っているんじゃないかということが何となく伝わるから、オナニーであれ読んでて不思議とイライラしないのです。
以前池谷裕二さんの書物に「人の不幸を見ると、脳から快楽物質が分泌される」という研究結果について書かれていましたが、私は本作を読んで、著者のような不均衡(?)な人物を知ることで、非常に失礼ですが「俺はこの人よりは大丈夫だな」なんて快楽物質が分泌される感じを受けました。
その怖いもの見たさで著者の作品に没頭する方は、少なからずいるんじゃないかと思います。
当分読みたいとは思いませんが笑、今後急に他の作品を読みたくなる時がくるだろうなと何となく感じました。