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内容(「BOOK」データベースより) チームDeNAは、なにもそこまでフルコースで全部やらかさなくても、と思うような失敗の連続を、ひとつひとつ血や肉としてDeNAの強さに結びつけていった。とてもまっすぐで、一生懸命で、馬力と学習能力に富む素人集団だった。創業者が初めて明かす、奮闘の舞台裏。
直球のビジネス本を読むのは久しぶりでしたが、新鮮味抜きにかなり面白かったのでレビューします。
コンサルとして世の潮流を捉え、こうした方がいいですよと他人の舵を取るサポーターの立場から一転、ネットオークションを足掛かりに世の潮流を作っていく立場となる。
DeNAは今でこそ球団を持っちゃうほどのモンスター企業と化しましたが、立ち上げ当初は当然ながら満身創痍で、成功の陰に潜む七転八倒の繰り返しが本書の主です。
それぞれの山を乗り切る為にどういった行動を取ったか、そこにはドラマのような神の一手がスパンッ!と打たれたワケはなく、睡眠を削り、脚で稼ぎ、人に頼って泥臭く越えていく様が描かれていて、表題「不格好」はこのあたりを意味しています。
この辺の構成は、企業家の著書間ではテンプレでもあるのかって程セオリー通り。
ただ本書の個人的に面白いと思った点は、南場さんの語りが読者一般に向けれらているというより、社員向け発奮本とでもいうべき「内に閉じている」点。
私がビジネス教則本を苦手とする一つの理由は、普通男女一般も僕の言う通りにすれば稼げるよ、と、直接的には言わずとも案に示すピグマリオン効果を含んでいるからです。
世に出される類のビジネス本が結局は「著者スペシャル」の成功話であって(そりゃ当たり前なんですが)、能力も環境も違うその他大勢が鵜呑みにしてどうするんだ、とイライラしてしまうんです。
けれど本書は鼻から大衆に向けて書かれていない、中身にはDeNA社員が実名でバンバン出てきて、新卒数か月でデカい契約を取り付けた○○君は入社当初からクソ生意気で…といった、まるでお婆ちゃんが(失礼しました)息子娘の昔話をするかのようにツラツラ語る口調であるから、この本から何かを得ようという気概を持たずに臨むことができました。
様々なトラブルに見舞われてきた著者ですが、そのターニングポイント毎に、救世主の存在が大きくフィーチャーされています。
それは天才プログラマであったり、命を削る営業マンであったりしますが、彼らは皆が皆20~30代の若手社員。
それはこの業界では珍しくないのかもしれませんが、朝起きて歯が抜けるほど忙殺された経験のない私にとってはやはり刺激的です。
幸いにも今の仕事は非常に楽しいですが、本書に出てくるような猛者達のエピソードに触れると、俺も頑張らねばと熱を帯びる感じがしました。
あと、東レの佐々木常夫さんもそうですけれど、南場さんの顔がいい。笑
いや、熟女好きだとかではなく、働く姿としてサッパーッとして素敵な顔じゃないですか?
佐々木さんも『働く君に贈る25の言葉』で書かれているように、病を持つ家族がいる中で働く状況下にいて、
南場さんも夫が癌を患い、移動中の車内で人知れず涙が出るほど追いつめられた経験を持っているのに、
二人の顔はどこか達観しているというか、見ていて元気を貰える「いい顔」だなぁーと思います。
顔がいいってのは、それだけで元気をやる気と与えてくれるもんですね。そんな二人が1つの会社の頂点にいるっていう状況は、会社にとっても非常に良い影響を与えていたんじゃないかなと思います。
とても清々しく、良い読書でした。