『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
★ × 89
内容(「BOOK」データベースより)
21世紀の『人間失格』が今、降臨。もはや生ける伝説。最後の無頼派作家/ミュージシャンの魂の軌跡全告白。
2014年最後のレビューは初の作家、中原昌也さん。
著者の肩書をwikiよりそのまま引用させていただくと
中原 昌也は、日本の音楽家、映画評論家、小説家、随筆家、画家、イラストレーター。 文化学院高等課程中退。1988年頃より音楽活動を始め、1990年にノイズユニット暴力温泉芸者を立ち上げ、海外公演などを通じて日本国外でも活動している。
となっており、活動の幅の広さで言えばみうらじゅんさん等のフリーマン宜しくな文章を書かれる方、といった想像。
けれど実際は大きく乖離し、とにかく「世の中クソったれ、俺なんて何もないのに何故モノを書かねばならぬのだ」というエッセイになっています。
こういった自慰的作品って本来、著者本人への愛有りきで成立するというか、例えば私蒼井優さんが大好きなのでエッセイなんかも買ってしまいますが、内容の薄さったら無くって、けれど本人が好きだからいいんですっていう言い訳込みで定価買いしている節があります。
そういう意味でいうと、中原さん自身を知らない私が本作を読んでも何も感じないんじゃないかって気がしますが、
いやはや、全くバックボーンの無い状態で「文章のみ」で引き込まれる体験をしました。非常に面白かった。
好きなのが推敲のない感情垂れ流し的文章、「思っていた。」を「思ってた。」と書かれているような部分です。
小説家で言えば川上未映子さんとかこういった文章得意な気がしますが、物書き元来のルールに則さないのに何故かテンポよく読める、というのが個人的にツボ。
あと、あるテーマがありその結論に向かって歩いていくような書き方でなく、とりあえずペンを取り、けれど言いたいことがあまりないから自分の映画や音楽体験にいつの間にか移行しているような傍若無人ぶりも好き。
映画『アイ・アム・サム』で、ショーンペンの友だちに、何かにつけ過去の映画に例える役の方がいましたが、あんな感じ。
これが作品として成り立ってしまうのならもはや誰でもエッセイストになれるんじゃないかと勘違いしてしまう程ですが、多分常人じゃない著者の部分が抜きんでているから、こうやって一味違う読書体験ができてソコが惹きつけて止まない部分なのでしょう。
2015年はしばらく中原作品を追ってみたいと思います。
それでは皆様、良いお年を。