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(内容紹介)
美人で気立てのいい園子に一目惚れして結婚した僕が、彼女にずっと隠し続けている仕事、それはラブドール職人。平穏に過ぎていく日常のなか、僕は仕事にのめり込み、あんなにも恋焦がれて結婚したのに、園子とは次第にセックスレスになっていった。いよいよ夫婦の危機かと思ったとき、園子はぽつりと胸の中に抱えていた秘密を打ち明けた。純愛と性愛とドールが交錯するラブストーリー。
『百万円と苦虫女』『ふがいない僕は空を見た』の監督、タナダユキさんが初めて出したオリジナル小説です。
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以下、ほとんどすべてのあらすじを網羅してしまうので、読まれる方は注意してください。
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主人公哲雄はダッチワイフを制作する仕事に従事する男性。
本物の女性の胸の型を取るためにアルバイトで雇ったモデルの園子に恋をして、そのまま結婚する。
互いの浮気を経て、信頼し合う真の夫婦に近づきつつあった折、園子のガンが発覚し、治療するも再発するという事態になります。
園子は帰らぬ人となり、空洞のようになった哲雄は、「園子そっくり」のダッチワイフ制作に取りかかります。
狂ったように外面、内面を瓜二つに作り上げ、最後のホールの仕上げは自ら試すことで完成させようとしますが、この場面で哲雄は、園子を失った真の悲しみを味わいます。
以上が、あらすじの全てです。
どうでしょう、ザッと読んだだけだと、ちょっと危ない香りがするでしょう…。
ただそこは安心と信頼のタナダユキさん、こんなにも敬遠したくなる設定だとしても、彼女の素晴らしい映画同様しこりを残すパンチをかましてくれるハズだと読み進めましたが、
やっぱり、無理でした。こんなこと言いたくありませんが、つまらなかったです。
まず、初のオリジナル小説ということで仕方ない部分はあるにせよ、文章自体の平凡さが気になりました。
勿論一場面一場面には結構味があって、例えば哲雄が園子の胸を初めて揉むシーンや、浮気相手の理香が哲雄の家に来てカオスになったシーンなんかは、多分映像だったら相当ユーモラスに表されるんだろうなと想像しつつも、
文字で表された本作ではどうしても主観視できず、うーんと思いながら読んでしまいました。
あとやはり肝心のストーリー。
ラブドール職人で、おっぱいの型を取るために雇った女に恋して結婚して、それまでセックスレスだったけれど妻のがん発覚を機に夫婦の距離は縮まり、その距離が無くなった頃に妻がセックス中に死に、悲しみを埋めるかのように妻そっくりの人形を制作する…
うーん、あらすじを改めてザッと書いてみても、何とも言えず惹かれない展開。
もうちょい面白い構成で書いてほしかった!!
この期待外れ感は次なる『復讐』への布石だと信じたいです…
唯一良かったのは一番最初の行、「妻が腹上死した。」という強烈な掴み。
『幸福な食卓』の「父さんは今日で父さんをやめようと思う。」、
『重力ピエロ』の「春が2階から落ちてきた。」、
に次ぐ素晴らしいスタートダッシュだと思いました。
次に期待!!