★ × 86
内容(「BOOK」データベースより)
恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性店員、「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻、舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦、親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師、働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性、ホテル経営者も複雑な事情を抱え…。
2013年直木賞受賞作品。
個人的には初めての著者でしたが、wikiの「作風」にある
「新官能派」のキャッチコピーでデビューした性愛文学の代表的作家であるが、人間の本能的な行為としての悲哀という描き方であり、過激さは低い。
という説明がまさに言い得て妙な、R18文学を読んだときのような苦しさのある、いい小説でした(なんだその表現)。
短編集ですが、すべて表題にもある「ホテルローヤル」というラブホテルにまつわるお話。
主人公はホテルの経営者や清掃員、そしてユーザー(カスタマー?)などで、時間や場所は少しずつズレながらもゆるーく相関があります。
どれも少しずつ悲しさや影を持った作品で、私が読んでる最中と読んだ後に思い浮かんだ小説全体の表現は(馬鹿にされるの覚悟で)「徹夜明け」。
や、それは別にラブホテルだから一夜を過ごすとかそういうことでなくて、
登場人物、読みながらの私のイメージはなんかずーっと眠たそうなんですよ、半目状態というか。勿論そんな描写はないのですが。
例にあげるなら『バブルバス』という作品。
舅と同居しているために旦那とご無沙汰な恵という女性が主人公で、ひょんな理由で空いた時間に突然「ホテルローヤル」へ旦那を誘うという物語。
その後舅の死や旦那の左遷と、まあ未来のない描写のまま終わっちゃうので、先ほど言った通り悲しみも影も濃いんですが、
前半にホテルに行ったことが、恵にとって何かしらの支えになっているような終わり方で、その感じが「夜明け」とまでは開けていないまでも、ダウナーな朝=「徹夜明け」くらいには光差したように感じました。
『シャッターチャンス』という作品では、好きだった彼氏に「ヌードモデルになってほしい」というお願いを断れず、「ホテルローヤル」で撮影される女性が主人公。
撮影中のホテルの薄汚い、レイコップでも取りきれないようなダニや埃の舞ったような描写、
そして撮影後、つい数分前まで過激なポーズを恋人に要求していたにも関わらず「そろそろお互いの実家に挨拶したほうがいいと思うんだ」と切り出ちゃう彼氏の絵も言えぬ気持ち悪さ、
もーー読んでてイヤーな気持ち!!しかしないのですが、それでも半プロポーズを受けた主人公の言葉にできない感情があるから、これも単なる「絶望」じゃなくて、とりあえず朝が来たという「徹夜明け」、そんな感じでした。
レビューが下手で全く伝わらないと思いますが、私の表現ではこれが精一杯、、
テイストは窪美澄さんの作品のような絶望押しに近いですが、そこともどこかまた違う感じで新鮮でした。
直木賞ってなんだかんだで面白いなぁと、読むたびにいつも思います。