bookworm's digest

33歳二児のエンジニアで、日記をずらずら書いていきます

記事一覧 ブログ内ランキング 本棚

2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
tacbonaldの本棚




陸王

 

陸王

陸王

 

 

 

『陸王』   /    池井戸潤

 

★    ×    86

 

(内容紹介)
勝利を、信じろ――。
足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。

埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者だ。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。そんなある日、宮沢はふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してはどうか。
社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかし、その前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発、大手シューズメーカーの妨害――。
チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。はたして、彼らに未来はあるのか?

 

ちょーー久しぶり池井戸潤さん。どれくらい久しぶりかというと、前に何を読んだか覚えてないくらい。

ブクログを漁ったところ、2012年に読んだ『『鉄の骨』のレビュー 池井戸潤 (tacbonaldさん) - ブクログ』が最新でした)

「勧善懲悪」をキーワードに、弱者が強大な力に打ち勝つ爽快感が好評を博して今や超売れっ子作家の最新作。

毎回テーマは違えど、今回も期待にそぐわぬ水戸黄門感が前面に出てて、池井戸ワークスここに極まりという感じでした。

 

 

今回のテーマは「ランニングシューズ」。

足袋の老舗メーカーこはぜ屋が、時代の流れによって斜陽産業となった足袋の生産技術を、「人間本来の走り」をコンセプトとしたランニングシューズに生まれ変わらせるべく孤軍奮闘する中小企業もの。

調べると、物語にはどうやらモチーフがあったようです。

 

主人公であるこはぜ屋の社長は、ランニングシューズに関する知識こそないものの、ものづくりにかける情熱を持った魅力的な男性であり、その魅力ゆえ、飯山という新素材生産のスペシャリスト、村野という超一流のシューフィッターを味方につけ、じわじわと事業改革への地盤を固めていく。

 

その過程では半沢直樹下町ロケット同様、銀行からの融資問題、大企業からの圧力問題、従業員との軋轢問題といった、あらかた予想される池井戸流「壁ぶちあたりの構図」が過度な程描かれています。

作風が一辺倒だなぁという批評が生まれること覚悟でここまで「ど定番」を貫かれると逆に爽快!

しかもなんだかんだで、それら壁をぶち破っていく様は分かっていても感動させられました。

 

 

こはぜ屋の行く手を阻む大企業アトランティス、困難を吹っ掛けてくるものの最終的には成敗!

という大企業への強烈なアンチテーゼも相変わらず健在。

利益がそんなに大事かよ!結局は対人だろ!というメッセージ、「ははぁごもっとも、、」とひれ伏すしかありません、、、池井戸さんが売れる理由はこういった企業戦士への啓発を、エンタメ性抜群の小説に乗せて伝えてくれるからだろうなぁとヒシヒシと感じました。

(「企業とは利益でなく対人である」というタイトルのビジネス本よりよっぽど手に取りやすいですしね)

 

 

特に好きなキャラは技術一筋、クセのある飯山さんです。

今ちょうど直属の先輩がこういった、「気になることはすべて調べ尽くしたい」系男子なので、身近に感じられたという理由もあります(先輩は飯山さんほど捻くれていませんが)。

本作もきっと2年後くらいにドラマ化されるでしょうが、その時は半沢でいう赤井英和のようなゴリゴリのアウトサイダーが演じてほしいなぁ、、あっ、古田新太とか?

怒り(下)

 

怒り(下) (中公文庫)

怒り(下) (中公文庫)

 

 

『怒り(下)』    /     吉田修一

 

★    ×     91

 

内容(「BOOK」データベースより)
愛子は田代から秘密を打ち明けられ、疑いを持った優馬の前から直人が消え、泉は田中が暮らす無人島である発見をする―。衝撃のラストまでページをめくる手が止まらない。『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!

 

 

怒り(上) - bookworm's digest』に引き続き下巻。9/17映画公開を前にして、一切のキャスト情報をシャットアウトしたまま何とか読み終えました。

うーーんさすが吉田修一さん、、面白かったです、一気読み!!

 

 

 

全く異なる別々の場所で生きる、田代、直人、田中という素性の知れない3人の男。

彼らのうち誰かが、1年前に起こった殺人事件の犯人で、映画のキャッチコピー通り「あなたは殺人犯ですか?」と常に問いかけながら読み進めることになります。

上巻では3つの物語はの相関が全く読めず、彼らの周囲に生きる人々のサイドストーリーばかり先行して中々核心に触れられませんでしたが、

下巻ではじわじわと真実が明らかにされていく、そういった意味で後半加速型のど真ん中ミステリーであることは間違いありません。

 

が、読み終えた今、犯人は誰なんだという求心力以上に、上巻から過度とも取れる程ディテールを描いたサイドストーリーにこそ本作の核があったんじゃないかと思います。

以下、犯人のネタバレはしないまま感じたことを書きます。

 

 

3つの物語では共通して、身近な人物を信じるか信じないかということについて問うています。

その内の1人の男性は、過去に借金を抱えて逃げていることだけが分かっているものの、周囲の人物はそれが嘘か誠か疑い始める。

読みながら、最初から大方8割くらいはソイツが犯人かどうか気になる気持ちが心を占めていたのですが、いざ全てがわかってからの残りの2割は、一見関係なさそうに見えた「周囲の人物」に非常に心を奪われることになりました。

つまり犯人探しの要素を利用しながら、結局は吉田修一さんが著作でよく描く人間ドラマがしっかりと土台にある、といった構成になっています。(それゆえ映像化しやすい原作なのでしょうが)

#

ちなみに「周囲の人物」のなかでも一際目立つ「愛子」という悲しい過去を持つ女性、読後キャストを見ると宮崎あおいちゃんでした。

うおーーーピッタリ!!

ゲイ役を演じるであろう妻夫木くんと同じくらい個人的にピッタリなキャスト。観たいぜー、、

 

 

少し分からなかったのが、タイトルにもある「怒り」の意味。

これは犯人が犯行現場に残した文字ですが、これに触れられるのは犯行が起こった序盤、そして犯人が判明する終盤のみであり、繰り広げられるサイドストーリーの中ではほとんど出てきません。

もちろん犯人自体の物語もあるにはあるのですが、限られたページ数(それでも上下巻ですが)というのもあってか分量は少なく、「なぜ犯行を犯したか?」がわからないまま終わったのが少し残念。

わかる人がいたら是非教えてほしいです、、Amazonのレビューも読んでみようかな

 

 

『悪人』再び!と宣伝されていますが確かにその通り。

あの有無を言わせないダークな吉田修一さんの世界観を映画を期待したいです。

あと2日ですが間に合う方は是非原作を!笑

 

 

 

 

怒り(上)

 

怒り(上) (中公文庫)

怒り(上) (中公文庫)

 

 

 

『怒り(上)』    /    吉田修一

 

★    ×    85

 

内容(「BOOK」データベースより)
殺人事件から1年後の夏。房総の漁港で暮らす洋平・愛子親子の前に田代が現われ、大手企業に勤めるゲイの優馬は新宿のサウナで直人と出会い、母と沖縄の離島へ引っ越した女子高生・泉は田中と知り合う。それぞれに前歴不詳の3人の男…。惨殺現場に残された「怒」の血文字。整形をして逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!

 

 

愛に乱暴 - bookworm's digest』以来の吉田修一さん。

近いうち必ず読むと誓っておきながら、気づけば1週間後にはもう映画が公開、

なんとしてでも映像による登場人物バイアス状態になる前に小説を読まねば!と、積読待ち行列を飛ばしてひとまず上巻を読み終えました(情報を遮断して、誰がどの役かは未だ知りえません、、何とかこのまま下巻まで!)。

 

 

 まだ半分もなのでサラッとしたレビューになりますが、簡単に言えば、犯人が逮捕されていない殺人事件が序盤に発生し、その1年後にバラバラの3地点で、全く関係なさそうな話が展開されているのが上巻。

それぞれの地点ではバラバラのストーリーが展開されているものの、生い立ち不明の、明らかに怪しい男性がそれぞれのストーリーで出てきます。

上巻だけを読んだだけでは、まあ私の読解力がいくら乏しいとはいえ、序盤に発生した殺人事件との関連はサッッッッパリ分かりません笑

それゆえ本書のみのレビューとしては高得点付けられないのですが、早く下巻を読んでバラバラのストーリーを線で繋ぎたい!という欲を駆り立てられているのが現状。

不気味さをバックに、淡々と物語は進んでいますが、果たしてどう伏線回収していくのか気になって仕方ありません。

 

、、、てことですみませんがレビューも早々に、映画化の前になんとか下巻読み終えるよう努めます。。

七帝柔道記

 

七帝柔道記

七帝柔道記

 

 

 

『七帝柔道記』    /    増田俊也

 

★    ×    96

 

内容(「BOOK」データベースより)
「七帝柔道」という寝技中心の柔道に憧れ、二浪の末、北海道大学に入学した。しかし、柔道部はかつて誇った栄光から遠ざかり、大会でも最下位を続けるどん底の状態だった。他の一般学生が恋に趣味に大学生活を満喫するなか、ひたすら寝技だけをこなす毎日。偏差値だけで生きてきた頭でっかちの少年たちが、プライドをずたずたに破壊され、「強さ」という新たな世界で己の限界に挑んでいく。悩み、苦しみ、悲しみ、泣き、そして笑う。唯一の支えは、共に闘う仲間たちだった。地獄のような極限の練習に耐えながら、少年たちは少しずつ青年へと成長していく―。

 

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) - bookworm's digest

VTJ前夜の中井祐樹 - bookworm's digest

で、汗水流す男の様をこれでもかと描き、読むたびに気持ちを高ぶらせてくれる増田俊也さん、

戦う男をこんなにも魅力的に描く表現者を私は他に知りませんが、増田さんの北大柔道部時代を自伝的に描いた本書を読んで、私の中でますますその存在はオンリーワンになりました。
ホントにホントに素晴らしい作品でした、2016年ベスト!!


あらすじは至極単純、北大柔道部に憧れて入部した増田さんが、部員たちと切磋琢磨しながら強い柔道家を目指すもの。
その中でキーとなるのが、タイトルにもある通り「七帝柔道」と呼ばれる、今も脈々と受け継がれている伝統の試合。
これは増田さんの他著書でも触れられているものですが、簡単に言うと「参ったのない柔道団体戦」。


七帝戦は15人の抜き試合だ。抜き勝負とも呼ばれる。例えば先鋒で出た選手が勝てばその選手が試合場に残って相手校の二人目の選手と戦う。それにも勝てば三人目の選手と戦う。そうやって、勝った人間は自分が負けるまで、次々と相手校の選手と順番に戦っていく。
つまり極端に強い相手が先鋒に出れば、ひとりで全員を倒してチームを勝ちに導くことも不可能ではない。


そして、我々がテレビで観る、それこそリオオリンピックで観たような柔道と大きく異なるのが、参ったも場外も有効も効果も技ありも注意もなく、全て「一本」或いは「30秒の抑え込み」、そして「失神」のみでの決着となり、それ以外は引き分けであるということ。
「参ったがない」、それ即ち腕や首を極められていてもタップアウトできず、肋骨や腕を折られても試合は止まらず、落ちる(意識を失う)ことでようやく審判が肩を叩くという、安全・安心神話を目指すここニッポンの今とまるで逆行したルールになっています。

 

 

本書はそんな、初期PRIDEも追いつけないようなルールで行う七帝柔道に魅せられた増田さんたちの物語。
増田さんが入部後に味わうのは、「カメ」という、寝て抑え込まれないように、ひたすら自らを守る術。
どんな強い相手でも引き分けにさえ持ち込めば次の相手に遷移することから、七帝柔道において非常に重要な戦法であり、明けても暮れても1年目はこれをひたすらやらされ続けます。
けれど先輩部員は容赦なく後輩たちを落としに、要するに力づくでカメを解いて失神させてくる。
本書ではブラックアウトの恐怖について再三書かれていますが、UFCなんかでもたまに観る「人が落ちる瞬間」、それは観ているだけで肝が冷えますが、落とされるとわかっていて毎日練習に向かうその恐怖たるや想像もつかず、前半は「なぜこんな部を続けているんだ、、」とひたすら恐ろしかったです。
(恐ろしいといえば「カンノヨウセイ」という行事についてもかなり震えました、、長くなるので書きませんが、、)


けれど、そんな地獄の日々の合間に描かれる、同期や先輩とのやりとり、そして試合の描写にもう完全にやられてしまいました。
特に前半、1年目の増田さんが初めて観た七帝柔道で、憧れの先輩たちが強豪校に負け涙するシーンは、その時点でまだ半分も読んでないにも関わらず感情移入が過ぎて、悔しくて悔しくて引きずるほどでした(電車で読んでいたのですが、降りてからもしばらく頭グルグルでした笑)。
辛い日々と仲間、これはよくある構図ですが(それこそ、レイヤーは違えど『ROOKIES』とかもそうですが)、増田さんは本当に「戦う男」を描く力があり過ぎるので、こんな単純な構図でも感動させられてしまいます。


また、これがノンフィクションであるということも尚乗っかっています。
フィクションだと、負けた悔しさを胸に次年度、リベンジして大団円を迎え終わりそうですが、

終盤に描かれる、増田さんにとっては2回目の七帝柔道、ここでも北大は敗れてしまいます(それどころか増田さん、怪我で出場していません)。

だから、七帝柔道に関する本書を読んだ感情は「ただただ悔しい」。勝ってハッピー、そんな白黒ついた状態でないところが何とも歯がゆいです。

 

けれど、七帝柔道を軸に繰り広げられたこの壮大なノンフィクション、それ自体には本当に感動させられました。

はじめにも書いた、「なぜこんな部を続けているんだ」という疑問、それに対するアンサーが終盤にポツポツ出てきますが、私が個人的に感銘を受けたのが、入院中の増田さんが考えたことでした。

 

学問だってスポーツだって同じだ、他のあらゆることだって同じだ。たまたま与えられた環境や、天から貰った才能なんて誇るものでもなんでもない。大切なのは、いま目の前にあることに真摯に向き合うことなのだ。自分が今持ってるもので真摯に向き合うことなのだ。

 

あの地獄の日々を耐え抜いてきた増田さんにこんなこと言われると説得力しかない!もう、仕事疲れたなんて言ってゴメンナサイと北海道に向かってジャンピング土下座したい程!

それ程、終盤のこの言葉は胸に響きました。

 

 

男臭い内容(とタイトルと装丁)に見えがちですが、老若男女・理系文系・体育会系文科系、問わず誰もが胸打たれる素晴らしいノンフィクションと思います。

ぜひぜひみなさん読んでください!!ここ最近でダントツの激プッシュ!!

 

 

 

 

コンビニ人間

 

コンビニ人間

コンビニ人間

 

 

 

『コンビニ人間』    /     村田沙耶香

 

★    ×    93

 

内容(「BOOK」データベースより)
36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。

 

 

芥川賞受賞作ってのは、内容うんぬんというよりもそれまでの人生で私が読んだことのなかった構成や文体を楽しむものというか、

だからここが面白かったのだと紹介しづらい、けど「それを読んだ俺は時代についていってる」という下世話な優越感も味わえるとか、

なにか物語以外のオプションに見出しがちで、まあプロット楽しむなら他の賞レースでいいよなぁという気持ちを今まで持っていましたが、

 

どうしたんだ芥川賞選考者!!と声が出るくらい本作はプロットもしっかりした、素晴らしい小説でした。芥川賞のイメージを変えるほど、これなら人にオススメできるなぁ〜

 

 

主人公は高校卒業後、18年もコンビニのアルバイトとして働く独身女性。

週5日、朝から晩までひたらすらコンビニのことだけを考え、早く寝るのはコンビニのため、夢の中でもレジ打ちや発注しちゃったり、「1人の人間である前にコンビニ店員」という決め台詞を持っていたりする。

そんな風に日々の生活がコンビニから一切出ない、決まり切ったルーティンをこなしています。

 

 

んでミソなのが、一般的な小説だとこの「決まり切ったルーティン」が中盤あたりまで描かれて、後半にそれから脱却する白馬の王子様的展開となり、「外の世界はこんなにも広かったんだ、、!」という開けた終わり方となるのが多いと思いますが、

本作では真逆、「やっぱり私はコンビニ人間なんだ」ということを最終的に謳う、というところ。

高校卒業後、特に理由もなくアルバイトでコンビニ店員を続けてきた主人公、当然家族や友人からは転職や恋人の話が尽きない。

その理由は、「一般的・平均的な36歳女性」というハコがあるのなら、主人公はそこから大きく逸脱しているから。

だから変・おかしい・気持ち悪いと貼られていくんですね。

 

そんな言葉を受け主人公は、これ以上周囲の人間を悲しませないためにも、そろそろ「ハコ」にはいったほうがいいのかしら、、と、同じくアルバイトで勤務していた1人の男性を自宅に住まわせるようになります(この住まわせ方がまあ面白いのですが笑)。

それが世に言う、一般的・平均的だから。

 

その後も転職活動したりして、ハコに収まるよう努めますが、最後には前述の通り、やっぱりコンビニに戻ってしまう。

これ、角度は違えど主張としては西加奈子さんの作品に非常に近いものを感じました。

「自分は自分」という軸は大事、ということは頭では分かっているけれど、いざハコから逸脱した人を見ると反射的に軽蔑してしまうことがあるし、自分は逸脱しないよう反射的に努めることもある。

現実世界で私がこの主人公に会えたなら、やっぱり軽蔑してしまうんだろうなぁ、、

けれどなぜハコから逸脱することが悪いことか、ハコが正しいことかってことが説明できない限り誰にも批判する権利はないので、こういった作品を読むたびに自分は小せえなぁと恥ずかしくなります。

 

主張も非常にわかりやすい分、短いながらも印象に残る作品でした。

万人にオススメできる珍しい芥川受賞作品と思います、ぜひ!!