bookworm's digest

主に本についてのレビューや、、、その他

記事一覧 ブログ内ランキング 本棚

2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
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降伏の記録

 

降伏の記録

降伏の記録

 

 



『降伏の記録』    /    植本一子

 

★    ×    96

 

内容(「BOOK」データベースより)
末期癌の夫は手術によって一命をとりとめたが、半年後に転移がみつかる。繰り返される入退院のなかで育っていく子どもたちと、ときおり届く絶縁した実家からの手紙。そしてある日、わたしは夫との間に、決定的な“すれ違い”があることに気がついたのだ…。生きることの痛みと歓び、その先に拡がる自由を鮮やかに描く「生」の記録。

 

東京の友人に頼み込んで、名前入りのサイン本購入。

しばらく執筆活動を休むそうなのでこれが最後かもしれない、と不安と期待モリモリで読みましたが、本当に素晴らしい読書体験でした。

西加奈子さんの『サラバ!下 - bookworm's digest』読んだ時もそうでしたが、一人の文筆家が作品を通じて「私は書きたいこと、書ききった!!!」と感じさせてくれる作品でした。

また、個人的にエッセイでそれを感じたのは初めてでした。

 

家族最後の日 - bookworm's digest』から引き続き、旦那であるECDが癌に苦しむ描写、二人の娘を抱え日常に苦しむ描写が多い著者視点のエッセイです。

前提としてエッセイ、なので基本的には著者植本さんが「なにを買った、どこへ行った」という事実ベースの文字量多めで、合間合間に心情描写が挟まれているという構成なのですが、

前者の事実ベースの文章、これがまずかなり面白いというのが今までの植本作品と違うところでした。

かなわない - bookworm's digest』も『家族最後の日 - bookworm's digest』も、印象に残っているのは「そこまで言うかよ一子さん!」という、著者のオープン過ぎる心情描写の怖いもの見たさ、というのがどうしてもあるのですが、

本書はそこ以外の日常描写が本当に上手くて、写真家でなく作家としての表現力も広がっているような印象を受けました(だから欲を言えばもっと書いてほしい、、)。

 

んで一方の心情描写、これまでの作品同様オープンな植本さんが見られますが、

今回、最後の数十頁に「白いページ」として記された文章、これが槍のように降り注ぐもので、もう既に物議を醸しているだろうし、これまでのファンを裏切る、いくとこまでいってるものでした。

けれど私にとってはこの数十頁が、これまで30年生きてきて人並みに読書してきたけれど、ここにきて読書に対する新たな概念を植え付けてくれるようなものでもありました。

 

 

植本さんは、旦那であるECDに対し、

いなくなってほしい

と思っていることが書かれています。

それまでも別の男と寝たり理不尽な要求を押し付けたりと、スレスレアウトな妻っぷりが散々出てきたその後で、いなくなってほしいと思っている自分の感情、そしてその事実をECD本人に打ち明けたことが書かれています。

 

それまでは貪るスピードで読んでいた私でしたが、この章はすぐには消化し切れずページをめくる手が止まりましたし、「それは違うだろ一子!」と憤りも感じましたし、思わずアマゾンのレビューやツイッターで調べましたし、

とにかくこれまでの熱を裏切りかねないものだったので驚きました。

 

けど時間を置いて冷静に、やっぱりこの数十頁は素晴らしいと感じたのは、

植本さんの作品は一貫してそうですが、

人が言葉に表せない心情、

或いは言葉に出したとしても世の中には届かない立場、

それを、作家という世の中に届けられる立場である植本さんが言葉に表して世の中に届けている、

そこに大きな意味があるのだ、と思えたからです。

川上未映子さんの『きみは赤ちゃん - bookworm's digest』もそうでした。

特にエッセイは人間そのものを描くジャンルだから、フィクションである小説よりも圧倒的に重みがある一方で、

作家の方はこれからも人に見られながら読まれながら生きていくから、どうしても取り繕って良い格好した自分をエッセイの中で味付けてしまうのかなと素人ながらに思うのですが、

本作のラスト数十頁はそういった人の目、これからの見られ方、それを越えて出てきた言葉のように感じました。

だからこそ、(作中に出てくる周囲の友人も言っていますが、)植本さんの作品に救われる読者はたくさんいると思います(しかもその、救われ方というのは「泣いてすっきり!」とかいう短絡的なものじゃなくって、なんと言うか生活丸ごと変えてくれるような重さ)。

 

 

本作だけを読んでも、著者のすごさ・この作品のすごさは十分世の中に届くのではと思います。というか届け!!みなさん、植本さんに是非是非濡れてほしいと思います。

夜を乗り越える

 

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

 

 



『夜を乗り越える』    /    又吉直樹

 

★    ×    92

 

内容(「BOOK」データベースより)
芸人で、芥川賞作家の又吉直樹が、少年期からこれまで読んできた数々の小説を通して、「なぜ本を読むのか」「文学の何がおもしろいのか」「人間とは何か」を考える。また、大ベストセラーとなった芥川賞受賞作『火花』の創作秘話を初公開するとともに、自らの著作についてそれぞれの想いを明かしていく。「負のキャラクター」を演じ続けていた少年が、文学に出会い、助けられ、いかに様々な夜を乗り越え生きてきたかを顧みる、著者初の新書。

 

小説家『火花 - bookworm's digest』『劇場 - bookworm's digest

エッセイスト『東京百景 - bookworm's digest

の又吉さんを知り、本作は初の新書。

とは言え読んだ感じはほぼほぼエッセイ。そして、テレビや雑誌などで又吉さんが語る本への熱とかを知ってる人であれば特に新しい発見もない、いつもの又吉さんそのものな内容ですが、

何度同じようなことを言われてもやっぱりサイコー!「なぜ本を読むのか」、その問いに真摯に向き合ってる姿を見て、改めて本の素晴らしさを確認できた作品でした。

 

本書は要所要所で又吉さんのレビュー(中村文則さんや西加奈子さんが出てきて個人的にはそれも楽しめました)を挟みながらも、基本的には又吉さんが本に救われたということ、そしてだからみんなにももっと本を読んでほしいということ、そこに繰り返し言及しています。

又吉さんは芸人なので自分の体験なんかを面白く世に伝えるのが当たり前ですが、本書は新書ということもあり、そこをボカさずドストレートに表現しているのがとても良かったです。

変な人間に生まれてきてしまった。もうどう生きていったらいいのかわかりませんでした。

でも本に出会い、近代文学に出会い、自分と同じ悩みを持つ人間がいることを知りました。それは本当に大きなことでした。

今の時代ネットがあるので、上のようなことに気づかされる媒体は別に何でもいいと思いますし、私も格安SIMに変えてから電車でお笑い見たりMV観たりして本を読む時間は減りつつありますが、

過去に又吉さんのように、私もまた自分の悩みを本の中に見つけたり、本の中から答えを見出したりした人間なので、こうやって又吉さんにまた本を読む喜びを説かれると、毎日毎日本をアクティブに読み続けていたあの衝動(いとうせいこう風に「読書の初期衝動」)が蘇って、ちょっと泣きそうになりました笑

 

あと又吉さんいいなぁていつも思うのが、基本的にすべての本を愛しているから、自分が楽しめなかった読者は本が悪いんじゃなく自分が悪いんだって考えるところ。

『火花』を書いてよりその気持ちが強くなったと言っています。

最初に読んだ『それから』は文字がすごく小さく感じた。言い回しも難しいし。これは最後まで読むのがしんどいなぁと思っていたのですが、他の本を百冊ほど読んで戻ってきた時、全然文字が小さくなかった。本に慣れたのでしょう。近代文学の言い回しや表現に慣れた。理解できることが嬉しい。「おお、読めるぞ!」と興奮しました。

(中略)わからないことはおもしろくないことではないんです。簡単なことを難しくしたり複雑にする必要はないですが、複雑なことを簡単にして理解するよりも複雑なことを複雑なまま理解できた時の方がよりおもしろいと僕は思っています。

本の残念なところは、お金と時間を掛けて読み切った結果「つまらんかった」となることで、それに怯えて確実に評価を受けたものだけを手に取ったりしがちなのですが、又吉さんはその経験を自分の未熟さに変換して、

だから全ての読書を楽しめるんだろうなと感心しました。

なんか社会人になって勉強量も増えて、本の量より質を求め出したあたりから1冊1冊への期待値が高くなってる感があってそれが嫌なんですが、

本書を読んで今一度、つべこべ考えずとりあえず雑に量を読むのもアリだなって思いました。

図書館で10冊くらい借りたろかな!今そんなモードです笑

 

人工知能は人間を超えるか

 

 

人工知能は人間を超えるか』 / 松尾豊

★ × 87

内容(「BOOK」データベースより)
人類の希望か、あるいは大いなる危機なのか?「人間のように考えるコンピュータ」の実現へ、いま、劇的な進展が訪れようとしている。知能とは何か、人間とは何か。トップクラスの人工知能学者が語る、知的興奮に満ちた一冊。

私はなんちゃって画像処理屋さんですが、いよいよウチの会社も遅ればせながら人工知能の(正確にはディープラーニングの)適用をさまざまなアプリケーションに検討し始めたところで、私もじわじわと勉強しております。

人工知能には細かな技術がギッシリ散りばめられており、1日にして決して成らないのですが、本書は読み物としての人工知能理解、ということでどんな方にも比較的わかりやすく書かれた見事な作品でした。『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか - bookworm's digest』を彷彿とさせる知的冒険浪漫譚!

 

本書は人工知能を専門に研究する著者が、過去数十年に渡って何度も栄枯盛衰を繰り返した人工知能の歴史、そして現代のバブルを鑑みて今後の世の中どうなるのか、という2本立てになっています。

読み物として後半の「今後なくなる仕事」などの未来予想図も素晴らしいのですが、個人的には 中盤の「自己符号化器」と呼ばれる技術の章が一番面白かったです。

自己符号化器の説明にはいろんな前提が必要なのですが、イメージでいうと、赤ちゃんに「これは犬だよ」と教えてあげて、

その後赤ちゃんが犬を覚える(犬の特徴を理解する)までの思考回路をコンピュータで表したもの、みたいな感じです。

人工知能は究極、人間の脳をコンピュータで実現する(そして超えていく)ことが全てなのですが、そもそも参照元である「人間の脳」、これが池谷裕二さんとかの著書にもあるように、まあ解明されていない。

なので今流行りのディープラーニングブラックボックス(なぜこんな結果が出たのか理解できないという点)なのも、結局は人間の認識や判断がブラック(グレーくらい?)ボックスなので仕方ないのですが、

「判断するためにどうやって学習していくか」、それを本章では日本の天気予報を使って非常にわかりやすく説明しています。

学習過程を画像で可視化して説明しているのは腐るほど見たことがありますが、こうやって技術書としてでなく読み物として、文章だけで分かりやすく書かれているのは初めてでした。

画像分野から入るとどうしても他の分野へどう応用しているのかがイメージしにくいのですが、そういった方に本書はオススメです。

 

 

 

 

ホームシック: 生活(2〜3人分)

 

ホームシック: 生活(2~3人分) (ちくま文庫)

ホームシック: 生活(2~3人分) (ちくま文庫)

 

 



『ホームシック: 生活(2〜3人分)』   /   ECD, 植本一子

 

★    ×    94

 

内容(「BOOK」データベースより)
契約打ち切り、無収入、アル中、閉鎖病棟入院。臨界点ギリギリから生還した47歳のラッパー・ECDが、24歳年下の恋人との結婚、妊娠、出産を通して見つめた、「愛」と「生活」のドキュメント。

 

家族最後の日 - bookworm's digest』から間髪入れず購入。

ほぼECDさんの執筆ですが、何なんだこの夫婦、、マジで文章魅力的すぎる、、

エッセイ1話読むごとに喉の奥が締まるようなエモさを持った素晴らしい作品でした。

 

もともと入手困難なハードカバーが文庫化されたものなので、時系列では『働けECD わたしの育児混沌記 - bookworm's digest』より更に前、ECDと植本さんが結婚し、1人目のくらしちゃんが産まれたあたりのエッセイです。

 

私は読んだ順番上、エッセイ3冊分の「植本さんから見たECD」を十分にインプットしたあと、ECDさん本人の感情などを本作で初めて知ったのですが、

もう、前者と後者で差、無さすぎ。

つまり、植本さんが著書で描いたECDそのものが、本作でそっくりそのまま描かれていました。まずそこに驚き。

あとがきの窪美澄さんも少し触れていますが、1つの物語を多面的に見るということ、お二人の場合ある日のECDを、植本さんとECD各々から描くということ、

それをするとフツーは両者の気持ちに齟齬があって、それ故に物語に深みが出ると思うのですが、

本作を読んで、ECDはどちらが描いてもECDだし、逆に植本さんもどちらが描いても植本さんそのものであることが分かりました。

ECDはいつだって感情の起伏が緩やかだし、

植本さんはいつだって何かにイライラして夢中になってる。

これは互いが理解をしているからなのか、はたまたお二人が文章上手すぎるからか分かりませんが、いずれにしろこの二人にしかできない芸当で感動しました。

 

あと核であるECDの文章、これが心に刺さりまくりでした。

エッセイ故に内容うんぬんよりも流れる空気感の議論なのでレビューしにくいのでそのまま引用しますが、例えば『一日』というエッセイにはこんな文章が出てきます。

「もう起きたのー」

そう言いながらあぐらの上にくらしを乗せてミルクを飲ませる。飲み終えた後十分間は胃の中でミルクが固まるまで体を縦にして抱いてやらなければならない。その時間を利用してくらしを抱いたままPCを開けてメール等をチェックする。

 

風呂に入ったいちこから「いいよー」と声がかかると僕はくらしの服を脱がせて風呂場へ連れて行く。風呂場の床に座らせたくらしの体を僕が支えていちこがくらしの体を洗う。

 

風呂から上がったいちこと昼間親父が持ってきてくれたメロンを食べる。くらしにもスプーンですくった果汁を飲ませてあげる。もう十一時半を回っていた。

 

ホント、何気ない所作・心情を淡々と描いているだけ。

けどこういう描写を読んでいる最中、そして特に読んだ後!最初書いたように一々喉の奥が締まるような感覚を味わうのは、もう先が長くないECDの今を知っているというのももちろんあるでしょうが、

それ以上に描写があまりにも普遍的すぎて、読んでいる最中はまるで己が情景に溶け込んだようになるし、読み終わった後は自分の生活に置き換えるようになるからだろうなと思います。

もちろんECDはラッパー、植本さんは写真家で私とは異なる境遇ですが、その違いを超えてECDさんの文章は「こういうもんだよね人生って」と語りかけてくるようでした。

エッセイって好きな作家の日常を知れて嬉しいといった読み方が強いのかと思ってましたが、本作のように度々自分に置き換えるような読み方もあるのですね。

今更ながら、日常を発信するという素晴らしさに感動しました、、

 

 

月末には植本さんの新刊が待ってますし、ECDもたくさんの著書があるようなので、またまだ読もうと思います。

2017年下期、この夫婦に完全にやられました!

 

 

家族最後の日

 

家族最後の日

家族最後の日

 

 

『家族最後の日』 / 植本一子

 

★ × 95

 

 内容(「BOOK」データベースより)

母との絶縁、義弟の自殺、夫の癌―写真家・植本一子が生きた、懸命な日常の記録。

 

働けECD わたしの育児混沌記 - bookworm's digest』『かなわない - bookworm's digest』ときてジワジワはまっていった植本一子さん、3作目の本作に突入。

完全にもう、ファンになってしまいました。

素晴らしく良かったです、賛否両論あろうが、私にとって素晴らしく良かったです!

 

前作・前々作よりも1つ1つのエッセイの文字量が増え、また、テーマが「家族」となっているため、母親・義弟・そして旦那であるECDについて3部構成でそれぞれ描かれており、只々垂れ流しブログだった前2作よりも読みやすいのがまず特徴。

特に母親については前作にもあったように関係は最悪。

前作には著者が育児でメンタルやられ、娘たちを疎ましいと思ってしまったのも、結局は自分が母親に愛されてこなかったと感じている分、自分に愛されている娘たちを羨ましいと思ってしまっているから、という一文もありましたが、

そんな光が見えた関係も本作で再び崩壊、あとがきにはもう絶縁するとまで書いてあります。

こんな著者の振舞いに対して身勝手とか娘たちの気持ちを思えとか、そんな風に著者のレビューは毎度荒れていますし今回も然りですが、

私が思うのはこれも毎度のことですが、人が言葉に表現できない、そして著名人だからバッシングが怖い、そういった理由で世の中に出ない文章を著者が出している、そこにやっぱり価値があるのだということです。

 

著者の文章は、これは読んでいるとジワジワと感じることですが、ほんとうに思っていること「だけ」しか書いていない、

故に無駄な文章、奇をてらった文章、取り繕った文章、が一切ない。

本作の大半を占める石田さん(ラッパーのECD(=旦那さん)の呼び名です)の癌の闘病にだって、著者の身勝手さはたくさん出てくる。

旦那が病気で苦しんでいるときに何を!?と思うシーンもあるし、周囲に甘えているだけで案外充実した生活を送っている場面も垣間見られる。

けれど、じゃあそれを隠して美しくキャッチ―な部分だけを切り取ったエッセイを出せばいいかって言ったらそれは違うし、そうなると著者のオリジナリティは消えて一般的な作品に成り下がってしまうと思います。

冗長な主張になって申し訳ないですが、本作を読んでそんなことを感じました。

 

そしてそして続く新作、、!!完全に石田夫妻のファンになってしまい、応援する気持ちを持って影ながら購入しよう。

2017年も終盤に差し掛かっていますが、またまたすばらしい読書体験ができて幸せです。