bookworm's digest

主に本についてのレビューや、、、その他

記事一覧 ブログ内ランキング 本棚

2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
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劇場

 

劇場

劇場

 

 



『劇場』   /    又吉

 

★   ×    90

 

内容(「BOOK」データベースより)
演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った―。『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。夢と現実のはざまにもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。

 

火花 - bookworm's digest以来丁度2年ぶりの又吉さん新作。

前作はとにかく、テレビでのみ知っていた「太宰を愛した芸人又吉」を小説にそのまま投影した、もう書くことないんちゃうんかって読後感じたくらい又吉さんそのものを描き切ってて、2作目はどうなるんやと不安と期待を持って手に取りましたが、

やっぱ又吉さんだなぁーーーと、グイグイ惹き込まれました。素晴らしい!!

 

 

主人公は売れない脚本家で、まさかの恋愛小説です。

 主人公永田が街を死人のように歩くシーンから始まり、のちの恋人である沙希と変質者ばりの近づき方で2人が出会うのが序盤。

以降、永田のダメ男っぷりと沙希の魅力たっぷりの性格が描かれながら、笑ったり喧嘩したり泣いたり、本当にストーリーは恋愛小説小説しててビックリしました。

同じ時期に読み終わった友人は「ストーリーが良かった」と感想を言っていましたし、確かに『火花』ほど内面描写を前面に押し出すというよりは展開重視な感じもあって、より読みやすくはなってると思いますが、

私が心に残ったのはやっぱり、陰鬱だし理屈っぽいけど誰しも心に持っている、言葉にならないフツフツとした気持ちを見事に言い表すその表現力!!

 

例えば永田が街をうろつくしょっぱなの場面。

人と眼が合わないように歩く。人の後ろの後ろにも人がいて、更にその後方に焦点を投げていると誰とも眼は合わない。人の顔の輪郭はぼやけていて、明瞭な線としてまとまりかけたら自分がうつむけばよかった。

例えば、永田の劇団を見限って離れた青山という元メンバーが出した小説について、永田がメールで罵る場面。

民芸品店で売ってるオシャレな小さじ。お前の小説はそんな感じやった。持っててもいいけど、別になくて困るようなものでもない。(中略)創作ってもっと自分に近いもんちゃうんか。人のことなんてほんまは考えてられへんやろ?人のことを考えてる自分のことを考えんねん。すべては自分の才能の無さを隠すための言い訳。俺は見た奴が不愉快になる可能性も含んだ舞台、読んだ奴が憎悪して激昂する自画像みたいな文章書くわ。

 一個一個がいちいち説明過多で味が濃いですが、恋愛小説の中にも又吉さん自身がこうやって向こうから覗いてくる感じが時折あってすごく良い。

無理な人は無理だし、こんな奴実際に居たらヘドが出るぜと一蹴してしまえばそれまでですが、私はそんなことよりも小説家・又吉さんの唯一無二感が『火花』以降も続いていることがうれしいです。

 

あと本作の148, 149ページが個人的に最も好きなんですが、

これは長いので引用しませんが、街を歩く永田が、女性と酔っ払いが揉めるのを見たシーン。

2人のそばを、空手の型をとりながら真剣に進む少年が進んできて、

少年に気づいた女性と酔っ払いが道をゆずる、という描写です。

これを見た永田は

こんな風景を作りたいと思った。それぞれの人間が日常を抱えたまま、おなじ展開を願ったことで、それを数秒後に実現させることができた。

と感じています。

 

ここを読んだ時、何故だか胸から肩にかけてブルルッ!と震えるような、

(月に1回あるかないかくらいで、すごく良い文章を読んだ時になるんですが、アレなんなんやろ、、)

なんと神々しい文章なんだ!と、ものすごいカタルシスを感じました。

 

芸人の又吉さんが小説を出す、というだけで斜めから見る人の気持ちもすごくわかりますが、「芸人の又吉さんだからこそ書ける」小説ってのが今回もまた伝わってきて、今後も唯一無二であってほしいなぁとただ望むばかりです。

今本屋にバカバカ積まれているので是非!

 

 

こびとが打ち上げた小さなボール

 

こびとが打ち上げた小さなボール

こびとが打ち上げた小さなボール

 

 

『こびとが打ち上げた小さなボール』    /    チョ・セヒ

 

★    ×    87

 

内容(「BOOK」データベースより)
取り壊された家の前に立っている父さん。小さな父さん。父さんの体から血がぽたぽたとしたたり落ちる。真っ黒な鉄のボールが、見上げる頭上の空を一直線につんざいて上がっていく。父さんが工場の煙突の上に立ち、手を高くかかげてみせる。お父ちゃんをこびとなんて言った悪者は、みんな、殺してしまえばいいのよ。70年代ソウル―急速な都市開発を巡り、極限まで虐げられた者たちの千年の怒りが渦巻く祈りの物語。東仁文学賞受賞。

 

 『スウィングしなけりゃ意味がない - bookworm's digest』に続き重ための国外が舞台の小説、今回は韓国です。

韓国の小説は『ハンサラン 愛する人びと - bookworm's digest』以来?映画はよく観ますが小説はあまり知る由もないのですが、本作は母国では名著とされているそうです。

なかなかに読み疲れましたが、、読み応えたっぷり、韓国映画のような容赦なし小説でした。

 

 

舞台は70年代、著者に言わせれば

破壊と偽の希望、侮蔑、暴圧の時代。

 

自由とか民主主義とか口にしただけで捕らえられ、恐ろしい拷問を受け、投獄される。

時代だそう。私は無知で歴史に疎いですが、そんな時代だそうです。

それを知った上で本作を読むと、それでも書ききったことが信じられないと思うほど、時代に逆行した内容です。

連作短編集で、主人公は誰かと言われるとヨンス、ヨンホ、ヨンヒという3人の兄弟で、彼らは父親が「こびと」(※差別用語ですがそのまま書きます)であるが故に、差別され自由に生きられず、苦しい生活を強いられています。

 表題の『こびとが打ち上げた小さなボール』では、ヨンヒという妹が、家を強制的に撤去させた売買契約者の元へ忍び込む。

そこで毎晩カラダを売りながらチャンスを伺い、夜中に契約者を麻薬で眠らせた後に金とナイフを奪って逃げる、というシーンがあります。

文字で書くとセンセーショナルでわかりやすいですが、著者の(そして訳者の)あまりに上手な描写に読んでいる最中はずっと救われない気持ちでした。

永遠について私に言えることなど何もない。一晩が私には長すぎる。

いざ彼女が撤去確認原本を持って帰ってくると、こびとである父親は煙突から落ちて亡くなっていた。これで本短編は幕を閉じます。

 

また、『ウンガン労働者家族の生計費』と『過ちは神にもある』では、ヨンスという兄が工場で強制労働させられる様が描かれています。

そこは摂氏39度、飯は麦飯とキムチだけで1日の大半をドリルで穴を開け続ける作業に従事している。

ヨンスは使用者(雇用主)に対し、自分たちが如何に不当な扱いを受けているかを主張するシーンがありますが(この辺、時代背景を考えると発禁でもおかしくない)、人を人と平然と思わない、時代の潮流に完全にマヒった使用者たちの佇まいは異常で、なんたる闇かと気が重くなりました。

 

 

これだと単に、人の不幸を知って自分の幸せを確認するために本作を読んだのかと思われそうですが、

紹介した上記3編に限らず、本作の肝は著者の、というか訳者の、現在と過去を行き来する描写の上手さにあり、それがあったからこれほど重い内容でも読めた、という点です。

過去、とはヨンスたちが父親や母親と会話したシーンが主で、それらが突如差し込まれながら現在の描写が展開していくのですが、それがあまりに自然で、映画的な格好良さがある(伝えるのむずい)。

訳者のあとがきを見ると、過去のシーンの段落を変えたのは訳者だそうで、それもまた本作を読みやすくしている要因です。

(逆に言うと、段落分けがないとかなり読みにかったかと思います、、)

 

 

以前『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか - bookworm's digest』のレビューで、分子生物学という難解な学問も、福岡伸一さんという文筆家にかかればこんなにも面白く感じられると書きましたが本作もそう。

70年代韓国という、2000年代日本の私からしたら全く未知の世界の不条理も、著者にかかればこんなにも伝わる。

大長編ですがトリップしたい方は是非!

スウィングしなけりゃ意味がない

 

スウィングしなけりゃ意味がない

スウィングしなけりゃ意味がない

 

 

『スウィングしなけりゃ意味がない』    /    佐藤亜紀

 

★    ×    92

 

内容(「BOOK」データベースより)
一人の少年の目を通し、戦争の狂気と滑稽さ、人間の本質を容赦なく抉り出す。権力と暴力に蹂躙されながらも、“未来”を掴みとろうと闘う人々の姿を、全編にちりばめられたジャズのナンバーとともに描きあげる、魂を震わせる物語。

 

初作家・佐藤亜紀さん。装丁からして洋書かと思いましたが、54歳の日本の方でした。

ナチス政権下のドイツに生きるブルジョワ青年たちの物語。

キョーレツな描写あり、悲しみあり、私の感情をスウィングさせてくれた見事な長編でした、オススメ!

 

 

主人公エディは、お国のために兵役へ行くような時代の流れに逆らって、敵性音楽であるスウィング(ジャズ)に夢中な少年。

天才的な音楽家の友人たちと一緒に、日々踊ってラリって女と遊んで、絵に描いたようなヤンチャボーイの生活が描かれているのが前半です。

「ユーゲント」「ゲシュタポ」「ナチ」などと言った、聞いたことはあるけれど馴染みのない用語がたくさん出てくるので、まさに洋書を読むときの「育ってきた環境が違うから(セロリ)」分からない感覚を味わいました。

また、結構な頻度でジャズミュージックの曲名や歌詞が出てくるのですが、てんで無知なので全く理解できず、中盤までなかなか進まないページに若干飽きを感じました。

 

ただ、タイトルや装丁、前半のノリから、なんとなく最後にはエディたちが「戦争なんてまっぴらだ!プップー!(ラッパ音)」みたいな巨大コンサートを開いてカタルシス、みたいな青春ものを想像していたので、まあそれまでは頑張って読もうと思っていたんですが、

 

6章『残念なのは誰?』で、鑑別所送りになったエディが強制労働させられ、

7章『赤い帆に黒いマストの船』の最後に戦争が激化してからの様相はジェットコースターのようで一気読みでした。

 

 

『残念なのは誰?』では、鑑別所で側頭部がパックリ割れ、全ての爪を剥がれるような激しい拷問を受けたあと、エディは強制労働させられます。

そこでは食事もない状態でひたすら芋を掘らされ続ける、まさに人間の尊厳を削ぐ行為を強制させられ、次々と労働者が死んでいきます。

読みながら「大人しく兵役へ行ってくれ、、」とさえ思いましたが、

本作で初めて知った佐藤亜紀さん、心に刺さる言葉のプロで、特に拷問中に放ったエディの言葉がめちゃめちゃスウィングしてた(?)ので引用しときます。

ぼくたちのことなんか放っておけばいいんだって。わざわざしょっ引いて。痛めつけて。前にお会いした時はもう少しお元気そうでしたよね、パウルさん?こいつらは早晩終りだ。働きすぎて、薬飲みすぎて、最後は目を開いたまんま全身掻き毟ってるできものだらけのヤク中になって終り。完全に無意味なことのために人間が使い潰されるのを、ぼくは見てる訳だ。おお、パウルパウル、正直に言えよ、

こんな国、糞だろ?

 

また、戦争が激化し、黒い雨と人が毎晩降っては落ち、街は燃えて焼け焦げた死臭、そしてエディの両親は地下シェルターで死んでしまいます。

拷問されても心折れなかったエディですが、度重なる悲しみに、前半の勢いは萎んでしまいます(同時に私も心が痛くて辛かった、、)。

けれどここでも著者・佐藤亜紀さんの文章は、なんどもエディを(そして私を笑)立ち上がらせる力強さがあり、後半はなんども心震えました。

正しいのはこっちだ。ホールいっぱいの客が望む音楽を、国は邪魔できない。正しさの方が国より上だ。

 

いや、戦争が終るとかそういうこと、おれはもう考えられないからさ、

なんかもう今しかない、って言うか。先のこととか全然考えられなくなった。

 

時代も国も違ってとっつきにくいけれど、感じるのは結局「今に満足するな、流されるな!」という万国共通のメッセージで、佐藤亜紀さんの本作から流れ出るそれは本当に力強くて、戦争ものにも関わらず物凄く勇気もらいました。

ここ最近で一番です、本屋に並んでると思うので是非読んでみてください。

かなわない

 

かなわない

かなわない

 

 

 

『かなわない』    /    植本一子

 

★    ×    91

 

内容(「BOOK」データベースより)
育児日記『働けECD』から5年―写真家・植本一子が書かずにはいられなかった家族、母、生きづらさ、愛。すべての期待を裏切る一大叙情詩。

 

著者のことは知りませんでしたが、さんピンCAMPと反原発運動で有名なラッパー・ECDさんの奥さんだそう(作中ではECD = 石田さんと表記されていて、しばらく誰かわかりませんでした)。

本作は著者目線で、石田夫妻が東日本大地震後から数年間2人の娘を育てた日常を綴ったエッセイ。

去年も育児エッセイは多く読みましたが、ここまで暗い、やるせない気持ちになったのは初めてでした、、不思議な魅力に取り憑かれGW明け1週間会社帰りの電車で一気に読了。

 

 

 

エッセイなので基本的には著者が朝起きて保育園預けて仕事行ってECDと喧嘩して、という誰にでもある些細な日常を綴ったもので、
文章も完全に校正されておらず丁寧語も混ざったりしていて、まさに日記そのものになっています。

 

なのに不思議な魅力、、その理由の1つに、「あまりに自分を曝け出している」
ことが挙げられると思います。
例えば著者は2人の娘の育児に、言うなれば完全にノイローゼになっており、自分のイライラが抑えられず声を荒げ、躁鬱を繰り返すシーンが見られます。
日記、なので当然そういった感情を書き殴って当然なのですが、作品として万人に見られる以上、日記とはいえ「見られている自分」意識が無意識にありそうなものですが、本作にはそれがない。
だからアマゾンレビューでも、感情丸出しで子どものように娘に当たり、育児から逃げ夜な夜なライブ鑑賞に繰り出し、挙句の果てにほかの男性と恋に落ちた著者を叩きに叩いたものばかり。
正論を振りかざせばそれは至極真っ当な批判なのですが、こういった感情誰しもがあるし、そこを隠さず物書きとして世に出したところに魅力を感じました。
(同じく育児本の『きみは赤ちゃん - bookworm's digest』『はるまき日記 - bookworm's digest』を読んだときも思いましたが、著者のような表現者がこういった感情を丸出しにしないと誰が書くんだ!と、名もなきアマゾンレビュワーに憤りたくなる。)

 

 

あと魅力は作中のECDの佇まい。
あまり詳しくなかったのでライブ動画とかネットで観たものの、激しいパフォーマンスの裏で、こんなにも普遍的なお父さん像を描いているとは思いませんでした笑。
著者が離婚を切り出したときのECDの返し、娘を思っての意見はすごく痺れましたし、金ないのにレコード買っちゃう可愛さも素敵。

 著者関係なく、ECDファンの方も垂涎ものじゃないかと思います。

 

 

最後の方で出てくる著者にとっての「先生」(カウンセリングの先生)曰く、著者が娘たちを疎ましいと思うのは、こんなにも自分から可愛がられている、自分に世話をしてもらえる娘たちが羨ましいから。

それは自分が母親に愛されてなかったことが根底にあるそうで、そんな自分もまた母親のようになっていて、娘たちもまた自分のようになってしまうのだという負の連鎖。

目を背けてはいけない子育ての恐ろしい部分を見せつけられたようで、肝に命じておこうと思います。

 

告白 / 凶悪 / 百円の恋

GW後半、家族全員完全に風邪でダウンしたので、ひさびさに引きこもりでした・・

普段ほぼ稼働していないdTVで見逃していた邦画を!てことで、『告白』『凶悪』『百円の恋』を立て続けに観ました。

見事にすべて面白かった!!個人的には『百円の恋』が特に良かった。久々の映画もいいなぁ・・

観た順にレビューします。

 

告白 【DVD特別価格版】 [DVD]

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湊かなえさんを知った本作、いつ読んだかなぁとmixi時代も振り返ってみると9年前、2008年12月30日に読んでいました 。

娘を殺された教師(松たか子)が、復讐のため犯人2人の給食にHIV患者の血を混ぜたことを告白するシーンから始まり、その後クラスメイトと周囲の人間が変わっていく様を描いたサスペンス。

内容はうっすらと覚えていましたが、映画も小説同様、とにかく第1章が衝撃的!

小説だと(レビューを振り返るに)第1章の衝撃ゆえに後半が薄くなっていましたが、映画でも最後のオチはインパクトの割に弱い感じが否めませんでした。

ただし小説と違いヴィジュアル面で、犯人の1人である少年B及び母親の木村佳乃が壊れる場面は、狂気じみていて非常に痺れました。

命の重さ、などストーリーに意味付けするような台詞がところどころあり、小説はどうだったのか忘れましたが、個人的には少年Bのシーンに代表されるような、ただただ狂気に満ち、人間の嫌ぁ~な部分を抉り取ったような湊かなえ節を全開にしてくれた方がより良かったかと思います。

 

 

凶悪 [DVD]

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実際に起きた 上申書殺人事件 - Wikipedia が基となった映画。

獄中の死刑囚(ピエール瀧)が告発した未解決の3つの殺人事件、これを編集部(山田孝之が暴き、逮捕に至るまでを描いており、ノンフィクション好きな方には溜まらない作品と思います。

本作はとにかくとにかく、ピエール瀧、そして未解決事件のもう1人の首謀者であるリリーフランキーの怪演に尽きます。

トーリーは山田孝之が事件を追う現在、そして2人が殺人を犯す過去を行き来して進んでいくのですが、殺人現場を描いた後者が徹底的にグロい。

似たような作品として園子温さんの 『『冷たい熱帯魚 [DVD]』のレビュー 園子温 (tacbonaldさん) - ブクログ 』がよく取り上げられていますが、あっちはかなりスプラッタに傾倒している一方、本作は外面のグロさよりも内面のグロさが際立っているように思いました。

グロって「怖いもの見たさ」以外に未だに意義を見出していないのですが、今回リリーフランキーの殺人風景があまりにイっていて、人の本質を描く材料としてグロの要素は必要なのかなぁとフワッと感じました。

まあ、これがノンフィクションであることが何よりの恐怖なのですが、、

役者も有名な方ばかり、演技もピカイチでただただ惚れ惚れしました。

  

百円の恋 [DVD]

百円の恋 [DVD]

 

主人公(安藤サクラ)は家族とうまくいかず、一人暮らしを始め、なかなか底辺の店員しかいない百円ショップに勤める。

そんな中近所のボクシングジムでトレーニングする男性(新井浩文)に興味を持ち、そこから主人公の人生が少しずつ変わり始めるというストーリー。

安藤サクラさんが日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞した作品です。

個人的に安藤さんといえば 『『愛のむきだし [DVD]』のレビュー 園子温 (tacbonaldさん) - ブクログ 』での飛び抜けた存在感が印象的だったのですが、その印象を更新してくれるほど本作は安藤さんの素晴らしさ一色!(逆に言えばそれ以外のキャストほとんど印象無し!)

前半は安藤さん、それに百円ショップの店員たちの『コンビニ人間 - bookworm's digest』を彷彿とさせる燻りっぷりに、それはそれで知らない世界を見せつけられるようで興味深かったのですが(クソみたいな店員のレイプシーンはめっちゃイライラしましたし)、

後半以降、本当にさっきみた安藤サクラか?と疑うほどどんどん安藤さんの顔つき体つきが変化していき、 父親と居酒屋で笑うシーンなんかめっちゃ美人に見えて(失礼)、なんと見事な役作りなんだと感動しました。

最後なんてちょっとした青春ものだし(しかもエンディングがクリープハイプだし)、2時間弱なのに最初と最後で全く顔を見せてくれました。

 

いやぁ邦画面白いなぁ、、、!!そしてdTV、これまで全くほったらかしですみませんでした。。残り2日のGWで何を観ようか楽しみです。