bookworm's digest

主に本についてのレビューや、、、その他

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2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
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1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった

 

 

1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった

1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった

 

 

『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』   /    せきしろ

 

★    ×    88

 

内容(「BOOK」データベースより)
深夜ラジオだけが世界との接点だった。それで十分だった。伝説のハガキ職人せきしろが自身の「あの頃」を描いた自伝的小説。

 

勝手に「せきしろ月間」として、小説2冊とエッセイ1冊を買いました。

本作はそのうちの1つ、せきしろ作品で最新の小説です。

北海道から「受験してくる」と親に嘘ついて上京したきり、全く実家に帰らずひたすらハガキ職人として生きていた著者の自伝的小説。

 

 

ダイオウイカは知らないでしょう - bookworm's digest』を読んで、せきしろさんの独特すぎる感性にしてやられましたが、その感性は思っていた通り、クラスで目立つまではいかないけれど脳内では常に爆笑を取り続けているような、まさに又吉さんの描く自意識ものと同じように磨かれたものであることが分かります。

特に上京するまでと上京してからの流れ、

 

友人にお笑いやろうぜと誘われて、上京してからは一生懸命表に立とうと(喋りのうまい友人の利用しながら)奮闘していたら、友人から「辞める」と言われたシーン

 

なんて、痛々しすぎて涙出そう。

そういった燻りエピソードを経て、最終的に著者はとあるラジオ番組にネタを投稿し、採用された時の喜びからハガキ職人としての生活を歩み出す。

現在のせきしろさんの感性を築いたのは、この時期なのでしょう。

 

 

んで面白いのが、東京でも同じハガキ職人として活動する友人ができ、

友人はラジオへの投稿を足掛かりに放送作家になる夢を持っているのですが、主人公はそんな友人に冷めているところ。

学生時代にお笑いやろうと意気込んで出てきた

主人公の(というかせきしろさんの笑)向上心はどこへやら、

東京での数年を経て、夢も何も持たなくなった主人公の(せきしろさんの)姿が後半描かれています笑。

 

小説というか自叙伝なので、最後の最後まで特に起伏なく終わって少し物足りませんが、秀でたネガティブ・自意識表現を持つ著者の小説としてはオンリーワンでした!

 

あと、収録された超短編『でも』が素晴らしく良かった。

残高59円となり、実家の母親にお金を振り込んで欲しいと頼むだけの話ですが、『ダイオウイカは知らないでしょう - bookworm's digest』で感じたような、短い文章でググっと引き寄せられる感覚、随所に感じられて、個人的にせきしろさんは小説よりエッセイの方が好きかなと感じました。

 

今月はあと2冊、せきしろさんを学びたいと思います。

 

ダイオウイカは知らないでしょう

 

ダイオウイカは知らないでしょう

ダイオウイカは知らないでしょう

 

 



『ダイオウイカは知らないでしょう』 /    せきしろ西加奈子

 

★    ×    95

 

内容(「BOOK」データベースより)
気鋭の作家二人が、三十一字に入魂!限られた字数に秘められためくるめく妄想と物語は味わい方も無限大。穂村弘東直子山崎ナオコーラいとうせいこう、華恵、山里亮太ミムラ光浦靖子星野源俵万智勝山康晴山口隆ともさかりえ入山法子…個性豊かな14人のゲストたちとともに、言葉遊びの世界を大冒険。

 

テーマに沿って著者2人、及びさまざまなゲストが短歌を詠み、談笑するのを纏めたもの。

これはサイコーに面白かった、、最近重め・暗めの作品を続けて読んでいた反動からか、久しぶりに電車でニヤニヤして読みました。

そしてせきしろさんという素晴らしい作家との出会い!!今まで知らずにごめんなさいでした!!

 

もともと本作を手に取ったのは西加奈子さんの名前があったから。

西加奈子さんはベスト5に入るくらい好きな女性作家で、特に近年の『サラバ!上 - bookworm's digest』や『i(アイ) - bookworm's digest』の

「自意識!」や「世界!」

みたいなド直球なテーマにまっすぐ闘った小説が本当に素晴らしく、また本人もすごく魅力的な方で、握手会ならぬサイン会にも2度ほど行きました。

一方のせきしろさんは、又吉さんとの共著が昔本屋に並んでいたなぁというだけのイメージで、作品はおろか本人の顔、年齢、経歴も一切知らないままでした。

だから本作に期待していたのは、あれほど分厚い小説に込めた西加奈子さんの感性が、短歌という31文字になるとどう違った角度で伝わるのかなぁというものでした。

 

ただ読み終わった今は、ただただせきしろさんの感性にヤラれました、、笑

短歌なので偉そうにレビューなんかできないですが、せきしろさんが詠むなんとも言えない悲しさ、可笑しさにまずページが止まり、

んでそのあとのトークで短歌の解釈が為されて腑に落ち、

その後改めて短歌を見返してポーッとする、その繰り返しでした。

また、西加奈子さん以外にも光浦靖子さん、星野源さん、そしてサラダ記念日の重鎮、俵万智さんなど、言語関係の仕事を持つ著名な方々も一緒になって詠むのですが、

奇しくも何を詠んでも尚、相対的に見てせきしろさんのがより輝くという形になってしまいました。(失礼な文章ですみません)

伝わらないので、特に印象的だったせきしろ歌を引用しておきます。

テーマ「体育館」

ボールのはねる音が思った以上に大きいからあわてて止めた

テーマ「飲む」

老人は薬を飲むものなんだと 泣かないものだと思っていた

テーマ「ゆずこしょう」

喧嘩しているがご飯は作ってある 柚子胡椒まで用意してある

テーマ「鳴る」

自転車のベルを鳴らされすぐ避ける まだ鳴らしている そういう人か

テーマ「痒い」

女子の手に虫刺されの跡見つけなんか嫌いに 自分のは良い 

 

また、最後にクロスエッセイという、一方の短歌を詠んでもう一方がそれにまつわるエッセイを書くという、お二人にしかできない章があるのですが、

そこに出てくる、西加奈子さんの詠んだ歌に対するせきしろさんのエッセイがもう上手すぎて上手すぎて、、、!!(特に1つ目のエッセイ悶えました)

 

 

読後の帰り道、即座にせきしろさんの小説を買ってみました笑

今年の残りでどっぷりせきしろワールドに浸かります!!

 

斜陽

 

 

斜陽 (角川文庫)

斜陽 (角川文庫)

 

 



『斜陽』    /    太宰治

 

★    ×    92

 

 内容(「BOOK」データベースより)
敗戦直後の没落貴族の家庭にあって、恋と革命に生きようとする娘かず子、「最後の貴婦人」の気品をたもつ母、破滅にむかって突き進む弟直治。滅びゆくものの哀しくも美しい姿を描いた『斜陽』は、昭和22年発表されるや爆発的人気を呼び、「斜陽族」という言葉さえ生み出した。

 

又吉さんの『劇場 - bookworm's digest 』を読み、彼が崇拝する太宰治を読みたくなる、といういつものスパイラルで本作を手に取りました。

多分『人間失格 - bookworm's digest』以来の太宰治でしたが、いやぁなんとまあ素晴らしい!!時代を越えて感動させられました。

 

 

舞台は戦後、主人公かず子は病気の母親、麻薬中毒の弟を持つ女性。

物語は序盤から、かず子の日常が描かれていて、母親との関係性や上原という片思いの男性の描写などが、ヌルッとしたペースで描かれています。

背表紙に書かれたあらすじの「滅びの姿」というほど大げさな悲愴感は、中盤に母親の死を迎えても尚あまり感じられません。

 

物語が急転し、おおおおお太宰治〜〜!!と脈打ってくるのは最後の20ページ!!

かず子が上原に会いに東京へ行った後、弟の直治が自殺するシーン。

直治はかず子宛に遺書を残します。

僕は、もっと早く死ぬべきだった。しかしたった1つ、ママの愛情。それを思うと死ねなかった。人間は自由に生きる権利を持っていると同様に、いつでも勝手に死ねる権利を持っているのだけれども、しかし「母」の生きている間は、その死の権利は留保されなければならないと僕は考えているんです。それは同時に、「母」をも殺してしまう事になるのですから。

中村文則さん『何もかも憂鬱な夜に(2013/3/22投稿) - bookworm's digest』で友人が主人公に宛てた手紙のように、人がなぜ生きるのか、死んではダメなのかを徹底的に考え抜いて文字に起こされていて、著者の生きづらさがグワーーッと伝わってくる感覚を味わいました。

そして本作が小説として最もスウィングしているのはその後、間髪入れず差し込まれたかず子から上原への手紙!

かず子は既婚者である上原の子をお腹に授かり、ファンキーモンキーな上原に対してこう書いています。

私の生まれた子を、たったいちどでよろしゅうございますから、あなたの奥様に抱かせていただきたいのです。そうして、その時、私にこう言わせていただきます。

「これは、直治が、ある女のひとに内緒に生ませた子ですの」

、、、どうでしょうこのスウィングっぷり!!しかものちの数行で本作は幕を閉じます。

弟の死についてのかず子の心のうちは描写されず、けれど上原との間に出来た子を、「直治が生ませた子なのです」と、上原の奥さんに言う。

これほどまでホラーな、ファンキーモンキーな展開ありますでしょうか、、。

 

私は謂わゆる文豪の小説をほとんど読んだことがないゆとりブックワームですし、太宰治についてもほとんど知識がありません。

だから本作は詳しい人からすれば違った見方になるのでしょうが、それでも失礼を承知で私の感想を述べますと、

 

本作は昭和版の昼顔です。ものすごくエンタメでした。

 

現代日本のマルッとした小説に飽きがちな方は是非!

 

 

劇場

 

劇場

劇場

 

 



『劇場』   /    又吉

 

★   ×    90

 

内容(「BOOK」データベースより)
演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った―。『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。夢と現実のはざまにもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。

 

火花 - bookworm's digest以来丁度2年ぶりの又吉さん新作。

前作はとにかく、テレビでのみ知っていた「太宰を愛した芸人又吉」を小説にそのまま投影した、もう書くことないんちゃうんかって読後感じたくらい又吉さんそのものを描き切ってて、2作目はどうなるんやと不安と期待を持って手に取りましたが、

やっぱ又吉さんだなぁーーーと、グイグイ惹き込まれました。素晴らしい!!

 

 

主人公は売れない脚本家で、まさかの恋愛小説です。

 主人公永田が街を死人のように歩くシーンから始まり、のちの恋人である沙希と変質者ばりの近づき方で2人が出会うのが序盤。

以降、永田のダメ男っぷりと沙希の魅力たっぷりの性格が描かれながら、笑ったり喧嘩したり泣いたり、本当にストーリーは恋愛小説小説しててビックリしました。

同じ時期に読み終わった友人は「ストーリーが良かった」と感想を言っていましたし、確かに『火花』ほど内面描写を前面に押し出すというよりは展開重視な感じもあって、より読みやすくはなってると思いますが、

私が心に残ったのはやっぱり、陰鬱だし理屈っぽいけど誰しも心に持っている、言葉にならないフツフツとした気持ちを見事に言い表すその表現力!!

 

例えば永田が街をうろつくしょっぱなの場面。

人と眼が合わないように歩く。人の後ろの後ろにも人がいて、更にその後方に焦点を投げていると誰とも眼は合わない。人の顔の輪郭はぼやけていて、明瞭な線としてまとまりかけたら自分がうつむけばよかった。

例えば、永田の劇団を見限って離れた青山という元メンバーが出した小説について、永田がメールで罵る場面。

民芸品店で売ってるオシャレな小さじ。お前の小説はそんな感じやった。持っててもいいけど、別になくて困るようなものでもない。(中略)創作ってもっと自分に近いもんちゃうんか。人のことなんてほんまは考えてられへんやろ?人のことを考えてる自分のことを考えんねん。すべては自分の才能の無さを隠すための言い訳。俺は見た奴が不愉快になる可能性も含んだ舞台、読んだ奴が憎悪して激昂する自画像みたいな文章書くわ。

 一個一個がいちいち説明過多で味が濃いですが、恋愛小説の中にも又吉さん自身がこうやって向こうから覗いてくる感じが時折あってすごく良い。

無理な人は無理だし、こんな奴実際に居たらヘドが出るぜと一蹴してしまえばそれまでですが、私はそんなことよりも小説家・又吉さんの唯一無二感が『火花』以降も続いていることがうれしいです。

 

あと本作の148, 149ページが個人的に最も好きなんですが、

これは長いので引用しませんが、街を歩く永田が、女性と酔っ払いが揉めるのを見たシーン。

2人のそばを、空手の型をとりながら真剣に進む少年が進んできて、

少年に気づいた女性と酔っ払いが道をゆずる、という描写です。

これを見た永田は

こんな風景を作りたいと思った。それぞれの人間が日常を抱えたまま、おなじ展開を願ったことで、それを数秒後に実現させることができた。

と感じています。

 

ここを読んだ時、何故だか胸から肩にかけてブルルッ!と震えるような、

(月に1回あるかないかくらいで、すごく良い文章を読んだ時になるんですが、アレなんなんやろ、、)

なんと神々しい文章なんだ!と、ものすごいカタルシスを感じました。

 

芸人の又吉さんが小説を出す、というだけで斜めから見る人の気持ちもすごくわかりますが、「芸人の又吉さんだからこそ書ける」小説ってのが今回もまた伝わってきて、今後も唯一無二であってほしいなぁとただ望むばかりです。

今本屋にバカバカ積まれているので是非!

 

 

こびとが打ち上げた小さなボール

 

こびとが打ち上げた小さなボール

こびとが打ち上げた小さなボール

 

 

『こびとが打ち上げた小さなボール』    /    チョ・セヒ

 

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内容(「BOOK」データベースより)
取り壊された家の前に立っている父さん。小さな父さん。父さんの体から血がぽたぽたとしたたり落ちる。真っ黒な鉄のボールが、見上げる頭上の空を一直線につんざいて上がっていく。父さんが工場の煙突の上に立ち、手を高くかかげてみせる。お父ちゃんをこびとなんて言った悪者は、みんな、殺してしまえばいいのよ。70年代ソウル―急速な都市開発を巡り、極限まで虐げられた者たちの千年の怒りが渦巻く祈りの物語。東仁文学賞受賞。

 

 『スウィングしなけりゃ意味がない - bookworm's digest』に続き重ための国外が舞台の小説、今回は韓国です。

韓国の小説は『ハンサラン 愛する人びと - bookworm's digest』以来?映画はよく観ますが小説はあまり知る由もないのですが、本作は母国では名著とされているそうです。

なかなかに読み疲れましたが、、読み応えたっぷり、韓国映画のような容赦なし小説でした。

 

 

舞台は70年代、著者に言わせれば

破壊と偽の希望、侮蔑、暴圧の時代。

 

自由とか民主主義とか口にしただけで捕らえられ、恐ろしい拷問を受け、投獄される。

時代だそう。私は無知で歴史に疎いですが、そんな時代だそうです。

それを知った上で本作を読むと、それでも書ききったことが信じられないと思うほど、時代に逆行した内容です。

連作短編集で、主人公は誰かと言われるとヨンス、ヨンホ、ヨンヒという3人の兄弟で、彼らは父親が「こびと」(※差別用語ですがそのまま書きます)であるが故に、差別され自由に生きられず、苦しい生活を強いられています。

 表題の『こびとが打ち上げた小さなボール』では、ヨンヒという妹が、家を強制的に撤去させた売買契約者の元へ忍び込む。

そこで毎晩カラダを売りながらチャンスを伺い、夜中に契約者を麻薬で眠らせた後に金とナイフを奪って逃げる、というシーンがあります。

文字で書くとセンセーショナルでわかりやすいですが、著者の(そして訳者の)あまりに上手な描写に読んでいる最中はずっと救われない気持ちでした。

永遠について私に言えることなど何もない。一晩が私には長すぎる。

いざ彼女が撤去確認原本を持って帰ってくると、こびとである父親は煙突から落ちて亡くなっていた。これで本短編は幕を閉じます。

 

また、『ウンガン労働者家族の生計費』と『過ちは神にもある』では、ヨンスという兄が工場で強制労働させられる様が描かれています。

そこは摂氏39度、飯は麦飯とキムチだけで1日の大半をドリルで穴を開け続ける作業に従事している。

ヨンスは使用者(雇用主)に対し、自分たちが如何に不当な扱いを受けているかを主張するシーンがありますが(この辺、時代背景を考えると発禁でもおかしくない)、人を人と平然と思わない、時代の潮流に完全にマヒった使用者たちの佇まいは異常で、なんたる闇かと気が重くなりました。

 

 

これだと単に、人の不幸を知って自分の幸せを確認するために本作を読んだのかと思われそうですが、

紹介した上記3編に限らず、本作の肝は著者の、というか訳者の、現在と過去を行き来する描写の上手さにあり、それがあったからこれほど重い内容でも読めた、という点です。

過去、とはヨンスたちが父親や母親と会話したシーンが主で、それらが突如差し込まれながら現在の描写が展開していくのですが、それがあまりに自然で、映画的な格好良さがある(伝えるのむずい)。

訳者のあとがきを見ると、過去のシーンの段落を変えたのは訳者だそうで、それもまた本作を読みやすくしている要因です。

(逆に言うと、段落分けがないとかなり読みにかったかと思います、、)

 

 

以前『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか - bookworm's digest』のレビューで、分子生物学という難解な学問も、福岡伸一さんという文筆家にかかればこんなにも面白く感じられると書きましたが本作もそう。

70年代韓国という、2000年代日本の私からしたら全く未知の世界の不条理も、著者にかかればこんなにも伝わる。

大長編ですがトリップしたい方は是非!