逢坂冬馬さん『同志少女よ、敵を撃て』読了。
アガサクリスティ賞大賞に続き直木賞候補作てことでズコズコ平積みされており、テーマと装丁がどうしても好みじゃなかったけど、好きなpodcastでも2021ベストに選ばれてたんで年始に購入。評判に違わぬ素晴らしいページターニングっぷりで一気に駆け抜けました。。
舞台は1942年の第二次世界大戦。ソ連側の主人公・セラフィマはドイツ軍により家族や友人を惨殺される。復讐のため一流の狙撃手を目指し、同じような境遇の仲間と共に狙撃隊として実戦へと向かう、という戦争フィクション。主人公が女性てことでフィクション感強いかと思いきや、どうやらソ連軍は本当に当時実際に女性も従軍してたらしく、著者逢坂さんはその事実から小説の着想を得たそう。
1万2000人をも狙撃─ソ連伝説の女性スナイパーたちはなぜ過去を隠したのか | ナチスドイツを恐怖に陥れた最強軍団 | クーリエ・ジャポン
個人的に戦争モノが本や映画に問わず苦手で、その理由の一つに男性優位社会が見えること。マチズモの産物が戦争であり、幹部クラスが介する重要なシーンでほぼ100%男しか出てこず、一方で犠牲者の多くが女性や子ども。そういった事実がかつて存在した、歴史を学ぶことはめちゃ大事だと分かりつつも、その捻れ構造に対するやるせなさ・悲しさや、男性である故のある種の恥ずかしさみたいなものを感じてしまうから積極的に摂取してこなかったけど、本作は「戦争と女性」という観点で書かれていることがとても興味深かった。
主人公含む狙撃隊は皆女性兵士で構成されていて、皆が第一線で戦い、女性に対する偏見の目に対してもパワフルに対抗している。映画『ドリーム』は宇宙開発に携わる黒人女性の話やったけど、アレ観たときの感覚と近い(けどこれを安い邦画で映像化されてほしくは無い、、)。
そういった女性社会の時流も見事に織り交ぜつつ、加えてエンタメとしてきっちり成り立ってるんも凄い。感覚的には5分に1回ペースで物語の波が立つ印象。戦争モノって往々にしてそうなんかもしれんけど、本作は実戦シーンのみならず訓練描写もめちゃめちゃエンタメしてのが良かった(物理学や数学混ぜて狙いまでの射程距離測る感覚磨くとことか)。著者・逢坂冬馬さんはまさかの本作デビュー作、且つ俺と2こくらいしか年齢違わないとこも衝撃、、!