『速く、ぐりこ!もっと速く!』 / 早乙女ぐりこ
毎巻必ず購入してる、フィジカル的な満足度が極めて高い紙の本を出版されてる百万年書房の新作。1作目の堀静香さん『精いっぱいの悪口』から個人的にはあまりヒットが無かったが、今作は素晴らしかった、、初めて読んだ早乙女ぐりこさんのエッセイ+日記。
タイトル通り、生き急ぐようなスピードと燃え尽きるようなアツさで日常を生きる著者の姿が描かれている。元カレに自死され、婚約者と破局し、マッチングアプリで出会った男に既婚者であることを隠されていたといった恋愛エピソードが矢継ぎ早に出てくる。そういった類のエッセイは今まであまりビシッと来たことが無かったが、本作はとにかくユーモラスで軽妙な表現がうま過ぎてガツガツと読み進められた。
村上春樹作品の女性蔑視的な表現をスルーできてしまうような人となんか絶対に付き合いたくないと思うのに、村上春樹のタイトルがぎっしり並んだ本棚の写真を見かけたらLIKEせずにはいられない。
酸いも甘いも自分丸ごと描き切ってしまうオープンマインドさがとかく気持ちいい。植本一子さんや金原ひとみさんとかにも同じ印象を持ってるが、(比較するもんではないが)早乙女さんはあの方々以上に開かれてて、文章からより「必要に駆られて書かなきゃ感」を強く感じた。
性別も境遇も思想も自分とは全く違う方やのに、そういったエッセイに惹かれるんは何故やろう。おそらく自分とは異なるからこそ、自分にないものを求める・羨ましく思うという感情から来るもんな気がする。著者も人間的にかなり欠落してるし、ここまで描くと日常や人間関係に支障来たすやろと心配するほど赤裸々やけど、それは自分には決してできない昇華のさせ方やなと感動すら覚える、その点でこういったエッセイ/日記に惹かれるんやなと今回改めて思い知った。
誰よりも強くなりたかった。他人にどう思われても構わなかった。精密機械になりたいと本気で思っていた。
繰り返しになるが、タイトル通り猛スピードで生き抜く著者の気持ち良い文章を堪能できる作品。商業出版は今作が初らしいがこれからも出していってほしいと思える方です。