『書籍修繕という仕事』 / ジェヨン
本の雑誌で紹介されていた韓国発エッセイ。グラフィックデザイナーとして働いていた著者・ジェヨンさんが、アメリカの「書籍保存研究室」で数年間働き、帰国後「ジェヨン書籍修繕」を開き、傷んだ本を修繕する仕事をする中で綴られたもの。
冒頭、書籍修繕に持ち込まれた本のbefore/afterがカラー写真で載っている。それを見ると確かに「復元」でなく「修繕」であることがわかる。てっきり元通り極力綺麗な状態に戻す作業を指すのかと思いきや、持ち主のイメージに合わせてジェヨンさんのセンスで装丁の色や文字フォント等をガッツリ変え、完全に世界に1冊の本として「修繕」されているのは驚いた。
魔法をかけたように元の姿そっくりに蘇らせる復元作業も素晴らしいけれど、長い年月をくぐり抜けてきたその時々の痕跡を消さずに残す修繕の可能性に、より興味をそそられる。そういう痕跡がより美しく残っていくように、それぞれの本の積み上げてきた時間の「形」を整えることが、書籍修繕家としての私の役割だと考える。
俺自身、本の何割かはインテリアとしても見てるので、新刊で買い、極力綺麗な状態で保管したいと思うタチである。なので本書に出てくる、ジェヨンさんに本の修繕を依頼するような方がいるということ自体想像したこともなかったが、本書を読んだ今では、例えば今上の子が熱心に読んでる学習漫画の特にフェイバリットな本なんかは、あの子の幼少期を形作った大切なものとして、いつか修繕するのも良いなと思える。
そんなふうに本に対する意識が変わる良書でした!