『MCバトル史から読み解く 日本語ラップ入門』 / DARTHREIDER
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内容(「BOOK」データベースより)
B BOY PARKからフリースタイルダンジョンに至る“現場”の生き証人が語るMCバトルの歴史。この一冊が示す日本語ラップの“基準”とは?
テレビを観なくなって半年ほど経ちましたが、その時間に取って代わった一番のメディアはラジオで、次にサイバーエージェントが運営するAbemaTVです(あ、YouTubeとかは除きます)。
そんなAbemaで観るのはほとんどが格闘技チャンネルですが、たまーに流れる広告でたまーに観るのが「フリースタイルダンジョン」というラップバトルの番組。
MCにZeebraで審査員にいとうせいこうというだけで観ていましたが、モンスター(敵役の設定)として登場するR-指定というラッパーがカッコよすぎたのを記憶しています。多分これ↓↓
本書はB-BOY PARKからフリースタイルダンジョンに至るまで、フリースタイルの歴史をラッパーの著者(恥ずかしながら知りませんでした。。)が紐解いた作品。
知らなかったことだらけで非常に楽しめました。フリースタイルダンジョンでHIPHOP知った気になってる私のようなニワカファンに激オススメ!
本書に書かれた歴史については本書を参照いただくとして(レビュー放棄)、以下無知な私が感銘を受けたことについて長々と書いていきます。
私はそもそも中学の頃、KICK THE CAN CREWから入ってm-floやDragon AshやRIP SLYMEを知って「あぁこれがラップだろユノンセイ?」と粋がってた、完全なる「オーバーグラウンド世代」(※造語)です。
しかもKREVAとLITTLEは耳馴染みが良く、且つ2とか3じゃなく7文字とかを連発して踏むので、国語好きな私の中では「HIPHOP=韻を踏む」という概念しかありませんでした。
んでこんな私でも一応KREVAがB-BOY PARKで伝説だったということは知っていたので、「B-BOY PARKというイベントがある」ということぐらいは認識していました。
そして更に「B-BOY PARKでKREVAが頂点を取った。そして俺はKREVAの所属するKICKを良く知っている。つまりアングラについても詳しい」みたいに思考を肥大化したバカ野郎だったので、般若や漢といったラッパーについては知ろうともしなかった素人だったのです(「知ろうと」と「素人」で踏んでみました爆)。
そんな私が本書を読んで、第1章『クレバ”以外の”スタイル』で、押韻だけでない「フロウ」(=ビートに合わせて言葉を演奏する様だそうです)や、対戦相手へのアンサーの的確さ、聴衆の巻き込み方・沸かせ方などの要素がフリースタイルに必要だということを知って、自分の無知さにムチを(ry
例えば名前だけは聞いたことあった鎮座DOPENESS、彼は本書で「特異点」と称されていますが、動画を探してみるとなんとまあ私が今までイツナロウバと思っていたHIPHOPが覆されること・・!
(本書で紹介されているUMB2009とは違いますが鎮座DOPENESSのまとめ動画。ハイライトは4:10あたりの晋平太とのバトルの「タッタタタタタ」笑)
もし私が聴きやすさと押韻の基準だけ持って観客採点で参加していたら大恥かいただろうし、そういう意味では本書で少しでも、流れがあって今に至ることを知ることができてとても良かったです。
ジャンル問わず、本書のように特定の分野について歴史を追って「なんで?」を1つずつ理解することは楽しいですね。
話は飛びますが連休前、会社でDeep Learning(コンピュータが囲碁のチャンピオンに勝ったとか言うアレです)の勉強会を開催することになり、技術の核となるニューラルネットワークという手法を歴史を追って1ヶ月くらい勉強したのですが、アレはなにも劇的な技術革新があってボンと火がついた訳ではなく、結局は30年前から変わらない構造で、ブームの大きな要因はネット社会による容易なビッグデータ収集とGPUによる処理能力の進歩だった、という結論に至りました。
上辺だけでなく成り立ちを知ることで本質を理解する、、私に足りない努力だと気付かされました。
話が逸れましたが、本書では多くのラッパーが紹介されていますが、恥ずかしながら知らなかったFORKというラッパー、動画を見ると一見フロウ重視の喋り口調かと思いきや、よくよく聴くとトンデモな韻を踏みまくっていて感動したので載せときます(結局押韻主義かよと言われそうですが根っからの国語好きなので仕方ない、、)。
【神パンチライン】NAIKA MC vs FORK - YouTubem.youtube.com
母音だけでなく子音すらも揃える技術(何というか知りませんが)で今までで一番好きなのが『HANDS』という曲のLITTLEの
おれはたまたまマイクを持ち ここにたまたまいる
増えていく携帯のメモリー それとたまったマイル
なのですが、上の動画のNAIKAとのバトルでFORKが放ったフレーズがカッコいいランキングを更新しました。
お前のスタイルが王道になっちまうんだったら 今後バトルの熱は相当冷める
それが正義だっていうHIPHOPシーンなら 俺は抜いた刀をそっと収めるよ
わかります?「相当冷める」と「そっと収める」。これを本番で入れてくるってどういう頭の回転?国語フェチの私は濡れる、、
いろいろ知ることが出来た良本でした。フリースタイルダンジョンちゃんと観ます!