川上未映子さん『黄色い家』読了。
個人的には『夏物語』以来の著者。WOMEN'S READING MARCH 2023でNINE STORIESの方が確か選書されてて購入したが、前知識なかったので読み始めて驚き、、ガッツリ長尺の骨太ミステリー。川上未映子さん、守備範囲広すぎる、、!
20年前の同居人・黄美子が、若い女性を監禁・殺害したのち逮捕されたニュースを知った主人公・花の物語。話はそこから花の過去エピソードに遡っていき、生い立ち、黄美子や友人との出会い、犯罪に手を染めていく経歴などが明らかになっていくという作り。
正に、血で血を洗うという言葉がふさわしい人生。発端はやはり貧困がきっかけで、目的は生きるため、必要なのは金、んで手段は犯罪。悪事を消すには、更なる悪事を重ねるしかなく、どんどんどんどん悪い方向へ進んでいく。正直、読み終わった後はゴッソリ気持ち持ってかれるほどの疲労感やったけど、読んだら最中はそのスパイラルの次を知りたくなってしまい、かなりの分量やけど一気に読み切った、そういう力が作品にあった。
花と黄美子が立ち上げた「れもん」というスナックが燃え、ヴィヴ(何故か終始、ラッパーのAwichをイメージして読んだ。。)という反社会の女性の手下となって犯罪に手を染めてく後半半分は、特に読み応えあった。偽のキャッシュカードでひたすら金を抜いてく描写で、金が下ろされる時の「バババババババーッ」という効果音、あれに似た爽快感みたいなものも感じた。勿論やってることは犯罪やねんけど、途中ヴィヴと花の会話で出てきた「貧乏に金は回ってこない。だから取りに行く」というような主張は有無を言わさぬ圧があったし、マイナスな話の中に「生きる!」というプラスの力を端々に感じる不思議な小説やった。
花と友人、そして黄美子の同居生活は、調べてもあまり明示されてなさそうやったけど、尼崎事件のオマージュなんかなと個人的に感じた。ただラストのシーンは、朝井リョウさんの『正欲』同様、報道される情報が全てでは無いという、物事の多面性を著者が主張してるようでとても良かった。てか書きながら、本作は頭からケツまで無駄な要素が一切ない、クリームが全体にパンパンに詰まったクリームパンのよう。よくこの熱量でこの分量を書き切るのな。。(語尾変)川上未映子さん、恐るべしでした、万人にオススメはしないが圧倒的読書体験!