『夫婦間における愛の適温』/ 向坂くじら
なにかと目がいってしまう出版社、百万年書房の新刊(このシリーズは今の所全巻制覇してる)。バッググラウンド情報一切なく買って読んだが面白かった。
著者・向坂くじらさんは調べると詩人、国語の教師、音楽活動など多能工な方っぽい。めっちゃ偏見やけど、始めはくどうれいんさんのような感覚的な言語センスで描かれたエッセイかと何故か思ってた。ただ読んでみると決して堅すぎないレベルで日本語のグラマーに忠実な文章でびっくりした。
タイトルも装丁もセンス良すぎるが、個人的にはタイトルはちょっと内容とそぐわない印象を受けた。もちろんタイトル通り結婚して2年になる夫との関係性についての篇も少なくはないが、それ以上に著者一人称に閉じた話の方が個人的には面白く読めたし、ひねくれた見方やけど、ちょっとキャッチーなタイトルつけすぎ感を感じた。(『愛の適温』だけでも良かったのでは)
一昨日買った八百グラムの肉がなくなって探すエッセイとか、サイコーに面白かった。気取らず、けど尖ったセンスも表に出しつつな文章という印象。そこは詩人というご職業柄を大いに感じるし、とある事象に対して「私はこう思う・こう捉えるのだ」という感性(と、言語化する能力)が、めちゃ高ぁ〜〜と惚れ惚れした。
好きだった一節。
やってきて過ぎ去る春が嬉しいのは、また春が来るからに他ならない。
暮らしの美しく、春の嬉しいのはまず、家の中の日々、わたしと夫とで完結する小さな日々が、反復し、永続するように、という望みのため。突然の訃報や、爆発や、みだらさが、その反復を止めてしまうことのないように、という望みのためだ。
俺自身はどちらかと言うと日々の繰り返しの大切さを重視する著者の夫に共感を覚えたけど、常に変化を求める著者の特性にも憧れるしこういう人が近くにいてバランス取れる夫婦はいいなと思う。あれ、こう書くと結局、夫婦の関係性についてのエッセイとしてやっぱ読めたんかも笑 さっき微妙に揶揄ってごめんなさい、、