『家族最後の日』 / 植本一子
★ × 95
内容(「BOOK」データベースより)
母との絶縁、義弟の自殺、夫の癌―写真家・植本一子が生きた、懸命な日常の記録。
『働けECD わたしの育児混沌記 - bookworm's digest』『かなわない - bookworm's digest』ときてジワジワはまっていった植本一子さん、3作目の本作に突入。
完全にもう、ファンになってしまいました。
素晴らしく良かったです、賛否両論あろうが、私にとって素晴らしく良かったです!
前作・前々作よりも1つ1つのエッセイの文字量が増え、また、テーマが「家族」となっているため、母親・義弟・そして旦那であるECDについて3部構成でそれぞれ描かれており、只々垂れ流しブログだった前2作よりも読みやすいのがまず特徴。
特に母親については前作にもあったように関係は最悪。
前作には著者が育児でメンタルやられ、娘たちを疎ましいと思ってしまったのも、結局は自分が母親に愛されてこなかったと感じている分、自分に愛されている娘たちを羨ましいと思ってしまっているから、という一文もありましたが、
そんな光が見えた関係も本作で再び崩壊、あとがきにはもう絶縁するとまで書いてあります。
こんな著者の振舞いに対して身勝手とか娘たちの気持ちを思えとか、そんな風に著者のレビューは毎度荒れていますし今回も然りですが、
私が思うのはこれも毎度のことですが、人が言葉に表現できない、そして著名人だからバッシングが怖い、そういった理由で世の中に出ない文章を著者が出している、そこにやっぱり価値があるのだということです。
著者の文章は、これは読んでいるとジワジワと感じることですが、ほんとうに思っていること「だけ」しか書いていない、
故に無駄な文章、奇をてらった文章、取り繕った文章、が一切ない。
本作の大半を占める石田さん(ラッパーのECD(=旦那さん)の呼び名です)の癌の闘病にだって、著者の身勝手さはたくさん出てくる。
旦那が病気で苦しんでいるときに何を!?と思うシーンもあるし、周囲に甘えているだけで案外充実した生活を送っている場面も垣間見られる。
けれど、じゃあそれを隠して美しくキャッチ―な部分だけを切り取ったエッセイを出せばいいかって言ったらそれは違うし、そうなると著者のオリジナリティは消えて一般的な作品に成り下がってしまうと思います。
冗長な主張になって申し訳ないですが、本作を読んでそんなことを感じました。
そしてそして続く新作、、!!完全に石田夫妻のファンになってしまい、応援する気持ちを持って影ながら購入しよう。
2017年も終盤に差し掛かっていますが、またまたすばらしい読書体験ができて幸せです。