『×と○と罪と』 / RADWIMPS
[収録内容]
01. いえない
02. 実況中継
03. アイアンバイブル
04. リユニオン
05. DARMA GRAND PRIX
06. 五月の蝿
07. 最後の晩餐
08. 夕霧
09. ブレス
10 パーフェクトベイビー
11 ドリーマーズ・ハイ
12. 会心の一撃
13. Tummy
14. ラストバージン
15. 針と棘
明けましておめでとうございます。
年末年始にいくつか旅行が続き、荷物を減らすために電車はもっぱら音楽鑑賞でしたので、2014年一発目は音楽のレビューでいきます。
昨年末に発売したradwimp最新アルバム。
前作『絶体絶命』が過去の作品の中でも際立って好きだったので、今回もかなり期待していましたが…
うーーーーぅん、やはり素晴らしかった!
以下、感想
あくまで個人的にですが、前々作の『アルトコロニーの定理』までの作品では、いわゆる「中2病」と言われるまでに大袈裟でねちっこい詞が肌に合うかどうかが、radwimpsが身に浸透するか否かの分かれ目になっていたと思います。
実際私もゴリゴリの変調や絶妙な言葉遊びにハマる一方で、「神」や「死」と言った極端な表現についてはあまり好きになれなかったというのが本音です。
けれど前作は、一語一語の重みというよりは、楽曲トータル、アルバムトータルの完成度が目立っているように感じます。
それは本作も然り。
前に後ろにうねるように出てくる音楽に、野田洋次郎さんのセンス抜群の日本語が乗っかってくるこの感じはめちゃくちゃ気持ちいい。
(だから『愛し』や『25個目の染色体』のような、人間の芯を抉り取るような詞を持った楽曲にハマった昔からのファンの方なんかには、あまり受けないのかなとも思いました。)
本作は15曲、どれも5分前後の計77分超、情報量としては過去最多のアルバムです。
この言葉数、そして詞の内容から連想するのはいつもthe mirrazなんですが、聴く姿勢として決定的に異なるのは、radなら次に何か面白い言葉や音を乗せてくるだろうという期待感を抱かせてくれるところです。
言い換えれば予想できない。
例えば2曲目『実況中継』は神と仏の視点から人間の醜悪を描いた、本アルバム内ではおそらく最も政治的でシニカルな楽曲ですが、詞の内容が刺さるというよりは、絶妙に肩透かしを喰らう韻の外し方、不規則な音がダダダダダと連打され圧倒されるまま気づけば終わっている、というような「してやられた感」が刺さります。
この楽曲から、正直野田さんが何に対しどのように怒っているかは分かりませんが、私個人としては無理に意図を汲み取ろうとせずとも、内容の抽象性をそのまま置いた状態の方が単純にカッコいいと感じました。
(ただしやっぱり真の意味を知りたい気持ちはあるので、知っている方がいたら教えてください笑)
んで、私が一番好きな、『五月の蝿』。
はじめて聞いたときは気持ち悪さが先行していましたが、聴く度に惹かれてゆき、過去の作品の中でも最も好きな曲の一つとなりました。
僕は君を許さないよ 何があっても許さないよ
通り魔に刺され 腑は溢れ 血反吐吐く君が助け求めたとて
ヘッドフォンで大好きな音楽聴きながら 溢れた腑で縄跳びをするんだ
僕は君を許さない
といったヒステリックな詞、そして如何にもオカルトなPVに、最初はなんだかなぁ…と少し呆れてもいましたが、この曲の持つ異常なまでの力強さみたいなものが頭から離れなくなってしまいました。
以前三浦しをんさんの 『天国旅行』という小説のレビューで、死にフォーカスすることでかえって生が浮き彫りになってきると書きましたが、この曲もその方法論は共通で、殺意を剥き出しにすることで、何故か生きる底力みたいな単純なものが生まれているような感覚を味わいました。
昔からのファンも掴まれて離さないであろう『会心の一撃』や『ラストバージン』、ヒップホップに傾倒しながらもオリジナリティを保った『アイアンバイブル』『Tummy』などバラエティに富み、過去のradに辟易していた方も、そもそも聴いたこともない方にもお勧めできる作品です。
2014年スタート!