『独りでいるより優しくて』 / イーユンリー
★ × 88
内容(「BOOK」データベースより)
一人の女子大生が毒を飲んだ。自殺か、他殺か、あるいは事故なのか。事件に関わった当時高校生の三人の若者は、その後の長い人生を毒に少しずつ冒されるように壊されていく―凍えるような孤独と温かな優しさを同時に秘めたイーユン・リーの新作長編。
『千年の祈り(2013/4/13投稿) - bookworm's digest』『黄金の少年、エメラルドの少女 - bookworm's digest』以来、2年ぶりのイーユンリーさん。
前2作はいずれも短編だったので長編は今回が初、更にあらすじだけを読むと「え、ミステリー!?」と読む前からいろいろ想像して読み始めましたが、
やはりイーユンリーさん、読んでる時、読んだ後の、窓から見える景色を薄めで眺めたくなるような虚無感(なんだそりゃ)を何度も味わって、オンリーワンだなぁと感激しました。
あらすじは前述の通りで、長い間病床にいた後に亡くなった少女に関係する友人3人の視点から描かれる物語。
物語の大半は少女が亡くなってから20年経過したのちの3人から語られていますが、作中何度も学生時代など過去のシーンを行き来します。
3人は少女の死後、それぞれ全く異なる環境で時間を過ごしており、対面で会うことなく、けれど少女の死は心のどこかに常駐しています。
その死がチラつくからか、はたまたこれまでの作品同様著者のオンリーワンからかは分かりませんが、物語は初めから終わりまでずっと物悲しい。
けれどその物悲しさって、何も作中の3人だから特別にあるものでなくって、読んでるこっち側にも同じようなやるせなさあるよねって語りかけてくるようでした。
語りかけてくるのは勿論小説の裏側にちらつくイーユンリーさん自身で、話の展開とは別に、登場人物の心情描写に乗って何度も何度も襲ってきます。
答えに興味はなかったが、質問をすると相手への支配力が得られるのを知っていた。人々は答えを言う瞬間、質問者から評価される立場にあることを知らない。
恥をかかせたい衝動や辱めたい衝動は、優しくしたい衝動と変わらないほど当てにならないものだ。どんな感情も他者を、こちらが設定していた立場から引き離すから。
一文一文を自分の鉛筆で改めて書き下して咀嚼したいほど哲学めいたもので、けれど小説というプロットを追うジャンルであることもあり(ページ数が多いこともあり、、)、分かったような気になって読み進めましたが、
最後の最後、起伏のなかったそれまでを晴らすように、3人のうち2人が遂に対面します(この、全員じゃなく2人ってのもまた憎いですが)。
しかもここでも、結局事件の真相が完全には明かされないまま小説は終わってしまいます。
このボリュームで幾度となく繰り返される3人の心情描写がありつつも、物語自体はほぼファジーなまま。ポツンと取り残されたような感覚でした。
けど、このかんじ、『黄金の少年、〜』でも味わったこの感じがオンリーワンなんだろうなぁ。
たまに著者の作品に触れることは、ドタバタしている日常を正してくれるようで、大事なことだと感じました。オススメ!