bookworm's digest

33歳二児のエンジニアで、日記をずらずら書いていきます

記事一覧 ブログ内ランキング 本棚

2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
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シスト

 

シスト

シスト

 

 



『シスト』    /    初瀬礼

 

★    ×    88

 

内容(「BOOK」データベースより)
フリーのビデオジャーナリスト・御堂万里菜は、チェチェンでの戦場取材から帰国後、若年性認知症と診断される。ショックを受けながらも逆境を逆手にとり、自らのドキュメンタリー番組を企画するが、病状の進行は緩やかで、取材は停滞していた。そんな折、タジキスタンで原因不明の感染症が発生する。それは、感染から約1ヶ月で死に至り、特効薬もないという恐ろしい病だった。所属会社の後輩と共に、万里菜はタジキスタン取材に赴くことになるが―。圧倒的リアリティとダイナミズムで描く、読み応え満点の社会派サスペンス!

 

 

社会学者の古市憲寿さんがプッシュしていたサスペンス小説。

ここ最近こういったガッツリ小説を読んでいなかったので、久々で血湧きました。

元々テレビ局勤務の著者、個人的に初です。

 

 

あらすじは上記のBOOKデータベースを参照いただくとして(レビュー放棄)、

個人的な感想としては、序盤から中盤にかけてグオオオオーッと惹きつけられて、後半ちょっと失速、という感じでした。

盛り上がったのは、若年性認知症と判断された主人公が、奇病が発生したタジキスタンにフリージャーナリストとして向かう場面。

小島という女性の後輩を連れて行くのですが、着いてすぐ、大量を血を吹き出して小島が死んでしまうというまさかの展開。

それまでは割とビジネス書、社会書のノリで読んでいたので、ここいらで一気に「おおーこっちのジャンルか!」とテンション上がりました。

 

小島に限らず、作中では結構な役者が次々と死んでいきます(しかも中々のグロさで)。

その辺のテンションがウォーキング・デッド宜しくな容赦なさなので、中盤以降はアメリカドラマを観ているような感覚になりました。

 

 

物語の肝は「若年性認知症」と「感染症」で、一見無関係の2つがじわじわと絡み合っていくところ。

更に終盤には単なるパンデミックではなく、主人公、更にはアメリカやロシアといった国家単位の目論見が明らかになり、一気にスケールが広がります。

その辺のSFさを著者オンリーワンなリアリティで描き切った様が評価されているのかなと思いますが、個人的にはリアリティやスケールの大きさってどんな作品でもあまりピンと来ないので、ラスト辺りの展開にはイマイチのめりこめず、、

それよりも若年性認知症の患者を描いたシーン、姑への虐待を描いたシーンの方がなかなか考えさせられ、あぁこれぞ社会派と感じました。

一応フィクションの未来設定になっていますが、この日本で全然あり得るデストピアだなぁと恐れました。

 

 

2016年の長編はおそらくこれが最後?

あと1週間、何を読んで締めくくろうか、、

 

 

 

 

どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか

 

どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか

どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか

 

 

 

『どうやら俺オレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』    /    みうらじゅんリリーフランキー

 

★   ×    89

 

内容(「BOOK」データベースより)
みうら&リリー両氏が、人生、仕事、そして生と死について1年間にわたり真剣に語りつくした、両人いわく「最初で最後の」珠玉の対談集。彼らが本当に言いたかったことが、全部ここにある。みうら:人生の最終地点は「死」じゃないですよ。リリー:それなのに「今際」を豊かに過ごしたいと思って、みんな「今」を貧しく生きてる。

 

 

エロカッコイイ2人の対談集。

「人生とは?」「親友とは?」というドストレートなテーマをこの2人が語らせたらどうなるかというワクワク感と、『人生エロエロ - bookworm's digest』のようなメッセージ性のない爆笑物語で終わるんだろうかというハラハラ感を持って読み始めましたが、

思ったよりもずっとずっと心に染み入る啓発本で、「あれっ、この対談って糸井重里横尾忠則?」と途中で錯覚してしまうほどでした(言い過ぎ)。

いや、リアルに心に刺さるオンパレードでした、、もっと早く読むべきだった。

 

 

前述の通り「人生とは?」といった①シンプル且つコンプレックスなテーマがまずデカ文字で書かれてあって、②テーマに対するL(リリー)とM(みうら)のキラーフレーズが次に書いてあって、③そのあと数ページ対談、という構成で数十テーマ書かれています。

なのでパッと目に入ってくるのは①と②ですが、もう①と②だけをパラパラと見続けるだけでも十分素晴らしいです。

例えば

 オリジナリティなんてない。あるとしたらそれはコンプレックスでしょ。

という文面、それだけでちょっと立ち止まれるのに、「え、こんなことをリリーさんとみうらじゅんが語り合ってんの!?」という後からくる贅沢。

そして期待に胸膨らませながら③を読める贅沢。

当然ながら下ネタも半分くらい織り交ぜながらですが、②の肉付けを③でしっかりとされています。

つまり自己啓発としてこれ以上ない構成です。

 

あとこういう本は「どれだけ作者のことが好きか」にも多少なりとも依存しますが(本自体のレビューとしては失格ですが)、

その点においても、これまで「この人たち嫌いだ」という人に出会ったことない、万人に受け入れられるアウトサイダー2人なので問題なし。

こんなことも言えるんだぜというギャップもあいまって、誰もが楽しめる作品に感じました。

 

うーん、書きながら、ホントに素晴らしい本だったなぁと再確認、、笑

 

現時点で引っかかった言葉を書いておきます。またポツポツ読み返します。

 

サンドウィッチの語源なんて知ってて、なんの役に立つんだって思う。それより、旨いサンドウィッチを作れるほうがいい。

 

結局おふくろが褒めたのは「対ヒト」に関することなんですよ、オレが他人にどう接しているかという。オレひとりが何をしてても、何も言わない。

 

そもそも喧嘩までならないにしても、何かに対して怒りみたいなものを覚えなくなるという感覚が、人としては一番死んだ状態だと思うんですよね。

i(アイ)

 

 

i(アイ)

i(アイ)

 

 

『i(アイ)』   /    西加奈子

 

★    ×    95

 

 内容(「BOOK」データベースより)
「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!

 

 

2014年の年の瀬に著者の『サラバ!下 - bookworm's digest』を読んで、あの時点での西加奈子さんのすべてを見た気がして、どういうわけかお腹いっぱいになって、そのあと出た『まく子』は未読なのですが、

本屋で見かけた本書、『サラバ!』に近い装丁、又吉と中村文則さんといういつもの帯に惹かれて買いまして、本日読み終えました。

やはりすごい、、西加奈子さん、ホント後世に名を残す、行くとこまで行った作家になったんだなぁと思いました。

 

 

 

「アイ」という、アメリカ人の父と日本人の母に養子として迎えられたシリア出身の女性の、学生時代〜結婚生活を描いた長編です。

 

アイは、これまで西さんが小説で描いていた主人公の中でもトップクラスに繊細で臆病で優しい。

その根底には、祖国シリアでは内戦で沢山の死者が出ているにも関わらず、裕福な家庭に迎えられた自分は一切無関係に生きているという負い目があります。

だからメディアで取り上げられた、世界中の殺人や災害での死者数をノートに書き付け、その度に自らの無力さに苛まれている。

そんな本作、「当事者でない第三者が当事者を思うこと」がテーマの1つになっています。

 

 

私自身が昔から思っているのは、周囲の小さな幸せを幸せに思える人が、世界で一番幸せだということです。

だからいい意味で世界を全て知らずとも、目の前の素敵さに胸を打つことが重要だと、読み終わった今でも思います。

けれどアイは違う。

遠くで起こった出来事を自分の体のように思い、祈る。

それはシリアで生まれたという出自、そして、どんな人にも事情がある(金を盗んだシッターにも事情がある)ことを考えるアイの両親の教育からくるものですが、これによってアイは、優しすぎるアイは作中ずっと「第三者として」苦しめられます。

 

 

そんなアイが「当事者」となった1つが、東日本大震災

これまで想像でしかなかった痛みや苦しみを肌で感じることができ、アイはある種の喜びを得ます。

命の危機を、その恐怖を語る権利を得たかったのだと思う。

のちに、被災して亡くなった方に失礼なことだったとアイ自身語っていますが、被災直後は自分が被災して初めて当事者になれた、そのことに満足できるほど、それまでのアイは第三者として苦しんでいたことが分かり、読んでいて胸が締め付けられました。

 

 

 

そしてもう1つの当事者、それはアイが結婚して子どもが産みにくい体であることが分かったこと。

手術により一時は子どもが宿ったものの、11週で流れるという描写、ここは本当にやるせなさで一杯で、友人に「12週」と小さな嘘をついたシーンでは涙が出ました。

第三者として死者の数を数えていた本人の目の前(お腹の中)で、まさに生きんとす赤ちゃんが死んでしまったという悲しみに、アイの心は壊れてしまいます。

 

 

そんなアイに救いの手を差し伸べたのは、両親や、友人のミナや、夫のユウ、彼らはみんな優しいアイを受け入れてくれる存在で、

ミナがくれたメールやユウが言った言葉はアイの支えとなります。

(特にミナは素敵すぎて悶える、、!)

 

ただ、

私が本作すごく感動したのは、彼らのサポートはありつつも、最終的に乗り越えるまでに至ったのはいつもアイ自身の強さによるものだったということです。

遠くで人が死んで、近くで赤ん坊が死んで、そのことを当事者でない第三者が思うことに対し、

私のからだの中で赤ん坊が死んで、その悲しみは私のものだけど、でも、その経験をしていない人たちにだって、私の悲しみを想像することはできる。自分に起こったことではなくても、それを慮って、一緒に苦しんでくれることはできる。想像するというその力だけで亡くなった子どもは戻ってこないけど、でも、私の心は取り戻せる。

 

数学教師に「アイ(虚数のiのこと)はこの世に存在しない」と言われてからずっと、自らの存在を否定し続けてきたことに対し、

誰に否定されても、やはり自身で信じられない瞬間があっても、それはあるのだ。ずっと。これからも、絶対に存在し続けるのだ。絶対に。私はここだ!

と、悩んで苦しんだ結果に出す自分の答えが本当にカッコよくてカタルシスでいっぱいで、後半は何度もいい意味の嗚咽が漏れました。

 

 

知らなくてもいいじゃない、という能天気な私の考えを改めてくれる、西さんはいつもこうやってカッコいい姿を小説を通じて伝えてくれます、、

『サラバ!』で終わったなんて言わせないよ!とほっぺた叩かれたかのよう。すんませんこれからも読みます!!

 

 

民主主義は止まらない

 

民主主義は止まらない

民主主義は止まらない

 

 

 

『民主主義は止まらない』  /    SEALDs

 

★    ×    86

 

内容(「BOOK」データベースより)
対談×小熊英二、対談×内田樹。国会前デモから選挙へ向かうSEALDsの現在。そして今夏、解散…!?この国は変えられる。

 

 

『民主主義ってなんだ?』を読まずにこっちを読んでしまいました。

 

私は自分でも驚くほど政治事情に興味がなく、家族ができたにも関わらず未だに日本が将来どうなろうがそこまで自分の肌として実感できない、本当にバカな30歳になろうとしています。

なので今年の夏に彗星の如く現れた、私よりも10歳も若い大学生たちがSEALDsとして、メディアに出まくったり梅田のヨドバシで演説したりするのを見て、主張してることの正当性は私には判断できないので置いといて、こんなにも人を集めることができて、日本の未来を考えていることに心から感動しました(と同時に自分の単細胞っぷりに落胆しました)。

 

本作では内田樹さんや小熊英二さんと学生が対談していますが、決して難しい政治の話でなく、平易な言葉で今彼らが何に対して不自然さを抱いているかといったことが、先生と生徒が煮詰め合うような形式で書かれています。

だからキャッチーなタイトルに騙された難解な政治本よりもよっぽど読みやすく、また、あれほどフィーチャーされたSEALDsとは言え一人一人は学生で、思っていることも話す内容もすごく素直で丁寧で、政治家は頭がいいからこっちも頭良くいかなきゃというプレッシャーなんて要らないんだということを認識させてくれます。

 

テレビでセンセーショナルに扱われていた彼らも、しっかりと文章を読んでいると、いい意味で単なる1人の学生なんだなぁと感じる。

また、「本当に止める」といったキャッチコピーにより、SEALDsって目がちょっとイッちゃってる危ない組織なんかとも捉えられがちですが、彼らのやりたかったのは結局、彼ら以外の人に政治に興味を持たせることだったのかなぁと思いました。

 

 

例えばおじさんやおばさんがテレビを見て

「デモでゲストを招いて、単にお祭り騒ぎしたいだけやないか」

と訝しむ。

SEALDsは嫌われる。

 

けど、おじさんおばさんは、何も起こらず淡々と安保法案が通るよりも、SEALDsが取り上げられることで、何が今問題になっているかを考えさせられる時間を与えられる。

 

そうやって一人一人が政治に割く時間を設けるために嫌われ役を買って出ている、という風に考えると、大学生がそこまでしていたことは本当に素晴らしいです。

 

「SEALDsはこれからどうするんですか」と聞かれたときも、「じゃああなたはどうするんですか」と聞き返していました。

ホントこれだよなぁ、、

SEALDsがすべて担って解決するんだじゃなくてあくまで問題提起してくれただけで、考えるのは自分のアタマ(byちきりん)なので、せめてもうちょっと政治カテゴリのニュースも意識的に追っていこうとここに誓います。覚えとけよ未来の自分!

 

 

 

 

浮遊霊ブラジル

 

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル

 

 

 

『浮遊霊ブラジル』   /    津村記久子

 

★    ×   93

 

内容(「BOOK」データベースより)
ただ生きてきた時間の中に溶けていくのは、なんて心地よいことなんだろう。卓抜なユーモアと鋭い人間観察、リズミカルな文章と意表を突く展開。会心の短篇集!

 

 

久々津村さん。先日心斎橋の本屋で行われたサイン会に行けなかったのが悔やまれますが、ずっと読みたかった川端康成文学賞受賞作の『給水塔と亀』が収録された短編集。
いやーー改めて素晴らしい作家、、、スッと心が洗われるような小説でした。


前半3編は、些細な日常を描いた物語。

主人公は悲しみやイライラを抱えた人たちですが、その感情の起伏を「嬉しい」「楽しい」とダイレクトには表現せず、物語の中で「あ、今ちょっと嬉しそうだな、楽しそうだな」とぼんやり感じさせてくれるような文章になっています。

例えば表題作は、定年後に故郷に帰った独り身のおじさんの話。

生涯独りで生きてきたことに少しの憂いを感じているものの、故郷で起こるちょっとした出会いを通じ、気持ちが上がっていくのが「ぼんやり」分かる。

心なしか、前の部屋にいた時よりも、その時刻が少し早いような気がする。 

 わずか20ページの中でも、幸せとは何かという主張をしっかり感じるし余韻もあって、うおーやっぱすげえと唸りました。

 

んで、前半一番好きな『アイトール・ベラスコの新しい妻』、こちらは学生時代にクラスを牛耳っていた者、いじめられていた者、いじめられていた者に付き纏われていた者の3者が、大人になった姿を描いています。

著者の大好きな小説『エヴリシング・フロウズ - bookworm's digest』でも思いましたが、津村さんの「大人な子ども」の描き方、ホントうますぎてひれ伏すばかり、、

①いじめっ子、②いじめられっ子、③周囲の子、というどこにでもある風景で、津村さんが抜群に上手いのが大半の人が該当するであろう③(私も然り)。

本心と違う態度を①や②にとってしまう描写なんか見てて自分のことのようで、ああごめんなさい、、と津村さんの住んでるであろう大阪南方面に頭下げたくなるほど。

観察力凄すぎて毎度恐れ入ります。

 

 

ほんでそこから4編はまさかのSF!笑

地獄の話だったり精子の擬人だったり死後の世界だったり、、津村ワークスを全て読んできた(はずの)私ですが、新たなジャンルでびっくりしました。

これはこれで馬鹿馬鹿しくて笑えましたし(特に『地獄』は津村ワールド炸裂、、)、短編集にこういった変化球が入っているのはすごくいいなと思いました。

 

ただやっぱ日常の機微を描く津村さんを今後も読みたい読みたい!!久々に燃えたオススメ小説です。