bookworm's digest

33歳二児のエンジニアで、日記をずらずら書いていきます

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2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
tacbonaldの本棚




Slave of Love

 

 

Slave of Love

Slave of Love

 

 

Slave of Love』    /    ビッケブランカ

 


【収録内容】
M1. ココラムウ
M2. Natural Woman
M3. Slave of Love
M4. Echo
M5. Your Days
M6. Golden
M7. Natural Woman [ English ]

 

 

私事ですが最近こどもが生まれまして、家では全くテレビを観なくなったのですが、代わりに音の生活としてラジオを付けっ放しにしています。

視覚も両腕も空いた状態で育児や家事しながらのんびりしていた中聴こえてきたのが、タイトル作であるビッケブランカSlave of Love」。

 

 


ビッケブランカ / 『Slave of Love』(official music video)

 

 (どこかしらPVが素人臭く感じるのは私だけだろうか、、)

 

最初聴いた時に「ナニコレナニコレ!!誰!?」と衝撃を受けたのですが、発音良すぎるDJが「リケブランクでslape of love」と言ったと空耳したことでなかなかお目当てにたどり着けず、次の日またラジオでかかってようやく判明しました。

10月26日発売の本作の1曲でした。

 

 

アルバム通して聴きましたが、いやーータイトル作以外もホント素晴らしい。

高音とピアノと、後ろで流れる細か〜い音が合わさってすごく贅沢!

Slave of Love』や『Natural Woman』のようなミュージカル調の楽曲でもキャラ立ってると思えば、

『Your Days』のようなスローテンポな曲もまたキャラだってて、

「日本版クイーン」とか言われてるレビューも見ましたが、個人的には『PEOPLE』や『WORLD』時代の清竜人さんの「なんでもござれ!」感に似ていると思いました。

(切れ長な顔もどことなく似ている。。)

 

 

(歌詞がじゃっかんアレなのと、PVがどこかしら素人臭さを感じるのを除けば)2016年に知ったアーティストの中で最もハマりそうです。

年明け1月に大阪来るみたいなので是非行ってみようと思います。

 

 

 

 

喰う寝るふたり 住むふたり

 

喰う寝るふたり 住むふたり  1(ゼノンコミックス)

喰う寝るふたり 住むふたり 1(ゼノンコミックス)

 

 

『喰う寝るふたり 住むふたり』   /    日暮キノコ

 

★    ×    91

 

町田りつ子と野々山修一は交際10年、同棲生活8年目。 恋人以上、夫婦未満の三十路直前カップル。 そんなふたりに起こるちょっとした日常を 男女両方の視点から描いた恋愛ザッピングストーリー。

 

 

私は結婚してから奥さんの物捨て癖が移ってしまい、「買う」よりも「集める」漫画を避けるようになってしまったのですが、

去年新幹線本としてノリで買った『かくかくしかじか - bookworm's digest』の1巻に打ちのめされ、漫画を集めるっていいじゃない!笑 という学生時代の気持ちに戻りました。

ただそれ以来、1巻を買っては「うーん、続きは気にならない、、」という不作の時期が続いていて、ブレイクスルーが欲しいなぁと思っていたのですが、

本作は1巻を読み切った刹那、あっという間に揃えてしまいました笑 素晴らしかった!

 

 

本作の魅力は「構成がほぼ全て」 なところがあり、

同棲するカップルの日常を、第1話では彼女目線から描き、第2話では全く同じ時間軸を彼氏目線から描きなおす、という構成になっています。

だから嫉妬や探り合いやすれ違いなど、人間関係のあるあるが余すところなく描かれている。

 

この構成、人生ベスト5に入れたい村上龍さんの小説『最後の家族 - bookworm's digest』も、任意のシーンを複数人の目線から繰り返し描く手法で、

これは一見説明過多のように思っていたのですが、常に登場人物の気持ちを理解しながら読み進められ、「この時どういう感情だったのだろう」という含みを一切持たさず、一つ一つ納得しながら読めるのが意外に良かったのを覚えています。

 

そんなスローテンポな手法を、小説よりも更なる消化スピードが求められがちな漫画でやってしまう、というのが素晴らしいと思いました。

(こういう、時間軸を重ねたマルチ一人称の漫画って他にあるのかな、あれば読んでみたい)

 

 

あと、構成が全てとはいいつつも、漫画を好きになる重要な要素である「絵の上手さ」についても、丁寧で分かりやすい線を描かれていてすごく好きでした。

可愛い女性か描かれているかどうかってすごく大事なことだと思うのですが(いや、下世話な話でなく真面目に)、りつ子や修一のかつての彼女などすごく可愛くて魅力的で、

レビュー書きながら思いましたが、久保ミツロウさんの『モテキ!』を読んだ時にも似た恋する感情みたいなのを抱きました。

 

 

漫画にもホントいろいろあるんだなぁ、、勉強になります!断捨離モードは忘れず、けれど良い漫画は集めたいですね。

 

 

 

 

 

 

生きてるだけで、愛。

 

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)

 

 

 

『生きてるだけで、愛。』     /     本谷有希子

 

★    ×    90

 


内容(「BOOK」データベースより)
あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ。25歳の寧子は、津奈木と同棲して三年になる。鬱から来る過眠症で引きこもり気味の生活に割り込んできたのは、津奈木の元恋人。その女は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るが…。誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代の、新しい“愛”の姿。芥川賞候補の表題作の他、その日譚である短編「あの明け方の」を収録。

 

本作を何故かずっと、飯島愛の自伝小説と勘違いしてたのですが笑、『乱暴と待機 - bookworm's digest』などで好きになった本谷有希子さんが著者だったことにようやく気付きました。

鬱で引きこもりで過眠症の女性が主人公という厨二設定ですが、相変わらず絶妙な文体で好きだなぁーと改めて感じました。

未読の方、タイトルはアレですが是非!

 

 

主人公・寧子は働きもせず、恋人である津奈木のヒモとして自堕落な毎日を送っており、

おまけに躁鬱状態であり、落ちている時はとことん理不尽な言動で津奈木に当たり散らかすという困ったさんです。

例えば私のあげた手袋をなぜはめていないのかと喚いたにも関わらず、いざ津奈木がはめると、なぜ室内で手袋をはめているのかと喚き散らす。

 

こんな女性、絶対イヤだ、、、笑

前半はとにかく寧子の狂った言動にムカムカしたりハラハラしたり、

「怖いもの見たさ」

でページをめくった印象でした。

 

 

話の毛色が変わる契機は、中盤に出てくる津奈木の元恋人。

働きもしない寧子に、さっさと津奈木と別れろというこれまた理不尽な態度で現れますが、

彼女の唯一の功績は、結果的に寧子を社会に出して働かせるようになったこと。

人と交わることで徐々に寧子の生活にも色がつき、読み手側としても安心していく、という展開になっていきます。

 

 

が、終盤で見事に裏切られるのがこの小説の素晴らしいところ、、

働くことで上手く回り始めたと思った歯車ですが、些細なきっかけでバイト仲間の車のボンネットで飛び回るなどの奇行に走り、寧子は職のない状態に戻ってしまいます。

コンビニ人間 - bookworm's digest』にも近い印象を受けましたが、

「そう簡単に上手くいってたまりますか」という小説の方が私はすごくグッとくるんですよね、こう、なんでも理論武装して白黒つける風潮のニュースやドラマへの反骨精神みたいのが感じられて。

本作は短い分体力使わず、読んだ後にも考えさせる余裕なども残してくれるので、余計そう思うのかもしれませんが。

 

 

飯島愛著作と勘違いしてた方も笑、オススメの小説です。

 

 

廉恥

 

廉恥

廉恥

 

 

『廉恥』    /    今野敏

 

★   ×     84

 

内容(「BOOK」データベースより)
警視庁強行犯係・樋口顕のもとに殺人事件発生の一報が入った。被害者は、キャバクラ嬢の南田麻里。麻里は、警察にストーカー被害の相談をしていた。ストーカーによる犯行だとしたら、マスコミの追及は避けられない。浮き足立つ捜査本部は、被疑者の身柄確保に奔走する。そんな中、捜査の最前線に立つ樋口に入った情報―公立中学や高校に送られた脅迫メールの発信源リストの中に、樋口の娘・照美の名前があったという。警察官の自宅に強制捜査が入れば、マスコミの餌食になることは確実で、処分も免れない。樋口は更なる窮地に立たされた―。組織と家庭の間で揺れ動く刑事は、その時何を思うのか。

 

 

陸王 - bookworm's digest』に引き続き、久しぶりに読む著者シリーズ。

(この頃公私とも長距離移動が多く、読みやすさで本を選びがち、、落ち着いたらぶっとい難解な本を読もう。。)

今野敏さんは『隠蔽捜査』シリーズをスピンオフの『『初陣 隠蔽捜査〈3.5〉』のレビュー 今野敏 (tacbonaldさん) - ブクログ』まで読んだ以来、5年ぶりでした。学生時代は一時期のめりこんだなぁ、、

 

 

あらすじは前述のbookデータベースの通りで、お馴染み警察物。

樋口顕シリーズはおそらく初だと思います、樋口の友人や同僚は多分他の著書でも出てきているような書きぶりでした。

隠蔽捜査の竜崎としか比べられず申し訳ないですが、頭の固いキャリア一辺倒の竜崎と違い、本作主人公の樋口はとにかく「一般的」。

家族との関係に悩めば被疑者を無理やり落とすやり方に悩み、かと言って一匹狼で我を突き通す真似は出来ず、特技は空気を読んで場を丸く収めることです、と言わんばかりの「いい人」です。

ゆえに周囲の信頼とリスペクトを知らず知らずのうちに得ている、、というのもまた特徴で、色物目線だった隠蔽捜査シリーズと違って樋口は身近にも感じられる目線で読めました。

 

 

事件の焦点は「冤罪」。

殺害された女性をかつてストーカーしていた者、痴漢した疑いを掛けられた者と立て続けに容疑者が登場し、彼らに対して警察はバイアスなく事件の真相を探ることができるか、という点です。

男縦社会である警察組織の中で、樋口も同じくハナから容疑者が犯人であると疑った状態で事件に臨んでしまいます。

その歯止めをかけるのが、おそらくシリーズで初登場の女性・小泉。

紅一点の彼女は被害者の女性目線で事件に迫り、終盤に真相にたどりつくための重要な役割を担います。

(隠蔽捜査シリーズでもこういう女性いたな、、)

 

が、真相究明自体はガリレオのようなドラスティックなものでなく、淡々と展開されたまま読み終わってしまいました。

これは私の、ミステリーに対する「驚きたい!」という姿勢が問題なような気がしますが、、すみませんが、すんなり終わってしまって少しガッカリした気持ちになりました。

 

 

サイドストーリーとして、樋口の娘が脅迫メールの送り主の疑いをかけられ強制捜査に入られる、という展開もあるのですが、こちらも終盤どうなるのかと期待したものの、特に起伏なく終わってしまいました。

 

 

今野敏さんはそもそもこういうテイストで描く作品が多かった気がしますが、歳をとって心がより汚れたせいか、静謐なミステリーを楽しめなくなったのだろうか、、

うーーん残念。未読の隠蔽捜査シリーズに立ち戻ろうか検討します、、

 

消滅世界

 

消滅世界

消滅世界

 

 

 

『消滅世界』   /     村田沙耶香

 

★    ×    88

 

内容(「BOOK」データベースより)
「セックス」も「家族」も、世界から消える。日本の未来を予言する圧倒的衝撃作。

 

可愛い装丁の芥川賞受賞作『コンビニ人間 - bookworm's digest』で初めて知った村田沙耶香さん、すごく興味深い作家さんだなぁと思ったので、こちらは打って変わって好きじゃないルックスですが笑、手に取りました。

「セックス」が消えるという、キャッチーなコピー文がついた近未来型小説です。

 

 

舞台は数十年後の日本、そこでは人工授精で子供を産むようになっており、夫婦間のセックスは「近親相姦」とされ、旦那も妻も夫婦とは別対象(二次元あるいは三次元)の恋人を持っています。
そんな世界に住む主人公の雨音は、もともとセックスから産まれた最後の世代ですが、本人は朔という旦那とセックスの無い家族を作り、人工授精で子どもを作る、新たな世界に染まろうとしています。

中盤以降、2人は千葉にある実験都市エデンに移住し、男性も人工子宮によって妊娠ができる繁殖システムに試みもする。

「女性がお腹痛めた末の我が子」、という概念を覆す予言的な内容で、読み始めてからのめり込む気持ちが比例的に上がっていくような読書でした。

 

 

近未来小説、最近だと多和田葉子さん『献灯使 - bookworm's digest』や上田岳弘さん『太陽・惑星 - bookworm's digest』を読みましたが、そこには旧世代が新世代へと移りゆく際、その境界上での葛藤のようなものが描かれていて、私はそれが好きなんですが、

この小説は終始ソレばっかです。笑

主人公の場合、普通のセックスで己を産んだ「母親」と新世代との狭間で揺れ動き、新世代に移ろいたいものの他者と繋がりたいという性欲も根底にはあって、自然に新世代に馴染む周囲と比べ自分は異常なのか、その苦悩で6割くらい埋まってます。

 

 

ただ、そればっかりではなく、最後にバッチリ心持ってかれたのがすごかった。

千葉の実験都市に移った辺りから主人公の心は新世代に大きく傾いたものの、旧世代に生きる者(というか私)としては「やっぱお腹痛めて産まなきゃね」というオールドスクール落ちで何となくほっとしたい気持ちがあったのですが、

 

そんな思惑吹っ飛ばす、キョーーーレツにいやぁ〜〜な感じの結末が待っていました。

「母親へのコンプレックス」、これが最後こんな風に弾けるとは、、、いやぁ気持ち悪い!!言えないのですが、ぜひ読んでいただきたいです。。

 

 

限りなくローカルな世界を描いた『コンビニ人間』からは遠く離れた設定で、同一の著者とは思えないですが、二者択一で揺れ動く、という点においては共通で、その機微を描くのがとても上手だなぁと感じました。

他の著書もセンセーショナルなタイトルが多いですが、コンスタントに読んでいこうと思います。