- 作者: 本谷有希子,鶴巻和哉
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2008/02/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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★ × 92
内容(「BOOK」データベースより)
二段ベッドが置かれた、陰気な借家に同居する“妹”こと奈々瀬と“兄”英則。奈々瀬は家にこもり「あの日」から笑顔を見せなくなった“兄”を喜ばせるため日々「出し物」のネタを考えながら、英則からこの世で最も残酷な復讐をされる日を待ち続けている。一方、英則はそんな“妹”を屋根裏に潜り込んでは覗く、という行為を繰り返していた。そこへ英則の同僚・番上が訪れ…。
浅野忠信と山田孝之という魅力的な配役をもって数年前映画化された原作。
苦手意識の強かった本谷有希子さん著、素晴らしい装丁に違わぬ、素晴らしいエンタメ作品でした!面白かったー!
物語の中心は一つ屋根の下で暮らす男女2人。
男は山根、女は奈々瀬といい、山根は数年前に奈々瀬のせいで右足を負傷する事故に遭ったことを復讐するため、奈々瀬に自分の家に「住まわせる」ことを強要している。
奈々瀬はその歪な状況下をなぜかうけいれており、働きもせず山根の世話をして数年間過ごす。
そんな異常体制が続く中、山根と同じ職場の番上、及び番上の彼女であるあずさの二人が介入により、異常体制に変化が見られる。
というのが概要。変なあらすじです笑
今あらすじに4人の登場人物が出てきましたが、本作でとにかく魅了されるのが言わずもがな山根と奈々瀬の二人。
二人の魅力、それは本人視点が何度か出てくるにも関わらず、なかなか本心が見えてこないことに起因していると思います。
先程書いた異常体制、それをなぜ二人(特に奈々瀬)は受け入れた状態で日々暮らしているのか、それがなかなかに見えない。
例えばネタバレになりますが、奈々瀬と番上が山根の家でセックスするシーン。
山根はそれを天井裏から見ているという描写があり、それで山根の異常性が十分に浮き彫りになりますが、
今度は、実は天井裏のスペースは奈々瀬がセッティングした、要は覗き見されるよう仕向けていた、ということが分かり、今度は奈々瀬の異常性がズバーンと浮き彫りになります。
にも関わらず、「なぜ」の理由がなかなか出てこない。二人の過去、そして現在の心情は、ユーモアたっぷりの文体の中に紛れたまま。
だから早く続きが知りたいという思いが湧いてくる、ページターナーとして物凄く良質な作品だと思いました。
一言で言えば「究極の愛」のようなチープな表現になりますが、こんなにも歪でシュールな設定にも関わらず、終盤2人が別れるシーンは思わず涙が出ました。
そしてその後のシーン、奈々瀬が綿矢りささんの作品ばりに感情を爆発させる場面でハイライトを迎え、きちんとハッピーエンド風に持ってくあたりも素晴らしい。
映画は輪をかけてシュールとの評判ですが、浅野忠信、そしてモデルの美波という絶妙な配役は是非観たくなった…
とにかくオススメです!