『小さないじわるを消すだけで』 / ダライ・ラマ14世、よしもとばなな
★ × 91
内容(「BOOK」データベースより)
生きにくさや孤独は、手放せる。“ノーベル平和賞受賞の宗教家”と“人々の心を癒し続ける小説家”による、決定的人生論。穏やかな心で良い人生を生きるための希望に満ちた金言集。
ダライ・ラマさんとよしもとばななさんの対談を本にまとめたもの。
無知な私はダライ・ラマさんがどういった人なのかほとんど知らなかったので、聞き手としてよしもとばななさんというこれ以上無い名手(糸井重里さんも良さそうですが)が選ばれていて、非常に興味深く読めました。
また、ネットのレビューで炎上している「新幹線の車掌問題」についてもいろいろ思うところがあったので以下にレビューします。
本書は前半によしもとばななさんの朗読、中盤に二人の対談、最後にダライ・ラマさんへのQ&Aの三部構成となっており、テーマはあまり一貫性がなく、只々2人が話したいことを話した、みたいな内容です。
だから1つ1つの答えに対して何かを得るというよりは、トータルで2人の人柄を学ぶような印象でした。
特にダライ・ラマさん、
個人的なほとんど知らなかったというのもありますが、勝手に人間以上・神様以下くらいのイメージを持っていましたが、本書から感じた人物像はものすごーーーーく感じのいいおじいさん(こんなこと言うと語弊ありますが、、)。
勿論私が知る由も無い壮絶な人生を送ってこられたのだと思いますが、発せられる言葉は平易で味が薄くて、けれど本質を突くようなものばかりで、スッと入ってくる感じがとても心地良かったです。
現時点の私が特に響いた言葉は下の2つ
正す手段が存在しているならば、何も心配することなく、正す努力をすればいい。しかしその問題に対して、何も手段がなければ、やはりそれ以上心配しても全く無意味である。
相手が自分に何かしてくれたり、優しくしてくれるから、愛するのであれば、もしいやなことをされたら、私たちはもう愛することができなくなってしまいます。
んで、ネットで賛否両論の「新幹線の車掌問題」。これは第一部の、よしもとばななさんの語りで出てくる実話です。
①新幹線に乗車したよしもとさんは、空いていた隣の席に自分の荷物を置いた。
②その後、疲れもあってそのまま寝てしまった。
③すると突然車掌に起こされ、ここに人が乗るはずだった人があなたのせいで他の座席に代わってもらったのですよ、と怒って去って行った。
以上が「新幹線の車掌問題」。これが、アマゾンのレビューなどでまーあ賛否両論。
「否」の人たちは「車掌は悪くない、荷物を置いたお前が悪い」の主張で、まあそれはおっしゃる通り、金を払っていない席を我が物顔で占有していたよしもとさんが100パーセント悪い。
それは、もう誰が見てもそうでしょう。
けど、本書で伝えたいことって、正しい正しくないじゃなくて、正しくないことに対してどう対応するかってことだと思うので、「否」の人たちは100パーセント間違ってないけど、本書の捉え方は100パーセント間違っている気がします。
タイトルにもある通り「ちいさないじわる」、この場合車掌さんの対応がそれに当たると思いますが、
占有していることについて怒るよりも、どうすれば全体満足が取れるか、そこに焦点を当てて考えれば自ずといじわるは無くなる、
そうやって世界は(少なくとも自分は)ちょっとずつ良くなっていく、そういう主張に思えます。
それを、正しくない自分を正当化してグチってる、などとレビューされた人は、この本から得られるものを全く捨てているようですごく損です(偉そうですみませんが)。
この問題については是非読んだ方と話して見たいなーと思います。
すごく読みやすいので是非手に取ってほしい1冊です。