読んでる時より読んだ後の方が衝撃を受けた。去年やたら話題になってたよなーてな軽い気持ちで読み始めたが、まさかグリコ森永事件をほぼそのままの内容でフィクション化した小説だったとは。それをあとがきで始めて知った無知な俺。読後(グリコ・森永事件 - Wikipedia)で事件を知ったが作中の内容とほぼ同じ。本作は警察視点としての小説でなく、実際に身代金要求に使われた肉声テープ、その声の持ち主であるなんの罪もない子どもだった人物を主人公に当てており、著者のインタビューも読んだが、実際に声を利用された人物が今も世の中にいるという事実、それを逃げることなく調べ切り描き切ったというのがすごい。
犯人が見つかるという終盤からはフィクションだが、本作はその後に最大の盛り上がりが待っていてちゃんと小説・エンタメとしても成立している。悪の立場に立たされがちなマスメディアを、決して単なる目の敵で終わらせなかったのもすごい。いやー素晴らしく濃厚な作品。