写真家の金川晋吾さん著『father』読了。
文學界で紹介されてて知った本。前半は金川さんが父親を撮った写真集、後半がエッセイ(というか日記)の構成になってる。前知識なく読み始めたから、前半の写真集は「なんかいぶし銀なお父さんやな」「正面の父を息子が撮るなんて、仲のいい親子やな」みたいな安易な感想しか抱いてなかったけど、後半のエッセイ読むとそれが如何にお門違いかわかって恥ずかしなった。
お父さんは過去離婚し、女性と関係を持ち、仕事をブッチし、借金も膨らんでいて、その借金返済のために息子たちに苦労をかけてるという、割と最悪な状況。それが金川さんとの対話を通じて明らかになってくんやけど、不思議なのは対話の中に出てくるお父さん自身は、何も精神疾患とかの様子では決して、なんて言うか、ただただ、無気力。
金川さんがいろいろ問いかけても終始「わからんなぁ」「まあ、辞めとくか」みたいな、本人に決して悪気とかなく、いっそ声荒げに反抗してくれたらこっちも言い返しやすいのに!ともどかしさ感じるようなトーン。けど、面白い、というか興味深いのは、金川さんの描き方が、なんというか文字を書いて作品として出して人に読まれる、ということを想定してないような、ホントに父親のログを自分のために残してるだけ、みたいな作風になってる点。こんな態度父親に取られたら普通にイライラするし、そのイライラを文中で隠そうともしないし、けど変に良い言い方に変換して読者の心をあっためよう、というマス視点の意識も感じられない。ホンマ淡々と、コンピュータのように事実をロギングしていってる。その切り取り方はオモロいなぁと感じた。