『羊と鋼の森』 / 宮下奈都
★ × 83
内容(「BOOK」データベースより)
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
今年自分が読んだ本を振り返ると、ちょっと趣味に傾倒しすぎで、「これ読んだ?」と人と読書体験を共有できる本が少なかったので、
本屋大賞・映画化決定と華々しく売れた本書を読んでみました。初の宮下奈都さん。
主人公はピアノの調律師。
三浦しをんさんの「ニッチな職業小説」でもこれまでなかった分野の話で、あらすじとしては素人の主人公が調律の世界に出会い、素晴らしい師とピアニストに出会い、
苦労を重ねながらも己の意思に素直に、メキメキと成長していく物語です。
初の宮下奈都さんがこうなのか、
それとも調律という、それだけで繊細さをイメージする題材なのかは分かりませんが、
終始、情景描写も心情描写も美しく、比喩でいうと水のように、擬音で言うと「キラキラ」みたいな世界観でした。
ただ、私の心が汚れているためか、その世界観に少し胸焼けしてしまいました、、。
例えば、和音という少女が主人公の事務所でピアノを弾くシーン、
主人公は彼女の奏でる音に驚きや感動を覚えるという、多分映画でも泣かせにかかるであろう、作中のハイライトの1つと思いますが、
そこでの心情描写が(言葉が悪いですが)あまりに綺麗過ぎて、主人公が感じたその「ビビビッ」と背筋震えるような感動が、私のような人間には伝わってきませんでした。
書き手によって如何様にもできるシーンなので、単に私が著者の文体が好きでなかっただけなのですが。(まあ又吉さんに言わせると、理解できない私の瑕疵です。。)
ここまでの高評価を得ている小説を全く楽しめなかったのは、原田マハさんの『楽園のカンバス』を読んだ時もそうでしたが、
おそらく私、女性作家は好きでも、少しお年を召した方の文章は合わないのかも。。(U40くらいだと好きな作家さんいっぱい思いつきますが)
自分の好みを再確認した読書になってしまいました。次は恩田陸さん行くか、、