- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/07
- メディア: 単行本
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『ジュージュー』 / よしもとばなな
★ × 83
内容(「BOOK」データベースより)
下町の小さなハンバーグ店に集う、おかしな人たち。みんなちょっとずつ何かが欠けていて、つながりあって、ひとつの命になっている。世界の美しい色を回復させる、滋養たっぷりの小宇宙。
ひっさびさ、よしもとばななさん。
最近の傾向として、ストーリー展開のゆるくない小説を読みがちでしたので、
本作のようなヘッダもフッタも行間も余白たっぷり、時間の流れもまたーりのばなな節を久々に読むと、はじめの方違和感ありましたが、徐々に慣れてきたころにはやっぱオリジナルな文章だなぁと惚れ惚れしました。
舞台は「ジュージュー」というハンバーグ屋さん。
母親をなくした主人公とその父親、そして古くからの友人である進一で経営するその店は、根強い人気でテレビの取材なんかも受ける評判。
家の近くにある和食屋さんが、まさに作中の家族のような構成で店を経営されているので、重ねて読んでしまいました。
大都会の行列のできる店でなく、大きくない街の住人に愛される洋食屋さん。
看板娘であった母親をなくしたとき、店は一時活気を失い、傾いた時期を迎えます。
けれど親戚の進一が店に入り、ジュージューは新たなジュージューとし再びのピークを取り戻します。
実は主人公と進一は親戚ながら、かつて体の、中絶手術に至るまでの関係を持っていました。
それからしばらくは一切の連絡を経っていた二人ですが、母親の死や進一の結婚を経て元の関係に戻ります。
この辺の、許し許される過程が少し現実味が薄く、全ては時間が解決するとは言えこんな風になれるかなとちょっぴり訝ってしまいそうでしたが、
そこは安定のばなな節で、いつの間にか騙されていた感覚でスルーしていました。
(ただ、思い返すとやっぱりうーん…という展開笑)
ストーリー展開がないのでレビューもあまりありませんが、
個人的には終始流れるこの多幸感の中、あるシーンで「それでいいのか主人公!?」と思ってしまってからは、素直に享受できなくなってしまいました。
それは、進一の母親がフラッと店に現れるシーン。
進一の母親は医療関係で働くキャリアウーマンで、金と頭脳があり、自分自身に誇りを持って生きるカッコいい女性です。
主人公も、この母親に対して好意を持っていると描写があります。
けれど彼女は、ジュージュー周辺で起こる出来事以外の事象は、己と無関係であることが普通になってる。
主人公はとにかくジュージューが好き、生活も恋愛も全てはこのスモールワールドで閉じていて、顔の知る人間関係だけが私の全てだと断定して生きている節がいくつもあります。
高卒で、肉を焼いて売る以外私は何もできない、けどそれでいい。
そんな風に納得してしまっている主人公の気持ちが、明示はされていないが暗に強調され過ぎてて、「もうちょい頑張れよ主人公」とつっこみを入れたくなりました笑。
けどこれ、きっとたまたま今の私がこう感じるモードってだけであって、読むタイミングによって捉え方が異なる、ばなな流儀の真骨頂なんだろうな。。
さすがオンリーワンです。また別の作品読みます。