『ある行旅死亡人の物語』 / 武田惇志、伊藤亜衣
記者である著者2人が、3千4百万円を手元に残したまま亡くなった高齢の行旅死亡人(引き取り手が存在しない死者を意味する言葉らしい)の身元を追っていく話。ブログで公開するやいなや大バズりしたノンフィクションらしく、清水潔さんの作品を読んでるかの如く緊迫感ある作りやった。
正直、引き取り手なく身元不明で亡くなった方を追い続けることになんの意味があるのか?と、日頃テレビや新聞を嫌う俺はどうしても思ってしまったが、
死というゆるぎない事実の上に、かつてそこに確実に存在した生の輪郭を少しずつ拾い、結び、なぞること。それは、誰もが一度きりしかない人生の、そのかけがけのなさに触れることだ。路上ですれ違ったような、はたまた電車で隣り合ったような一人ひとりの人間の内にも、それぞれの物語があり、それぞれの風景が広がっている。
という一節はハッとさせられた。
ただ本作、若干ネタバレありで解説してしまうが、行旅死亡人の素性は完全には分からないまま終わってしまう。もちろんノンフィクションならではの終わり方ではあるけれど、エンタメ作品を読んできた身としては、衝撃の事実を以て終わってほしかったという超身勝手な物足りなさを感じてしまった。
『男社会がしんどい』 / 田房永子
久々の田房永子さん。『キレる私をやめたい』以来?タイトル通りド直球のフェミニズム本で、性差から生まれる痴漢や共働き・社会構造のねじれを問題提起する本。小川たまかさんが語気強めに文章で伝えている内容を、とてもキャッチーなキャラで漫画で訴えかけるというアプローチで、読書が得意でない人にも広く読んでもらえる作品という意味でめちゃ価値が高いと思う。ただ個人的には別に読書が不得意ではないので笑、この内容ならガッツリと文字で読みたかったぜという感想を抱いた。入門書という感じで人にはおすすめしやすそう。