『女になれない職業』 / 浜野佐知
去年参加したオンライン読書会で、参加者の1人が紹介してた本。本屋で見つけて「デカっ!ふとっ!高っ!」と一瞬ヒヨッたが意を決して購入。買ってよかった、、超良作!
ピンク映画を300本撮ってきた映画監督・浜野佐知さんがご自身の半生を綴った自伝ノンフィクション。すみませんが著者及び著作については全く存じ上げておりませんでした。
大きく2つの構成に分かれており、前半は映画制作に憧れて飛び込んだ男性優位主義世界に苦心する著者、後半はジェンダーやフェミニズムを描いた作品を以て世界中の映画祭を巡る著者が描かれてる。
前半はとにかく筆致に驚かされた。つい50年前とかの、女性は日常の中でスカートを当たり前のように捲られるような時代。語られるジェンダー観点のエピソードはそりゃまあ現代からすると信じられないものばかりやけど、そこで奮闘されてる著者の芯の強さが、迷いない語尾の文章からズバッズバッと伝わってきて、爽快感と共に読んでて気持ちよかった。学問やスポーツなど各分野における「時代を変えた女性」みたいな本や映像って最近やたら目につくようになったけど、映画界では浜野佐知さんがモデルケースとなったことが前半で十分分かる。現代に通ずる問題提起もしつつ、パワフルは人生をエンタメっぽくも読める超良文!
後半は映画によって世界を変えたいと願う著者の意志が、世界を巡って参加されてる各国の映画祭の様子を描くことでより明示的になっている。バングラデシュの貧困やったり、カメルーンのジェンダー観とかは日本でフツーに生きててなかなかアクセスできないし、形式としては単に著者の職歴をトレースしてるだけやのに、きちんと社会問題に切り込む作りになってて、自伝と社会学が見事なバランスで成り立ってた。
エピローグが「著者が飼ってたペット変遷」という、マジなのかウケ狙いなのか分からんところもなんとも素敵笑。調べてもなかなか著作の配信がなさそうなんやけど、折角知れた機会やし何作か映画も観てみたい、、!