『密やかな結晶』 / 小川洋子
以前参加した読書会で紹介されてた一冊。架空の島で、オルゴールやラムネ、小説、薔薇、そして左足や右腕、、、身の回りのものがある日突然、1つずつ消滅していく物語。
小川洋子さん作品を読むこと自体、もういつ振りか思い出せんという感覚と間隔。けど読んでると「あぁ、、この感じ!」となる、そんな上手さを唯一無二に持ってますね。。
感情的過ぎず、けれどふと背筋の伸びるゾッとする描写や、
ファンタジーではあるが要所要所で現実主義で、ふとこっちが油断すると理解できない比喩表現とかを持ってくる。
本作で言うと、中盤まではラムネなどの固有物質が消滅していくので、「まあ、これだったら無くなってもそこまで不便無いか」くらいの心持ちで読んでたが、
終盤、まさかの左足が消滅するという展開は、それまでのファンタジーさやヒューマンドラマから一気に「物事が突然消失することの恐怖」へと持っていかれて、うまっ!と唸らされた。
この「物事が突然消失」という設定はいろんな比喩を想起させられるし、それこそコミュニケーションが奪われたコロナ禍で再び売れたというのもめちゃ納得やけど、想像力の乏しい俺としてはそこはあんま想像を飛躍できずに、単純に小川洋子さんの筆致に改めて感動した、という感想でした。