『あなたが消えた夜に』 / 中村文則
★ × 83
内容(「BOOK」データベースより)
ある町で突如発生した連続通り魔殺人事件。所轄の刑事・中島と捜査一課の女刑事・小橋は“コートの男”を追う。しかし事件は、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。“コートの男”とは何者か。誰が、何のために人を殺すのか。翻弄される男女の運命。神にも愛にも見捨てられた人間を、人は救うことができるのか。人間存在を揺るがす驚愕のミステリー!
新刊きになる中村文則さんですが、読みそびれていた本作を先に。
2015年に出たミステリー長編です。
設定は中村文則さんには珍しく、「敏腕刑事プラス美人女性警官」という、まるで今野敏さんの隠蔽捜査シリーズのような典型的な警察モノ。
上述の内容の通り、連続通り魔の犯人を追うストーリーで、
第1部で一見関係ないと思われた被害者・加害者の絡みが
第2部で部分的に明るみに出て、
第3部の「犯人の手記」で伏線全てが一気に回収されるという、
これまた道尾秀介さんを彷彿とさせるほどの典型的なミステリーモノ。
『何もかも憂鬱な夜に(2013/3/22投稿) - bookworm's digest』や『遮光 - bookworm's digest』で中村文則さんにハマった私からすると新境地開拓感がありました。
本作の核というか、ハイライトとなるシーンは、やはり第2部までの展開を覆す第3部の真犯人の手記でしょうか。
ただ個人的にはイマイチハマれませんでした。
回収の仕方がちょっと雑な感じがするし、何より、第2部の時点で自分なりに結構納得のいく真相だったのに、第3部で更に上塗りして、真相が無理やり捻じ曲げられた感があった点が少し残念(完璧だったセル編のあとに魔人ブウ編は要ったのか?の議論みたいな笑)。
けれど本作を個でなく、中村さんの歴史の中の一作品ってマクロな視点で見れば、
①人間の本質をグリグリっと抉る『何もかも〜』のような元々の得意分野に
②本作で蓄えたミステリー要素をプラスして
③結果、『去年の冬、きみと別れ - bookworm's digest』や『私の消滅 - bookworm's digest』などのハイブリッド作品が生まれた
と考えることができる。
一人の作家を毎度追い続けると、こういった楽しみ方ができるのでいいですね。
新作も楽しみ!(相変わらず装丁が好きでないですが、、)