うううレビュー溜まりがち、、忙しいぜクソ野郎!
村井理子さん『兄の終い』『村井さんちの生活』、磯部涼さん『ルポ 川崎』読了。
『兄の終い』は、『家族』にも出てきた著者の兄が病気で亡くなり、著者と兄の元妻など数人で遺体を引き取ったり遺品整理したりする数日間を日記調で描いた作品。言葉にならんほど素晴らしかった。『家族』読んだ時も感じたけど、人が死ぬということがどういうことかを表現するのうますぎる。著者は生前兄のことを憎んできたけど、遺品を整理する中で兄が確かに刻んだ生活に急激に接することで、昔の憎しみや疎ましさがどんどんどんどんと「もう、兄に会うことは2度とないのだ」という事実を以て変化してしまう、その描写に何度もやられた。『家族』読む限り、兄に限らず著者は父・母からも傍目で見てひどい扱いを受けてたはずなのに、死後3人に対し漏れなく「生前もっとやれることはあったのでは」という自責の念を感じてる。人をそこまでの想いにさせる程死は大きなもので、その大きさを表現する筆致にただただ圧倒された。
兄の元家族である妻や子どもたちの存在も喰らった。当然本書は兄の実の妹である著者視点からしか語られてないけど、数日間の遺品整理を一通り終えた元妻が「終わった〜」と笑いながら涙を流すシーンはロックも感じてグッときたし、どんな感情やったんやろうかと知りたくなった。村井さん、エッセイストとしてマジやばし!
『村井さんちの生活』は、夫と双子の息子、犬とともに過ごす著者の、コロナ前から2020年くらいを描いた日常エッセイ。『家族』『兄の終い』ほどこちらは重みもなく軽く読めたけど、育ってく息子に対し徐々に「難しさ」を感じてくその描写とかめちゃうまくて、近い未来にくるであろう我が子の思春期とかも勝手に想像して若干怖くなった。ただ息子に「空気読んでよ」と言われた刹那「なんで空気読まなきゃいけないのよ!」とキレて、その夜後悔の念に駆られる姿とかもさらけ出してて素晴らしかった。引き続き『全員、悪人』読みます!
『ルポ 川崎』は数年前の作品で、川崎に住むラッパーやダンサー等に磯部涼さんが焦点を当てたルポルタージュ。父親が十数年川崎に単身赴任してたこともあり何度か行ったことあったが、変な言い方やけど「普通に暮らす上では普通に暮らせる」街の印象しかなかった。やからBAD HOPが「人殺すかラッパーになるか」と川崎を表現してるのはどうもしっくり来てなかったけど、本書で川崎の闇の部分をひたすらに炙り出してるのを見て納得できた。とは言え炙り出す対象が余りにもアングラの方々のみにフォーカスし過ぎてて、若干のバイアスを感じたのも確か(大阪のミナミでと同じトーンで取材したら似たようなルポになるんじゃないか、という)。