ドラッグジャンキーのシングルマザーの下に住み、食べ物もろくに食べられないイギリスのミアが主人公の小説。『子どもたちの階級闘争』や『ブロークン・ブリテンに聞け』を現地イギリスから描ききってるブレイディさんにしか書けない、あまり明るみに出ないがどこにでも存在し得る貧困層の話。ミアはたまたま手にした金子文子の自伝を読み、文子と己の不遇を重ねて物語が進んでくという作りも、もうブレイディさんにしか書けない唯一無二な作品やった。
全編に渡り救いのない状況が続く小説。「子どもは選べないのだ」という悲痛な思いが、大人びてはいるものの社会的には子どもに属するミアから発せられてるのはずっと胸がキリキリ痛くて、読み終わった後は当たり前のように我が子と赤てんぷらを昼飯に食べてる状況に違和感があって、「これって当たり前じゃないんだよな」とつくづく思った。
本当に子どもに責任の概念を教えようと思うのなら、子どもの行為を大人が決めて、子どもに誓わせてはいけない。子どもの責任は子ども自身にある。それを取り上げてしまったら、子どもには自分の行為の主体が誰なるのか分からなくなる。自分が誰を生きているのかわからなくなる。
そんな中でもミアの唯一の救いがラップだという設定も著者ならではでアガった。ただ、一応最後はハッピーに向かうものの、(金子文子含め)みんながみんなこんな風な人生を選べない、これはあくまで小説だということは留意すべきやと思った。ちょっとエンタメとして昇華させにいった感があり、そういう面では個人的には著者のノンフィクションの方がより好きかもという感じ。