『n番部屋を燃やし尽くせ』 / 追跡団火花
引き続きノンフィクション。昨年出た時から気になってたが、内容が重そうなので少し置いてました。韓国で数年前に大問題となったデジタル性犯罪を2人の女性が追ったノンフィクション作品。
1章が事件のあらましを追ったもので、2人が「n番部屋」というチャットルームを知り、その中で行われている凄惨なデジタル性犯罪を止めるため、警察やマスコミを巻き込んでいく実話。wikiを細分化して事件の流れを詳細に追ったような章で正にノンフィクションとして読み応えタップリで一気に読んだ。
そこから2章に入ると、追跡団火花を構成する2人の女性が交互に綴ったエッセイにシフトチェンジする。正直初めは、ノンフィクションを追いたい身からすると「 この章要るか、、?」と感じてしまったが、事件を追う時の心情や、2人フェミニストになっていく過程を読んでると、第1章が割と俯瞰的だった分第2章は主観的になっており後半ググっとドライブした。まず1章で事件を捉えて、その後2章で人物を紹介する作りにあえてなってるんやとしたら良い構成やと思う。
事件を追う過程で、ネットに出回る性被害の動画を観続けることにより二人の精神が崩れていく様も描かれており、その辺はかなり重い。特に、知り合いが知り合いの顔をアップし、「能力者」と呼ばれる人物が別のポルノ写真と合成し拡散する「知人陵辱」という犯罪の卑劣さには悲しい気持ちになった。一度拡散されるともう足は追えず、且つ複数人がネット上で絡み合う故に犯罪を特定しにくいという性質で、被害の規模も把握できなくなるという。
普段、子どもが観ているファミリーYouTuberの動画によその子どもたちがガッツリ出てくるのを見るたびに感じる違和感もココにある気がする。お金が発生しているというシステムに対するモヤモヤと同時に、親の都合で幼児の顔が2度と消せないデジタル世界に出回りまくってること、その危険性。画像のみならず音声すら即フェイク化されるこの時代に、改めてネットに顔を晒すことのリスクを感じた。
かなり重めの事実ですが知らずには生きてけない作品でした。