金原ひとみさん『アンソーシャルディスタンス』読了。
こないだ土曜に植本一子さんと金原ひとみさんのオンライン対談申し込んでて、よく考えたら金原ひとみさんて読んだことあったっけ?と過去のレビューを振り返ったら1冊も読んだことなくて、そこでようやく「、、本谷有希子さんと勘違いしてた」と悟る。急ぎ何か読まねば!と調べて出てきた、谷崎潤一郎賞を受賞した本作を手に取った。
そんな場当たり的に出会った小説やったけどめちゃめちゃ良かった。短編集で、のっけからうつアル中睡眠障害不倫希死念慮プチ整形沼、、と、センセーショナルなトピックスのサラダボウル、そして休むことなく性描写連打と、「あぁ無理、、」と3話目くらいまで重々しかってんけど、表題作の『アンソーシャルディスタンス』、んで最後の『テクノブレイク』で頭痺れた。いずれもコロナ禍の男女を描いたもので、『アンソーシャル〜』は自殺願望がある学生カップルが、好きなバンドのライブがコロナで中止になって心中旅行に出る話。『テクノ〜』はコロナへの警戒度の違いが原因で次第にすれ違っていき、彼氏とのハメ撮り見ながら自慰行為に依存していく女性の話。ストーリーをこうやってプレーンのテキストで書くと我ながら辟易せざるを得んけど、読みながら結局これらは全部メタファーなのでは?と解釈しようとすると急にのめり込めた。
植本さんとの対談でお二人とも言ってたけど、コロナが浮き彫りにしたんは人それぞれの価値観で、そのすれ違いである日突然親友との縁が切れるほど宗教や親縁関係のように各人に根付いたものであると。けど金原さんは作家としてはそういった世の中はチャンスで、じゃあそんなときにどうすべきかみたいなものを表現したかったのではと本作読んでて思った(多分に対談観たことによるバイアスあり)。そう考えるとさっき言ったアルコールや性依存の設定はすべて表現する上での素材に過ぎず、結局自身のコロナ観や恋愛観、仕事観や人付き合い観に置き換えて読んでください、と言ってるように感じた。深読みしすぎか
あと、切羽詰まってきた描写で句読点打たず一文を長文で書き殴った感じとかはめちゃ好みやった。積極的にたくさん読もうとは正直まだ思わんけど、対談も込みで金原さんご本人にめっちゃ魅力を感じたのでまずはエッセイから読んでみよかと思う。