村井理子さん『家族』読了。これはやばかった。。。
『全員悪人』の著者・村井理子さん、個人的には初。信頼してるツイアカや本屋さんがPUSHしてて何気なく買ったけど、むちゃくちゃ引き込まれて1日で読了。ドッと疲れた。
自伝エッセイ。著者の幼い頃からつい2年前までの半世紀ほどを、父・母・兄と自身含む4人の家族に焦点を当てながら著者視点で追ったもの。
兄は多動児・問題児、父はしょっちゅう手が出る男性優位主義、母は曖昧な中立主義、という、昔ながらのザ・昭和な家族像が淡々と描かれている。言っちゃえばただそれだけやし、どちらかというとあんま好きなタイプの本では無い気もするねんけど、
なんやろ、「何がおもろかった?」と聞かれると分からないが、とにかくのめり込めたその理由を考えてみると、ただひたすらに著者の筆致によるもの、の一言に尽きる気がする。
著者は、父、母、そして兄と、数十年をかけて家族1人1人の死に立ち会っていく。それぞれに対し悔いや後悔が残る様は読んででツラいものがあるんやけど、そのツラさという感情以上に、死とはつまりもう2度とその人に会えないのだ、という当たり前の事実を、著者のエピソードを以て著者の筆致でグワーっと目の前に提示してくるようなパワーが毎回あって、そこにめちゃめちゃ引き込まれた(疲れるほど笑)。しかもその表現方法というのは、ただ自分の中に潜む定性的な感情を、過剰にウェッティにするでもエモーショナルにするでも毒づくでもなく、冷静な目で見て文字に起こしたのだ、ということが伝わってくるようなトーン。そこが常時リアルで、個人的にめちゃめちゃ好みな文体。
心が落ち着かないとき、頭の中が文字で満たされてしまうとき、避けるのではなく、飲み込み、そして緩やかに吐き出していくのだと伝えることができていれば、どれだけ兄に平安がもたらされただろう。怒るのではなく、流す。壊すのではなく、遠ざける。兄がそれを知っていたら、私が伝えられていたらと後悔することばかりだ。
時代が良ければ、場所が良ければ、もしかしたら今も3人は生きていて、年に1度ぐらいは4人で集まって、笑いながら近況報告ができていたのかもしれない。ほんのささいな誤解を早い段階で解いていれば、きっと私たちは幸せな家族になれたはずだ。全員がそれぞれ、愛情深い、優しすぎるほど優しい人たちだったから。
特に母親とのエピソードには胸がキュッとなった。
「正月には家族で集まろう」との電話を受け帰省してみると、愛人と旅行に出かけていて不在の母親。
著者が双子を産んで一杯一杯の時にサポートにきてくれた矢先、元愛人に未だ金を援助していると打ち明ける母親。
著者は何度も母親を信じては裏切られ、コンテンツそのものは反吐が出る体験ばっかやのに、それでもなお母親を憎みきれないところが、家族という他に無い唯一無二の関係を表しててヒリヒリした。(それは兄とのエピソードにも同じことが言える)
この文体は、マジで好きだ。読み終えてすぐ『兄の終い』も購入。2022年も素晴らしい出会いに感謝!