『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』 / 井上荒野
田尻久子さんの『これはわたしの物語』で選書されてた一冊(最近は田尻さんドリブンで本買いまくってます、、)。
タイトル通り、男性から女性へのセクハラが題材の小説。ここまでストレートなのは個人的には姫野カオルコさんの『彼女は頭が悪いから』以来かな。
特徴としては、主人公的な人物は一応いるものの、一人称となる登場人物が多く、視点がコロコロ変わること。その中にはセクハラ被害者のみならず加害者視点も入るので、1つの事象を繰り返し多面的に見れるという造りは、小説において好きな構造です。
ただ、双方向で描かれる場合フツーはどっちにも共感できるものだけど、本作は被害者視点を読んだのちに加害者視点を読むと、より加害者への(ひいては社会構造への)嫌悪感が増幅される作りになってるのが面白い(どう考えても意図的やろけど)。時間軸も行き来するため、加害者男性の価値観は28年前から変わってないんだなぁ、、という諦念もより強調される。女性から見ると怒り、男性から見ると怒りに加えて内省(過去自分自身もこういった言動してなかったのか(ほぼ100%の読者がしてるハズ、、私含め))にも繋がるため、万人に受け入れられる作品に思います。
登場人物が多いことのデメリットとしては、枝葉が多くて若干本筋部分がとっ散らかったように感じてしまった点。三枝真人という1人の男性が出てくるが、結局どういう繋がりだったのかイマイチよく分からないまま終わってしまった(恐らく繋がりは無かった?)。