『うまのこと』 / 少年アヤ
夏休み終わりに本屋や個人が参加できる古本マーケットに行った際、自由港書店さんが出されてた一冊。『ぼくをくるむ人生から、逃げないでみた1年の記録』以来の少年アヤさん。あちらは自伝エッセイやったけど今回は小説、文字が大きく振り仮名も打たれており青少年向け。
小説とはいえあらすじはもう、少年アヤさんご自身そのものを表してると言える物語。
自らのセクシャリティに悩む学生の「うまくん」が主人公で、
同じく男女という二元論に苦しむ登場人物たちを描き、ノンバイナリー(性自認・性表現に「男性」「女性」といった枠組みをあてはめない性の在り方)という概念を小説を通じて伝えてくる。
読み手の対象はシスジェンダーの人たちも含まれるし、子どもといった年齢の若い人も含まれる。だからこそひらがな多めで振り仮名も打たれてる。そのあたりで、広く広く伝えたいという著者の意志の強さを終始感じた。
正直、読みにくさはありました(それは前のエッセイでも同じく)。個人的にファンシー系の文章は苦手です。
ただ終盤、とある登場人物が、何故トランスジェンダーの子を救うことに意味があるのかを問うシーンの引き込みの力は物凄かった。
男性Aか、身体の性が女性でノンバイナリーな子Bをからかうことを、性自認が女性なら子たちCが守ること。
それは「女性」をからかうことと同義であり、Bを見て見ぬ振りしてるCは結局C自身を傷つけてることになる。
だからCはBを守る。
それは結局、孤立するAをも守ることになる。
このロジックは「男性こそフェミニズムを学ぶべき」という『男らしさの終焉』のグレイソン・ペリーや『私は男でフェミニストです』のチェ・スンボムの主張そのもので、それを小説でしかも青少年に向けて発信してるのはすごい。