『ファミリア・グランデ』 / カミーユ・クシュネル
Summer Readingで紹介されてた本。9月は珍しく洋書ばっか読んでるがどれもHIT、この本も凄まじかった、、!
帯に書かれた下記文章がもう、読んでる最中と読み終わってしばらくしてからの心の内を見事に表してる。
加害者告発に加え、否認した母と傍観者だった自分も性虐待に加担していたという自責から書かれた本は他に類を見ない。
30年前、双子の弟が継父に性虐待されていたものの、当時自分含む周囲の誰もが目を背け、その自責の念にずっと苦しめられていた著者が、長年の時を経て本書を通じて全て明るみに出していくというノンフィクションフランス発文学。
ポイントは、著者含め一家が皆著名人であること。
・実父:国境なき医師団創設者
・母 :言論人・フェミニスト
・叔母:俳優
そして告発された継父(実名なし)もまた著名な言論人という家族構成で、そんな一家から出た本告発は出版直後からフランスで大問題となり、最終的に大統領が声明を発するまでに至ったらしい。
近親相姦という性犯罪の裏で、加害者及び周囲の人物には一般人以上に守りたい地位やプライドがあるという不幸な優位性が、正義が勝つことにならない捻れた状態を作り出し多くの問題を炙り出してく。
告発の過程で、フェミニストであり味方であるはずの母親が、自身の再婚相手が自身の息子を犯していることを認めず、
むしろ告発しようとしている自身の子どもを糾弾するなどのエピソードが中盤以降出てくる。
何ヶ月もわたしの弟を襲ったあなたは、問題がわかっていますか?ほとんどわたしの目の前
で、まったく気にすることなく、わたしをあなたの乱行の共犯者にした。それ以来わたしにも付き纏っている苦悩があなたにはわかりますか?
けれど、あなたも法学の教授。あなたは弁護士。時効によって逃れられることをよく知っている。あなたにとって全て都合がいいことに。
二十年。少なくともこれまでは、二十年でした。
ただしその母親もまた、自身の両親とも別々のタイミングで自殺という最悪失い方をしていて、果たしてこの一家がここまでの崩壊に至った始まりはなんだったのか?と、
単に性犯罪を犯した継父だけが悪者という、分かりやすい表層だけで紋切って解決される問題ではないことがよくわかる。
お継父さんはわたしのこともずいぶん苦しめた。わたしの弟を非難することで、あまりに多くの犠牲者を出した。軽はずみな親たちに口を閉ざされた兄弟・姉妹。叔父、叔母、いとこ、子どもや孫たち。あなたが急に縁を切ったのがなぜだか理解できないあなたの孫たち。
見て、ママ。わたしが書いているのは、すべての犠牲者のため、あまりに多くて、それと気づかれないため、言及されることがないような人々のため。
著者が苦悩するのは、母親を愛してるため。告発することで母親が傷つき、もう2度と修復できない関係となってしまうため。
けれど筆を取ったのはそれ以上に、同じような苦しみがもう2度と生まれないようにするため。家族という閉じた空間で発言できない人々に、発言することの勇気と意義を伝えるため。
上で引用した文章もそうやけど、こういった意思の固さ・強さが、特に本書終盤の文章にグググっと現れてる。それに触れられるというだけでも読む価値アリな作品、卍です!