積んレビュー、、、 ちょうど読み終わった金原ひとみさんのエッセイがかなりやばかったので、先他のレビュー終わらせます。。
栗原康さん『村に火をつけ、白痴になれ』、寮美千子さん『あふれでたのはやさしさだった』、ナム・インスクさん『実は、内向的な人間です』、村井理子さん『全員、悪人』読了。
アナキズム研究家で自身もアナキストである栗原康さんが、100年前のアナキスト・伊藤野枝を描いた伝記。歴史に疎い俺は伊藤野枝も夫である大杉栄も全く知らんかったけど、100年前でも伊藤野枝のような女性が戦っていたという事実は100年後に生きるこんな無知な俺にも刺さるし、何よりひらがな多用し「野枝、すげえ!」といった口語体を駆使する栗原さんの文体が伊藤野枝の活力をより上手く表現してて、歴史モノであることを一切感じさせずめっちゃ疾走感あった。
よく政治家や御用学者が道徳を振りかざす時、決まって女性は家に入り、子供を産むものだ、それが自然の摂理であり、そうしなければ人類は死滅してしまうとか言ってくる。野枝はこう切り返す。出産に人類の死滅がかかっていると言うのであれば、男性と比べて、女性の方が全然偉いじゃないか。お前ら、ちゃんと尊敬しろよ。人類の生命は、私たちが握っている。私たちを家に縛り付け、奴隷のように扱ったりするのであれば、もう子供なんて産みやしない。家庭を、人間をストライキしてやるんだ。この腐った社会に、怒りの火の玉を投げつけろ!
「空が青いから白をえらんだのです」の寮美千子さんノンフィクション。 奈良少年刑務所で行われていた「社会性涵養プログラム」という、絵本を演じたり詩を書いたりする教室の話。罪を犯してしまった子たちが、プログラムを通じて次々と真の自分を露わにしていく様は震えるもんがあった。何より要所要所で出てくる彼らの作った詩があまりに素晴らしいものが多く、素晴らしすぎて「ホンマにこんな風に書けるもんか、、?」と度々穿った見方をしてしまったほど。けど特に後半出てくる、親からすら愛情をもらえず施設で暴行され続けた人生を送ってきた子のエピソードを読むと、生まれてから数十年間自己肯定感や己の存在意義を感じたことがなくて、人生で初めて己を出せたのがこのプログラムだったということが分かる。「犯罪者」と聞くだけでゼロイチで物事を紋切るこの時代に喝を入れる作品。『空が青いから〜』も早く読まねば。
韓国作家、ナム・インスクさんのエッセイ。タイトル通り、内向的な人間あるあるが自分と多く重なって共感しながら読んだ。大勢より1対1が好きとか、人に誘われたら嬉しいけど当日行きたくなくて、自分以外の都合で予定がなくなると嬉しいとか、「マジそれ、マジでそれ!」となりながら読めた。後半は結局、大人になって内向・外交を使い分けられるようになってきたというトーンになるんで若干微妙やったので、特に前半部分はオススメ
大勢の人と一緒にいる間、最も私を疲れさせるのは、無意味な時間を過ごしている気分になることだ。中身の薄い表面的な会話、お互いの話ではなく他人についての話、或いはお手軽な情報やジョークが乱れ飛ぶ。家路につく頃には何一つ覚えていない。
今年読むの4冊目の村井理子さん。本書については一切の前提知識なく読み始めて、はじめ「これは小説?エッセイ?何のことを言ってんの?」とよくわからなかったが、村井さんは本書で言う「お嫁さん」で、作中一人称になってる認知症の女性は義理の母であることが途中からわかった。つまり義理の母に擬人化したフィクションエッセイになってんねんけど、認知症の人ってこういう頭ん中なんやろなと思わせる書きっぷりなのはさすが。ベッドの下に隠れるとか知らない人を家に上げてしまうとか、事実だけを見ると頭おかしいとしか判断しかねないけど、ご本人は自分の頭でしっかり考えて行動に移してるということが描かれてる。認知症を馬鹿にするなという否定の意見もありそうな気もするけど、個人的には認知症の苦しみを第3者なりに伝えたいという、むしろ肯定してるようにも映った。