長島有里枝さん『テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」日記』読了。
『ははとははとの往復書簡』で知った著者(往復書簡内では日本側で執筆されてた方)。こないだ近所の本屋にトークショーも来てたし、市内の図書館があるKIITOでイベントされてたこともあり気になって購入。2篇に分かれていて、前半は母親と共同で創作する過程で描かれた日記、後半はパートナーの母親と創作する日記という変わった構成。
とにかく前半の、母親と過ごす日記にくらった。著者は学生時代から母親とうまくいっておらず、創作の途中でも大声で涙を流す程の喧嘩をするといった関係性。「家族とうまくいってない」という、なるべくなら他者には知られたくないその状況を、振り返って冷静に第三者視点で細部まで描くという行為が恐ろしかった。
あくまで個人的な感覚やけど、植本一子さんの日記とかは「書かずにはいられない」というポジティブめのバイブスを文中から感じることが多々有る。けど本作は、書くことでより自身を擦り減らしてる印象を受けて、そこに(もちろんいい意味で)疲労感を感じたし、読み手の心をそこまで揺さぶるまでの日記ってすげえな、母親とうまく行ってないパートナーにオススメするんはちょっと辞めとこかな笑、と感じた。
大人になって、この世界の多くのものごとは誰のせいでもないのだと知った。理不尽なものごとに遭遇したとき、人はその意味を理解したいと思う。因果関係の分からない出来事同士を結びつけ、原因や責任の所在を生み出せば、一時的な自己救済にはなる。
後半の義理の母との日記も面白かった。ただ面白いポイントが前半とは完全に違ってて、個人的に神戸のゆかりあるお店とかがひたすら出てきてるとこにアガった(近所の好きなカフェの店長が写真付きで載ってたのには声出た笑)。