『死ぬまで生きる日記』 / 土門蘭
先週末に参加した自由港書店店主の旦さんのトークショーで旦さんが持ってきてて、立ち読みして気になって購入した一冊。著者は『そもそも交換日記』の土門蘭さんで、あっちは桜林直子さんとの共著やったけど、本作は土門さんオンリー。10歳の頃から事あるたびに「死にたい」と感じてしまう発作に悩まされてきた土門さんが、オンラインのカウンセリングを受ける日々を詳細に綴った日記。通院を観察するという意味では植本一子さんの『愛は時間がかかる』を読みながら思い出した。
植本さん同様こちらも素晴らしかった、、1日で読了。
日々「死にたい」と感じてしまう症状について、カウンセラーである本田さん(仮名らしい)のサポートにより、マザーリングや認知行動療法を通じて一歩一歩改善してく様を事細かに書いてる。『愛は時間が〜』のレビューでも書いた気がするけど、似た症状で悩んでる人にとっては(読むのはツラいかもやけど)マジでメソッド本として役立つし、背中を押してくれる本と思う。
しかも安心なのが、本書で著者は最後、プラスのベクトルに向かっていく点。
- 「死にたい」という気持ちが「帰りたい」に
- 「帰りたい」という気持ちが「書きたい」に
変容してく様はめちゃめちゃグッと来た(ヴィトゲンシュタインの言葉を借りるなら「アスペクト変換」?)。死にたいのでなく、自分は自分が安心できる場所に帰りたい、
そのためには息がしやすい世界を新たに作りたい、つまり「書きたい」。
書くことは土門さんの生業でもあるから、死にたいというネガティブな感情から一気にポジティブの方向に転回するのは見事過ぎる。
あと、自分が居心地の良い場所に帰りたいという著者に対し、「居心地が良くなるようにすれば良い」という本田さんのコメントが素晴らしい。
この地球でうまくいかないのなら、ここからいなくなるしかないのだと思っていたけれど、一旦火星に帰ればいいのだと気がついた。そして、よりこの火星の居心地が良くなるように、せっせと星作りをしたらいいのだと。地球の美しいもの、良いものを持ち帰り、自分の星をより豊かにするために。
ありきたりな言い回しやけどみんな基本的には孤独で、故に自分だけの世界を作ることが何よりも重要だというのはみうらじゅんさんの『マイ仏教』にも通ずるし、ま本書に出てきた熊谷晋一郎さんの
自立は、依存先を増やすことである。希望は、絶望を分かち合うことである。
という言葉に救われる人は多いし俺自身も目から鱗やった(特に後者、、!)
精神的に参ってる人にとっては勿論、参ってない人にも刺さりうる、(あんま表現としては言いたくないが)自己啓発エッセイというジャンル、オススメです!