つやちゃん著『わたしはラップをやることに決めた』読了。
5年ほど前にフリースタイルダンジョンからMCバトルにハマって、そこからホンマに徐々にではあるけどラップの音源を知るようになったこと、
1年前からジェンダー/フェミニズム関連の本を積極的に摂取するようになってようやく知識が固まってきたこと、
この2つが掛け合わさった本を読みたいと思ってたところ、遂にそれらしき本が見つかって嬉しかった。ヒップホップ中心に執筆してる著者が、女性ラッパーについてとことん紐解いてこうという本。
まずやはり、ジェンダーの観点でこの本を読むとめちゃオモロかった。「女性」という括りをつける・つけないの問題はHIPHOPに限らずどこの世界でもあって(「女性作家」「女性弁護士」など)、俺はフィメールラッパー(←これも)自身も「フィメール」で括られることに対する葛藤を感じてると思ってたけど、valkneeのインタビューを読んでハッとさせられた。
フィメールラッパーという括りでメディアが特集を組むのは、スポットライトが当たる分、新たに注目されるという意味で良いと思います。女性が抑圧されてきて、それに対して声をあげて連帯しようってなった時に「でももう男女関係ないよね」って現時点でいうのはマジョリティの意見だと思う。まだその段階ではないですよね。
こういった意見が平成生まれの、それもZoomgalsというギャルサーを組んだvalkneeからスラスラッと出てくる時点で、あぁなんか大丈夫だ、という謎の安心感(とともに、自分はもう時代に置いてかれてるなという虚無感)を受けた。もちろんそのあとのインタビューで「いつかフィメールラッパーの定義が形骸化されてほしい」と言うCOMA-CHIの芯の強さも感銘受けたし、やぱこの男性優位色濃いHIPHOP村で生き抜いてきたマイノリティ側の人らのすごさを感じられた。
あとリリックの分析も多く、女性ならではの言葉で踏まれる韻の解説はめっちゃおもろかった。AYA a.k.a. PANDAの
目が離せない/うちら無茶苦茶/惚れちゃダメなのに/やっちゃった/これって夢の中?ってくらい/冷静じゃないね/うそ頭ん中 ぐっちゃぐちゃ『シークレットLOVE』
というリリック、「耳心地が良い」という一言で片付けられそうやけど、拗音(ちっちゃい「や」など)を重ねに重ねて浮ついた空気を演出し、すなわち恋の苦しさを表現するという分析。多分普段なんとなくで流してしまってるそのリリック一つ一つにめっちゃテクや思いが込められてるんやなと当たり前のような感想を持った。
巻末の楽曲レビューのボリュームも圧巻。もっとこういう本読みてぇ!